印刷Q&A 耐水紙の悪影響? | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

●質問

先日、耐水紙とユポを、同じ絵柄で刷ると言う仕事が有りました。
先に耐水紙を刷って、その後、同じ版でユポを刷って、片面が完了し、
版を替えて、あがり面の耐水紙を刷って、同じ版でユポを刷っていたら、
平網の中に、先刷り面の絵柄が、ゴーストの様に出て来てしまいました。

高感度UV機なので、ブランがダメに成ったと思い、ブランを新品に交換しても
直りませんでした。良く見ると、版の平網部分が、おかしく成ってしまっており、
その平網部分に、先刷りの絵柄が、くっきりと残って、版が着肉不良のように
成っていました。版を新品に替えると、この症状が消えましたので、明らかに
版が悪く成っている事は分かったんですが、こんな経験は初めてです。
何が悪さをしているのでしょうか。

●回答

文章だけだと、分かり難いですよね。私も分からなかったので、連絡して詳しく
聞いてみました。ついでに、現物も見せて頂いたのですが、これはビックリです。

あがり面の絵柄は、ほとんど全面平網なのですが、その平網の中に、先刷り面の
絵柄が、くっきりと浮かび上がってしまっているんですわ~。油性の印刷で言う
なら、マイグレーション(グロスゴースト)みたいな感じです。

でも、今回は高感度UVなので、マイグレーションは考え辛いですよね。
そんな事より、もっと奇怪なのが、裏面の絵柄の位置が、一致しないんですよ。

普通は、裏面の絵柄と同じ部分に不具合が出ますよね。つまり、不具合に成った
ところを、光に当てて透かして見れば、同じ部分に裏面の絵柄が来るのが当然
なのですが、今回の場合は、先刷り面・咬側の絵柄が、あがり面・咬尻側に出て
来ているんですよ~???

分からんですね~。耐水紙を作ってるメーカーには知り合いがいないので、
ユポさんに電話して、いろいろ聞いていたら、いろいろ分かって来ました。

まず、今回の場合、最初に耐水紙で刷り出しを行っていました。この時に、
1度刷った耐水紙を、天地ひっくり返して(咬を逆にして)ヤレ通しをして
いたんですね。なので、先刷り面・咬の絵柄が、あがり面・咬尻に出たって
ワケなんですよ。

さて、んじゃ、何が原因で、版がダメに成ってしまったかって話なんですが・・・。

耐水紙ってね、水に対して強くないとイカンですよね。と言う事は、紙の表面に
水をはじく様な物をコーティングしなきゃ成らんワケですわ。んじゃ、どんな物が
コーティングしてあるか?って言うと、ネットで調べてみたら、パラフィンとか、
ワックスを紙の表面に浸み込ませてあるとの事。

この、パラフィンやワックスが、印刷中にブランに付きますよね。そしてブランから
版面に付いてしまうんですよ。こう成ると、版面の状態はアカンく成ってしまいます。
そりゃそうですよね、版面にパラフィンやワックスのような物が付いてしまったら、
こりゃ、まともなインキの着肉が妨げられてしまいますわ~。

・・・現物を見てみないと、どんな状況なのか分かり辛いことと思いますが、とにかく、
耐水紙を刷った時は、このパラフィンやワックスが、ブランや版や、ヘタをすると
ローラーなんかにも付いてしまって、それがケッコウ悪さをするのだと覚えておいて
下さい。特に高感度UVの場合だと、地汚れの発生原因に成る事も有るようです。