輪転機のパイリング対策 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

チョッとビックリしてしまった話が有りましたので、聞いてやって下さい。

 

相手は「輪転機」ですので、これは、完全に私の専門外の話なのですが・・・。

輪転機って、スゴいスピードで、大量に印刷をして行くってのが普通ですよね。

ですから、出来るだけ、印刷を中断せずに進めて行きたいのです。

 

そこで、輪転機の、印刷停止要因って事に成るのですが、まぁ、いろいろ有る中で、

ブランパイリング(ブラン残り)による停止ってのが、ケッコウ嫌な要因の一つなのだ

そうです。印刷を中断して、ブラン洗浄をしなきゃアカンですから、イヤですわねぇ。

 

そこで、輪転機に於ける、ブラン残り解消法って、話に成るのですが、これがビックリ!

私のような、枚葉機専門の人間に言わせると、「はぁ~、なんでッ!」ってな内容です。

 

まずは、解消法① 湿し水の量を多くする。(水を多く上げて刷る)

そして、 解消法② エッチ液の添加量を多くする。(2%よりも3%!)

 

現役の輪転関係者3名に聞きましたが、その内の2名が、「その通り!」と言い、

残りの1名が、「ああ、30年位前には、そんなやり方を聞いた事が有りますよ。

でも、今時、そんな事をしてる人は居ないでしょ、ハハハハ、そりゃ逆効果ですよ。」

 

そうなんですよ、私の理論と言うか、印刷の一般理論からしても、湿し水を上げたり、

エッチ液を多くしたりってのは、完全に逆効果だとしか思えません。だってそうですよねぇ、

湿し水を多くしたら、インキも多くしなきゃ濃度が出ません。ローラー上に余分な湿し水と

余分なインキが出来てしまいますから、乳化してしまって、まともな転移が出来なく成って

しまいますから、こりゃ、ブラン残りが、より発生し易く成ってしまうと考えるべきです。

 

んじゃ、肯定派の2名のご意見は?と言うと、私的には、これが超おもしろいんです。

「版面上の湿し水を多くしてやれば、ブランと接触した時に、ブラン表面の余分な物を

 取り去ってしまう事が出来るんだよ。エッチ液の増量も同じ効果が有る。」

 

ねッ、なかなかスゴイでしょう。枚葉機の人間に言わせれば、超ナンセンスですわ。

・・・んでもね、この方法、ごまかしとしては、有効なのだそうです。「あ~、あと1万枚

刷れば終わりなんだよなぁ~、今更、機械を止めて、ブラン洗浄なんて、したくない

よなぁ~。」って時に、水を多くしてやると、一時的にゴマカセるのだとか。

 

もちろん、こんな対応をすれば、今にスゴいブラン残りに成ってしまいますが・・・。

まぁ、品質的に、あまりうるさくない輪転だから出来る、ゴマカシ技ですね。

 

んでも、根本的な改善策ではないし、間違ったやり方なので、多用は厳禁です。

 

私はね、「印刷は物理じゃない、科学で考えなきゃダメ!」

と、言い続けて来た人間です。湿し水を多くして、ブランの表面の不要物を取り去るって、

そりゃ、完全な物理でしょう。今時の高性能なインキと、強力なエッチ液を相手にして、

そんな超物理的な対応をしてちゃアカンですよ。

 

極少量のインキと、極少量の湿し水で印刷を進行させた時、初めて、インキの性能も、

エッチ液の性能も発揮されるんです。しっかり性能を発揮させてやれば、今時のインキが

簡単にパイリングしてしまう事なんて、そう簡単には起きません。

 

多くの輪転会社さんが、間違ったやり方を信じ込んで実践している。これには、本当に

ビックリしました。目を覚まさにゃアカンです。印刷は科学なんですから。