印刷技術 還暦~ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

私、今日、誕生日なのですよ~。

2月26日は、2.26事件の日 ですので、この日に生まれた私は、

昔から、「革命児」と呼ばれています(笑)。 あッ、2.26事件は、

昭和11年ですから、34年生まれの私とは無関係です(キッパリ)。

 

今年はイノシシ年ですよね。実は、私もイノシシ年なんですわ~。

5 回目の年男ですので、なんとッ!「還暦」なのであります。

・・・もう、60歳ですよ~。昔は若かったのになぁ~(当たり前かw)

 

高校を卒業して、印刷業界に就職しましたので、もう42年もの間、

印刷業界で、お世話に成っている事になります。長いですよね~。

 

オフセット印刷が誕生したのが、1904年と言われていますから、

2019年の今年で換算すれば、115歳と言う事に成りますよね。

その内の、42年間も関わっているってのは、チョッとスゴいかな(笑)。

 

実は、私が業界に入る直前の、業界内の進化ってのは、こりゃ、

なかなかのモノが有りました。その第一が、「自動フィーダー」の

誕生なのですわ。・・・若い人にとっては、???って話ですよね。

 

自動フィーダーって、自動じゃないのが有るの?・・・そう、有ったんです。

自動が登場する前はね、印刷する紙を、職人さんが、手で、1枚1枚、

印刷機に送り込んでいたんですよ。

 

「紙差し工」って言う名前の、立派な職種だったそうです。紙を1枚取って、

前アテに差し込んで、針側に引っ張て(または、突き押して)、用紙の

位置決めをして、印刷機に送り込んで行くワケです。こんな作業を1日中

やっていたんですから、こりゃスゴいですよねぇ。

 

未だに、操作側の針を「引き針」、原動側の針を「突き針」と言いますが、

その言い方の語源は、この、紙差し工さんの動きを称して、呼ばれている

ものなのですね。操作側の針には、用紙を引き当てて位置決めをする。

原動側の針には、突き当てて位置を決めるってワケです。

 

自動フィーダーより、少し遅れて、大きく変わったのが、「版材」なんです。

今は、アルミの基板が普通に成っていますが、昔は「亜鉛」だったんですよ。

「ジンク版」と呼ばれる物ですが、こりゃ、アルミと比べて、すぐに地汚れして

しまう等、性能的には、かなり劣る物でした。

 

しかもね、「PS版」ではなかったんです。・・・またまた、???ですよね~。

PS版のPSってね、「プレ・センシタイズド」の頭文字を取って付けられています。

これを和訳すると、「すでに塗布された」と言う意味に成るのですが・・・。

 

んじゃ、「まだ塗布されてない版ってのが有るのか?」って話に成りますよね~。

「しかも、何が塗布されてないの?」ってのも疑問ですよね。今は、CTPですから

レーザーで版を処理していますが、昔はフィルムを使って、紫外線で画線等を

焼き付けていたんですよ。光で焼き付けるためには、光に反応する薬剤を版に

塗布して(塗って)おく事が必要に成ります。これを、「感光材」って言うんですわ。

 

PS版が登場する前までは、この感光材が塗布されていない版だったのです。

ですから、版を焼く前に、刷版係りの人が、自分の手で感光材を版に塗らなけ

れば成らなかったんです。こりゃ、チョッと考えただけでも、非常に不安定です

わねぇ~。しかも、耐刷(その版で何枚刷れるか?)も決して良くないでしょう。

 

こんな事を全て解消したのが、すでに塗布された版=PS版だったワケです。

刷版メーカーが、すでに感光材が塗布された版を提供して来るのですから、

刷版係りが手で塗るのとは、安定性とか、こりゃ、大違いですわね。

 

んでもね、悪い?事も有ります。PS版ってのは、基本的には、1回使ったら、

使い捨てですが、PS版でない頃は、使った版を研磨して、もう一度、感光材を

塗って、他の絵柄を焼き付けて、てな具合に、何度も再利用する事が出来たん

ですよ。実際に「研磨屋さん」と言う職業も成り立っていました。

 

どうですか? 40年以上も昔の話ですが、チョッと、おもしろいですよね。

進化の歴史が分かると、現在の便利さが理解出来ますよね。