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「人は、何のために生きるのだろう?」

「自分だけの幸せ」ではなく、「誰かの幸せを自分の喜びにする生き方」にあるのではないか。
我欲ではなく、愛情を中心に生きる。
そんな生き方を、歴史や社会、身近な出来事、そして人生の「なぜ?」を通して、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

 

 

 

悪魔はカインに言った。

 

「私のかわいい子カインよ。お前は悔しくないのか。お前が神様に

 

供えたのは神様を愛していたからだろう。お前は長男としてアベル

 

より長い間神様に仕えてきた。それなのに神様はなんということ

 

だ。お前を無視した。お前の心を踏みにじった。お前の供え物は無

 

視しておきながら、こともあろうに弟アベルの供え物は受け入れ

 

た。こんなことが許されて良いのか。さあ傷つけられた恨みを晴ら

 

そう。怒れ。

 

神様とアベルに憎しみを燃え立たせるのだ。私の性質を受け継いだ

 

私の子よ、立ち上がれ。私がお前の心に埋め込んだ地雷を爆発させ

 

るのだ。嫉妬心と復讐心に火をつけるのだ。」

 

神様は大声で叫んだ。

 

「カインよ、今は悪魔に奪われてはいても、もともとお前は私の子

 

だ。私はお前を無視などしていない。私はお前を愛している。私は

 

お前を抱きしめたい。お前の中に悪魔が埋め込んだ嫉妬心と、復讐

 

心を除去しなさい。そうすればお前は悪魔と因縁を切ることがで

 

き、私はお前に全ての愛を注ぐことができる。

 

アベルよ、私がお前を愛したのは、同じようにカインを愛して欲し

 

いからだ。アダムは愛の主人として大きな心で、ルシファーの心の

 

寂しさを埋めてやれなかった。再現清算の公式を満たすために、ア

 

ダムの立場に立っているお前が、大きな心でカインの心を満たして

 

やらなければならない。お前たちは同じ兄弟ではないか。ルシ

 

ファーの位置にあるカインから敬慕を受けなければ、敬慕完成は失

 

敗し、お前は悪魔のものとなる。お前が勝利者になれるかどうか

 

は、カインの心を私の下に連れ帰ることができるかどうかにかかっ

 

ている。」

 

神様の声をかき消すように悪魔は更に大きな声でカインを誘惑し

 

た。

 

「神様の声に耳を傾けるな。お前は事実を直視するのだ。お前の長

 

男としての権威はどこにあるのだ。アベルが生きている限りお前は

 

いつも貧乏くじを引くしかない。殺せ、殺せ、お前の憎き弟を殺

 

せ。」

 

カインは弟アベルを野に誘い出し打ちかかって殺した。

 

これが人類最初の殺人事件となった。

 

再び人間は神様の目的を破壊した。

 

悪魔は高らかに言った。

 

「またしても私は勝った。憎しみの強さは強力だ。如何なる神様の

 

計画も一発で破壊する。私の根拠地は霊界にある。誰でも嫉妬心と

 

復讐心、憎しみを栄養として生きた者は、霊界で私のものとなる。

 

その度合によって、あるいは近く、あるいは遠くに位置する。

 

それにしても、今回の勝利は痛快だ。カインは霊界ではなく地上に

 

いて勝った。これで地上をも完全に掌握した。」

 

悪魔は霊界のみならず地上界まで支配するようになった。

 

悪魔はますます人の心に深く侵入した。

 

本心は隅に追いやられ、邪心は横暴を極めるようになった。

 

人が思うこと、考えること、行うことは、ことごとく悪に満ちるよ

 

うになった。

 

やがてアダムとエバの子孫が増えるにつれて暴虐が地に満ちた。

 

悪魔がその勢力を強めるに反比例して神様の影響力は影を潜めた。

 

神様の嘆きは日増しに深くなっていった。

 

神様の独り言をミカエルは聞いた。

 

「こんなことになるのだったら、人間なんか造らないほうが良かっ

 

た。」

 

ミカエルは驚いた。

 

「神様といえどもこの悲劇を耐えるには重すぎるのだ。」

 

重苦しい空気が漂う悪夢の世界が果てしなく続いた。

 

絶望だけが世界を覆っていた。

 

何事もなかったように日は昇り日は沈み歳月は流れた。

 

喜びの中で時の流れは速く、絶望の中で時の流れは遅い。

 

無限に感じられるほどの歳月が流れた。

 

花は主人を失った。

 

月はその優しい光を何のために放つのか、その意義を見出せなかっ

 

た。太陽はもう太陽をやめたいと考えた。

 

つづく