リンゴは思い切って声を上げた。
「私の造り主である神様、私の心の叫びを聞いて下さい。あなたは
目的を持って私を造って下さいました。あなたは、私の価値は人間
の登場と共にクライマックスを迎えると教えて下さいました。最高
の香りと最高の味を私が備えたのも明確な目的がありました。人間
が誕生して私達の本番が始まったのです。まだ幼かったアダムとエ
バが私を見つけました。最初は不思議な顔をしていましたが、私を
口に入れた瞬間、満面の笑顔となったのです。あの時ほど嬉しかっ
たことはありません。生まれてきて良かったと本当に幸せでした。
人間に愛され人間に喜ばれ、人間に生きるエネルギーを与えるため
に、あなたが私達を造って下さったのだと実感しました。一生のう
ちに人間に出会うことも許されず、何時の日か子孫が喜びの瞬間を
迎えることを期待して命を繋いでくれた私の祖先に感謝しました。
アダムとエバはその日以来、私を毎日のように訪ねてくれました。
私はアダムとエバの口の中で舌を心地よく刺激しました。最高の舌
鼓を聞きました。そして、やがてはいつの間にかアダムとエバ自身
の体の一部分となりました。あなたが定められた目的に生き、最高
の価値を発揮することができました。なのに今、私はもうリンゴの
価値を発揮することができません。主人を失ったのです。私はあな
たの目的のためにエネルギーとなりたいのです。あなたのお子様の
ために役に立ちたいのです。反逆者の栄養となり、この世を地獄に
するためのエネルギーになるくらいなら死んだほうがましです。
神様、何とか私達の訴えをお聞き下さい。」
すぐ桜が続けた。今がチャンスだと思ったのだろう。
「私はリンゴのようにお腹の中には入れてもらえませんでしたが、
アダムとエバの目には喜んでもらいました。私ほど絶賛の言葉をか
けていただいた花がほかにあるでしょうか。小さな花達は見やすい
ように上向きに花をつけていますが、私はアダムとエバより背が高
いので花を下向きにつけました。「わあきれい。最高。ワンダフ
ル・・・。」どれだけお褒めの言葉をいただき、どれほど喜んでも
らったことでしょう・・・。なのに今は・・・、心がうつろです。
仕方なく花を咲かせています。何とかして頂けませんか・・・、私
もあなたの目的に生きたいのです。」
神様は優しく答えた。
「私の造った作品達よ・・・、許してくれ。万物までも苦しめるこ
とになってしまった。私の子供が責任を完成できなかったことが原
因だ・・・。しかし、私は全知全能であり絶対的愛の存在だ。
一度立てた計画はどんなことがあっても成就する。
それまでの間、私と共に忍耐してくれ。子供達も、今は邪心に狂っ
ているが必ず本心に立ち返る日がやってくる。いや立ち返らせて見
せる・・・。」
つづく
