印刷Q&A pH値の上昇 | 1級技能士・成田の印刷技術

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● 質問

 

油性の菊全4色機ですが、最近、湿し水のpH上昇が激しく、

7.0 くらまで上がっています。5.5くらいが適正だと聞いた

事が有りますので、エッチ液メーカーに問い合わせたところ、

「大丈夫です」と言われてしまいました。これは本当に大丈夫

なものなのでしょうか。エッチ液の増量等しなくてよいのですか?

 

● 回答

 

大丈夫です (^^)v

 

チョッとだけ、難しい話に成ってしまうかも知れませんが、頑張って読んで下さいね。

例えばですよ、水道水のpHが、7だったとしましょう。7ってのは、こりゃ中性ですね。

そして、エッチ液の原液が、pH4(酸性)だったとしましょうね。

 

この、エッチ液を、2%添加したら、pH5 の湿し水が出来上がった。ここまではイイ

ですよね。この状態で印刷を開始して行きます。そうすると、紙の表面の物質だとか、

インキの溶け込みだとか、クリーナーだとかの、アルカリ成分が湿し水に溶け込んで

来て、湿し水のpH値が、上がって行きます。

 

・・・昔のエッチ液はね、これでも、pH値は、あまり上がらなかったんですよ。

緩衝材(バッファー)ってのがエッチ液の中にシッカリ入ってて、pHの上昇を抑えて

くれてたんですわ。

 

昔は、エッチ液の添加量を、pHでコントロールするのが一般的だったんですよ。

pHが上がれば、エッチ液がドボドボと入って、決められたpH値に戻すってワケです。

そう言う時代ですから、何よりもpH値の安定度が大切だったワケなのです。なので、

緩衝材を効かせて、pH値がフラフラしないようにしてたんですね。

 

やがて、連続給水のシステムが普及し出して、よりシビアなコントロールを求められる

ように成って行きます。こう成るとね、pH値では制御が出来ず、「何%添加」って言う、

エッチ液の、「定量添加」による制御が、一般的に成って来たんですよ。

 

定量添加の装置が普及して、pH添加装置を使わなく成った時、エッチ液の開発者さん

たちは、「あれ?pH添加しないんなら、緩衝材なんて不要なんじゃない?」って考える

ように成ったワケです。もともと、緩衝材ってのは、例えばグレージングが、発生し易く

成ったり、印刷障害が出易く成ったりと、あまり使いたくはない物だったんですね。

 

そこで、pH添加をしない、定量添加をする、と言う前提のもと、緩衝材を、あまり

使わなく成ったのが、今のエッチ液なのですわ。ですから、今のエッチ液は、pHが

上昇し易いんですよ。

 

私的には、pH7.5を越えて、アルカリ系に振ってしまうのはアカンと考えてます。

油性の場合だと、インキ中のドライヤ成分が、アルカリでは働き難く成ってしまうので、

乾燥不良が発生してしまう可能性が有りますし、UVなどでは、乳化率の問題や、

版面の地汚れの問題等も有りますので、7.5 が上限ではないかと思う次第です。

 

ただね、pH値ってのは、その工場の原水(水道水・工業用水等)の性質で、ずい分、

変動が出て来ます。また、インキが多目、湿し水も多目だと、やはり、上昇が激しく

成ります。もちろん、ローラー等のメンテ不良なんてのは、論外ですね。

 

今時のエッチ液は、そんな感じで、昔に比べて、pH値は上昇し易く成っていますので、

その点に関しては、あまり心配しなくても良いと思いますが、エッチ液のメーカーさんに

相談すると言うのは、とても大切だと思いますから、どしどし聞いてやって下さい。