インキの出し過ぎ | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

久し振りに、「壺ネジ」の印刷機と付き合って来ました。

サイズは菊全。2色の両面兼用機です。

 

補助の仕事から、その印刷機の機長に成って、ようやく2年目と言う、

まだまだ経験不足のオペレータさんが、日々悩みながら仕事をしている。

と言う状態なんですが、裏移り、汚れ、乾燥不良等々、不良品の量産を

繰り返しているようで、「オペレータ辞めようかなぁ~」と悩んでるとか。

 

作業状況を見ると、こりゃ一目瞭然で、アカン!です。基本が出来てない。

こんな基本的かつ、超重要な部分を、誰も教えてないのかよォ~ッ!と、

チョッと腹立たしささえ覚えてしまうような状態でした。

 

刷り出し前、インキ壺のネジの開き具合を自分の手で調整して、インキを

ローラー上に出して行く方式なんですが、この時に、明らかにインキを出し過ぎ

なんですわ。しかも、壺の開き度が多過ぎる。

 

インキを出し過ぎてしまっているから、汚れてしまう。こりゃアカンと水を上げる。

水を上げると、濃度が下がるから、またまた、インキを多目に出してしまう。

そしたら、また汚れるから・・・  最悪な魔のスパイラルに突入ですわね。

 

そりゃね、こんなやり方してちゃ、インキが乳化してしまって、汚れは出るし、

裏移りもするし、乾燥不良にも成ってしまって当然でしょう。最初にインキを

出し過ぎてしまったら、こりゃもう、全てがアウトッ!なんですわ。

 

ダメに成ってしまったインキを、キレイに洗浄して、壺の出し方から、やり直しです。

壺をシッカリ絞って、インキの出し方も少な目にして、そこから、試し刷り開始。

・・・当然の話ですが、ローラー上のインキが少ないですから、印刷の仕上がりも

こりゃ淡いです。

 

でもね、ここで淡いと感じて、すぐにインキを出してしまうのが一番アカンです。

まだ汚れが出ていないんなら、インキを出す前に、湿し水の量を絞ること。これが

一番肝心なんですわ。水を絞れば、確実に濃く成るんですから。

 

水を絞って、試し刷りで確認 → 汚れたけど、まだ淡い → 少し水を多目にして

インキも少し多目に出す → 汚れは消えたけど、まだ淡い → 水を絞る →

少し汚れたけど、まだ少し淡い → もう少し水とインキを多目に出す → 

この繰り返しで、インキも水も超少なく、濃度が良好な状態を作って行きます。

 

「エエッ!墨の1色刷りなのに、5回も試し刷りしちゃいました。オレってヘタですか?」

そう、ヘタクソなんです。ヘタクソだから、5回も掛けて、調整と確認を繰り返している

のです。この、超基本的な作業を、2回で済まそうとしてるから、トラブルが出るんです。

 

2回の試し刷りで、良好な状態を作るとか、1回でバッチリ!なんてのは、超ベテランの

世界の話なんですよ。ヘタクソな初心者が、それを真似たって、まともな印刷物は出来

ないんです。初心者の時に、この丁寧な試し刷りを、シッカリ理解出来るまで、何度も

何度も繰り返すこと。そして、よ~く考えること。それが、ウマく成る一番の近道なんです。

 

最初は辛いかも知れんけど、ウマく成れば、超楽に成るから、最初だけは、

遠回りして、シッカリ覚えて行こうね(^^)v