印刷Q&A 断裁面の紙粉 | 1級技能士・成田の印刷技術

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●質問

コート紙や、特に厚紙(アストル等)の場合に、断裁した面に紙粉が大量に
付いてしまっている場合があり、これが、ベタ印刷時のピンホールにつながり
非常に困っています。何か対策はありませんか。

●回答

断裁した面の紙粉は、ひどい時には、本当にひどいですもんね。
パッと見ただけでは、なかなか分からない場合もありますが、そう言う時には、
断裁面に透明なセロテープを貼り付けて、シッカリ密着させてから、ゆっくり
剥がして、そのセロテープを、黒い紙などの前で見てやって下さい。本当に
ひどい時には、セロテープに、ビッシリと紙粉が付いて来ます。

断裁面に紙粉が付いてしまっている紙で、ベタの多い絵柄を印刷したら、こりゃ
本当に悲惨ですよ~。次から次に、ベタ部分にピンホール(ヒッキ―)が乗って
しまって、クレーム品を作るようなもんですわ~。

以前、お邪魔した工場では、断裁面に一生懸命、掃除機を掛けてたんですわ~。
何してんですか?って聞いたら、断裁面の紙粉を掃除機で取ってるんだとか。
・・・そりゃ、掃除機じゃ無理でっせ~。

またある工場では、断裁面をサンドペーパーで磨いてるのを見た事が有ります。
サンドペーパーで削って、紙粉を落としてらっしゃるんですね。これもまた、
非常にご苦労な話ですわねぇ。・・・問題は、なんで断裁面に紙粉が発生するのか?
ってことを考えにゃアカンですよね。

例えば、菊全判の紙を、半切に断裁しようとした時、断裁機に半分だけ紙を
突っ込んで、包丁を落として断裁しますよね。この時に、奥に入った紙の
断裁面は、非常にキレイなんですわ。でも、手前の紙の断裁面には、紙粉が
イッパイ付いてるんですよ。

なんでこう成るかって言うと、これは包丁の構造上、仕方のない事なんですわ。
断裁機の包丁って、奥側は平らで、手前の方は斜めなんですよね。平らな面で
切られた断裁面はキレイなんですが、斜めな面で切られた断裁面は、こりゃ、
紙粉でイッパイなんですよ。

んじゃ、どうすればイイか。とっても簡単な話です。手前の紙の紙粉だらけの
断裁面を、もう一度、キレイに仕上げてやればいいだけのことなんですよ。

菊全の紙を、断裁機に突っ込んで、半切に切りました。この時、断裁機の奥に
突っ込んで切った方の紙は、これで断裁終了です。断裁面も非常にキレイです。
問題は、手前に残った紙。こいつの断裁面は汚いですから、こいつを、断裁面が
こっちを向くように、断裁機の奥に突っ込んで、汚い断裁面を少しだけ断裁して
キレイに仕上げてやれば、これで、汚い面は無く成ったってワケですわ。

二度断ちとか、仕上げ断ちなんて言いますが、私に言わせれば、これをするのが、
印刷用紙を半切にする場合の、当たり前の断ち方であって、一度だけ断って、
はい!終わり!なんてのは、まともな断裁とは言わないですね。

ただね、簡単そうに見えるかも知れませんが、断裁って、スゴク難しいんですよ。
特に、包丁の使い方って言うのは、本当に繊細なのだそうです。

包丁って、定期的に砥ぎに出すんですね。砥いだ直後の包丁の刃先は、かなり鋭利で、
すさまじく尖った状態です。この状態の時は、軟らかな紙、例えば上質紙などを
断裁するのに適しているのだそうです。

包丁の刃先が新品で、鋭利な状態の時に、コート紙のような硬い紙を断裁すると、
その硬さに刃先が負けてしまって、断裁面が波打ったような状態に成ります。
コート紙を断裁する場合は、包丁の刃先の鋭利さが、少し鈍って来た時が良い
のだそうです。その逆に、少し鈍った状態で、上質紙を断裁すると、切れが悪く、
紙を毟ったような感じに成ってしまって、紙粉が出やすく成ってしまうとか。
・・・簡単そうに見えても、断裁って、奥が深いんですね。