プロの仕事 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

先日、義父の三回忌に行って来ました。

 

お寺の坊さんが、実家まで来て、お経をあげて下さるんですが、いつもは、

そのお寺の、ご住職(70歳過ぎ)に来て頂いていたんですよ。ところが今回は、

跡取りさんが出来たとかで、ご住職の娘さんの婿さん(ご養子さん)が来ました。

 

お経をあげる前の世間話しで、その跡取りさん、5年前まで、魚屋さんをやって

おられたとのこと。「まさか坊主に成るとは思ってなかったんですが、5年前まで

魚を殺生して飯を食っていた人間が、坊主に成ると言うのも、何かの縁ですね。」

などと、なかなか、ツカミの、お上手な跡取りさんでした。

 

「さて、それでは、お経をあげさせて頂きます。」と、お経が始まったのですが・・・。

これが、全く、あきませんでした。世間話しの時でも、滑舌が良く、とても通る声で

話しておられたのですが、その、世間話しの時と全く同じ声で、お経を読んだのです。

 

おいおい、地声で経を読むのかよ~。魚屋で「はい!いらっしゃいッ!」とか言って、

存分に鍛えた喉かも知れんけど、そりゃ、経を読む声じゃないやろう。そんな声で、

40分も、経を聞かされる方は、こりゃ、たまったもんじゃねぇぞ~。

 

我慢に我慢を重ねて、ようやく、お経が終わった後、最後の世間話しの時に・・・。

「あのね、経読みを、音楽に例えるなら、どんなジャンルの音楽が適切だと思う?」

などと、坊さんに対して、私の説教を炸裂させてしまいました(笑)。

 

今の、あなたのお経は、音楽で言うなら、「ポップス」か「ロック」やわ。そんなお経、

誰も求めちゃいない。そんな経なら、オレでも読める。坊さんに、我々が求めるのは、

「クラシックのオペラ」なんじゃないかい。荘厳な発声と、身体全体から響くような、

そんな声があるから、深みが有り、ありがた味が有るんとちゃう?

 

「実は私も悩んでおりました。住職は、婿養子と言う事もあり、遠慮されておられるのか、

そうした事を指摘してくれません。住職とは年季が違うので、仕方ないのかと・・・」

おいおい、住職が来ても、あなたが来ても、我々が出す、お布施の金額は一緒やろ。

あなたが来たら、半額で済むんなら我慢もするけど、同じ額を払わにゃ成らんしね~。

 

そもそも、お布施と言う金額を取っているのだから、あなたも「プロ」なんだよ。プロなら、

プロとして恥ずかしくない仕事をせにゃアカンよ。オレは、経読みの専門家ではないので、

どうしたら良いのかとか、全く分からんが、ご仏壇の前に座った瞬間に、辺りの空気を

変えてしまうような、そんな所作や立ち振る舞いが、まず必要なんじゃないのかな。

 

そして、経読みの第一声で、「おおッ!」と、我々を感嘆させるようなものが必要や~。

あなたのお経を聞いた、お婆ちゃんや、お爺ちゃんが、感動に打ち震え、手を合わせて、

涙を流すような、そんな経が読めるように成ったら、檀家さんが増えるんじゃない?

 

プロはね、人を感動させにゃアカン。それは、どんな職業のプロでも同じだ。

今の時代はね、人を感動させる事で、飯が食って行けるという、とても、ありがたい時代

なんだよ。・・・とかなんとか、私の講義ネタを、20分ほど聞かせてしまいました(笑)。

 

私らは、あなたのお寺の檀家です。義母も、私も、私の家内も、あなたのお経で逝く事に

成るでしょう。どうか、その時には、今とは違う、成長した、あなたの経を聞かせて下さい。