印刷機 昔話 | 1級技能士・成田の印刷技術

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先日、昔の印刷機の話をしていたら「エエッ!そんな事してたんッスかッ!」
などと、若手から言われてしまいまして。・・・その内容ってのが、版替えの話
なんですわ~。

今時の版替えなんてのは、印刷機のボタンを押して行くだけで、OKですわね。
半自動なら、手で刷版を差し込むって言う作業も有るかと思いますが、それでも、
版替え時に、工具なんてものは、何も要らんですよねぇ。

我々の時代(30年前)の版替え作業には、必ず工具が必要でね、スパナ、棒ネジ、
またはボックスレンチ、及びパンチピン、なんてのを持ち運びながら、4つの胴を
順番に移動していました。

版万力に版を差し込んで、パンチピンで位置決めして、咬側の万力を閉じさせる。
ずーっと昔は、この版万力を閉じさせる作業も、万力に付いた10個ほどのボルトを
ボックスレンチで一つづつ絞めて行くって言う作業が有ったんですが、これが、
棒ネジ1本の動作で、一気にクランプしてしまう機構が出た時には、超感動もの
だった記憶があります。「ワンタッチ万力」とか言ってましたね。

咬の万力に版を固定したら、版胴を印刷状態(胴入れ状態)にして、版を手で
押さえながら、寸動で咬尻まで送って行きます。版の咬尻を尻側の万力に納めて、
咬側と同じように、万力を絞めるってわけですね。

さて、問題はここから。版を張るって言う、超大切な作業が有るんですよ。
版万力には、ボルトが3本~5本付いてましてね、これを1本1本、スパナで
絞めて、版を張って行くワケなんですが、この時、スパナの力加減ひとつで、
見当が変わってしまうので、4胴共、同じテンションで絞めなきゃアカンのです。

版替えのたびに、胴間のステップに寝転がるような体制で、カリカリカリカリ、
スパナでボルトを回して、版を張って行くんですが、この時の締め加減は本当に
繊細でね、実際に見当合わせの作業の時も、このボルトの咬尻側を緩めて、
咬側を、ほんの少しだけ絞め込んで、再び咬尻側を絞めて・・・なんて事を繰り返して
4版の見当を合わせていたんですよ。

コントロールテーブルで、上下左右の見当を遠隔操作するシステムは、割と早くから
有ったんですが、コッキング(版を斜めにする)って言うシステムが一般的に成った
のは、ケッコウ遅かったんで、この点は、オレ達技術者の勘と、スパナの力加減に
全て頼ってたんですね。

「印刷は、技術者の経験と勘次第ッ!」
まさに、その通りの、古き良き時代だったですね (^^)v