印刷Q&A 紙積みのタイミング | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

 

先日、上質紙(A全44.5kg)の印刷があり、前日の夕方、紙を積んでおいたら、

なんと、その日の夜遅くから明け方に掛けて、雨が降ってしまい、紙が波打ち

してしまって、給紙が非常に困難に成ってしまいました。・・・後悔先に立たず!

と言う感じだったのですが、やはり、前日に紙を積んでおくのはダメなので

しょうか?

 

●回答

 

そうですね。私は、もともと、帳票類の出身で、裏面にカーボンを塗って使うような、

超~薄い紙ばかり刷っていましたから、紙の取り扱いには、本当に細心の注意を

払っていました。薄い紙が波打ちを起こしてしまうと、シワが止まりません~。

超薄い紙の場合、前日に積んでおくなどと言うのは、絶対厳禁ですわ~。

 

とは言え、朝から大忙しなんて日は、前日に紙を積んで用意をしておきたいですよね。

そうした場合に、他所で見た事があるのは、積んだ紙に大きなビニールを被せて、

その上にパレットを置いて「重し」をされていました。何もせず、紙を裸の状態で放置して

おくよりは、ずい分マシかと思います。

 

環境が整った工場なら、良いのかも知れませんが、私は、割とボロい工場ばかりに

勤めていました・・・。スレート葺きで、隙間風がビュービュー入って来る工場とか、

扉の造りが悪くて、これも隙間風のオンパレードとか、そんな工場ばかりだったので、

冬とか、梅雨時とかは本当に苦労しましたわ~。

 

私は、A型(血液型)なので、メチャこだわりが多くて、紙は、印刷直前までワンプを

開けないし、直前まで一切、紙を積まない。なんて事をシッカリ守っていましたが、

世の中には、いろんな方がおられましてね、前日の夜に、紙積み機で積んだ紙を、

鼻歌で給紙させて刷ってる人も沢山、おられるんですわ~。

 

そう言う光景を見せ付けられると、「コイツ、うめェなぁ~。コイツに出来て、オレに

出来ない事が、何か有るんだろうなぁ~」などと感心してしまうのですが、それでも

紙に対する強いコダワリを捨て切れなかったので、その「何か」を追究する事無く、

終わってしまっています。

 

「技術とは、それを必要とする者が追究すべきモノであり、必要の無い者にとっては、

無用の長物である」・・・などと、自分勝手な名言めいた言葉でゴマカシていましたが、

やはりね、前日に積んだ紙を、鼻歌で扱える技術の方が、明らかに優れていると、

思います。・・・しかし私には出来ませんし、やろうとも思っていません(笑)。

 

交替勤務で夜勤が有り、24時間稼働している工場とかなら、工場内の環境が常に

安定してるから、早目に紙を積んでおいても、さほど問題は無いだろうと思うんですが、

昼勤だけで、夜から朝に掛けての環境が大きく変わり、今回のように、雨でも降ったら、

それこそ、無駄な苦労を強いられてしまいますよね。

 

給紙が不調に成ってしまうと、連発する機械停止のため、印刷品質が著しく損なわれ

ます。また、汚れや、シワが発生した印刷物が、製品に混入してしまう危険度も大きく

高まってしまうので、給紙の安定性と言うのは、絶対に確保しなくては成らない最重要

項目の一つなのですわ。

 

「転ばぬ先の杖」って言うじゃないですか。前日に積んで、後から苦労するよりも、

印刷する直前に積んで、シッカリした安定性を確保しましょうよ。「紙は生き物」って

言った人が居ますが、本当にその通りだと思います。大切に扱ってやりましょうよ。