印刷Q&A 湿し水の量 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

● 質問

 

超基本的な部分での質問なのですが、当社の工場長から、

「もっと水を絞れッ!」と、よく言われてしまいます。しかし、

それ以上、水を絞ったら汚れが出てしまいます。

どうしたら良いのでしょうか。

私は初心者に近いような状態で、専門用語が出て来ると、

思考停止してしまいます。使っているのは、菊半2色機で、

主に、上質紙の書籍系を刷っています。

 

● 回答

 

工場長さんが、「水を絞れッ!」と、おっしゃってるって事は、何か不具合が発生

してしまっているんでしょうか? 例えば、乾燥不良とか、裏移りとか、はたまた

文字が太ってしまっているとか・・・。

 

私達のような、ベテラン(と書いて『年寄り』と読みます(笑))は、印刷中の版を見て、

その、テカリ具合(蛍光灯等が反射する状態)を見て、水の量を判断する事が有り

ますから、ひょっとすると工場長さんも、それを見ておられるかも知れないですね。

 

汚れが出てしまう原因ってね、「水が少ないから」だけでは無いんですよ。

前にも何回か書いてると思いますが、インキが多過ぎても、汚れるんですわ。

私達ベテラン(と書いて『年寄り』と読みます(笑))は・・・ しつこいですね(笑)。

 

ローラーに有るインキの量を、音で判断する事が有ります。・・・と言っても、

印刷機が停止していたら、何も音は出ませんが、印刷機が回転していれば、

ローラーに有るインキが、音を出すんですよ~。

 

シャーって音なら、ちょうどイイとか、ジャ~って音だと、インキが多過ぎるとか、

そんな感じですね。ジャ~って言うほど、インキが出てしまっていると、こりゃ

インキが多過ぎですから、これを汚れないように刷るためには、沢山、水を上げ

なきゃアカンわけですわ。

 

多過ぎるインキと、多過ぎる水は、乾燥不良や裏移りの、一番大きな原因に成って

しまいますから、こりゃ最悪なんですよ。インキを、もっと少な目に出してやれば、

湿し水をガッツリ絞っても汚れないんですわ~。

 

この状態を、ウマく作ってやるとね、トラブルの無い、良い品質の印刷物が出来るって

ワケなんですよ。初心者のうちは、どうしてもインキを出し過ぎてしまう傾向が強いん

ですが、これを少な目、少な目に出せるように成ったら、仕事が、とても楽に成ります。

 

湿し水の量ってヤツは、オペレータの経験とカンで決めるものなんです。水の量を

測る測定器は、残念ながら有りません。なので、湿し水を、ウマく制御するって事が

上達への第一歩なんですね。

 

エエッ!そんな、アイマイなものなの~ッ!って思われるかも知れませんが、技術屋の

仕事ってのは、そう言う部分が多いんですよ。規格通りにやって、規格通りの物が出来

上がるのであれば、技術者なんて不要なんですよ。作業者が居ればイイだけですよね。

 

湿度が上がる、または超乾燥する。温度が低い、またはメチャ暑い。そうした環境変化で

紙の状態が変わってしまいますし、インキの硬さも変わってしまいます。それに伴って、

湿し水の量も変えなければ成らない。そんなところが、オフセット印刷の難しい所でもあり、

メチャおもしろい所でも有るんですわ~。

 

せっかく、印刷技術者の道を歩み出したんですから、頑張って、この道を究めてやって

下さいな。今はね、こうして、ネットで質問したり、ネットに解説が出てたりするから、

メチャ楽なんですよ。我々の時代は、そうした事が何も無くて、本当に苦労しましたもん。