岩手県政、この4年間を振り返る | 岩手県知事・たっそ(達増)拓也ブログ

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岩手県政、この4年間を振り返る

 

平成31年4月27日(この日の後援会行事での資料です)

達増 拓也

 

<はじめに>

 

 4年前、四分五裂だった野党勢力が一つにまとまり、国政でも県政でも、生命や幸福を大切にする、希望が持てる政治への機運が高まりました。岩手において、この新しい力の結集が成功し、その後の4年間、岩手県民は、東日本大震災津波からの復興を力強く進め、人口減少問題に対処し、将来に向けたビジョンと計画を策定し、今、新時代の地域振興に取り組もうとしています。

 

<「希望郷いわて」の実現に向けて>

 

 4年前、平成27(2015)年の5月は、安全保障関連法案が衆議院に提出され、国民的な大議論になっていました。憲法違反が疑われる安保法案に反対する活動と、岩手の知事選・県議選に向けての準備が連動。「希望郷いわてを実現する会」が発足し、知事選告示の前日には、国政野党5党のトップが盛岡で「たっそ拓也必勝」記者会見を開きました。

 8月、9月の知事選・県議選の結果を受け、岩手県議会は「改革岩手」が最大会派・議長会派となり、志を共にする会派が連携しながら、東日本大震災津波からの復興やふるさと振興(地方創生)などの重要課題に向き合って、県民に寄り添い、歴史的な多くの成果を残す、県議会となりました。

 

<東日本大震災津波からの復興>

 

 この4年間で、宅地の造成は1,009区画から6,668区画に伸びて約9割が完成、災害公営住宅は3,168戸から5,517戸に伸びて99%が完成しました。県立病院と小中高の学校は全て再建。漁港施設、津波被災農地も復旧完了。陸前高田市の「アバッセたかた」や大船渡市の「キャッセン大船渡」など、商店街の再生や、商店の仮設から本設への移行が進みました。

 被災者の医療費負担金や介護・福祉利用料の免除措置を、国による特別な財政支援終了後も、県が財政支援を行って継続しています。

 道路の整備が大きく進みました。復興関係の高速道路・高規格道路が4年間で15区間、計百キロ以上開通。花巻釜石間も全線開通して三陸沿岸道路につながり、沿岸と内陸が初めて高速交通体系で結ばれました。復興支援道路と位置付けた一般国道等も17区間で改良が完了し、立丸峠も全線開通しました。

 道路整備の効果で港湾も活性化し、釜石港に岩手初のガントリークレーンが導入され、宮古―室蘭間に岩手初のフェリー航路が就航。平成31(2019)年3月、三陸鉄道リアス線開通し、宮古―釜石間の鉄路が復旧しました。

 これら、道路、港湾、鉄路の復旧・復興を活かし、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催につなげるべく、「三陸防災復興プロジェクト2019」を実施します。

 平成28(2016)年に台風10号が岩手を襲いました。岩泉町に現地対策本部を立ち上げるなど、県として直ちに緊急支援体制をとり、特に中小企業や商店街の復旧に対して、既存の制度を上回る支援を実行しました。

 

<人口減少対策―地方創生から人手不足問題へ>

 

 平成26(2014)年、日本に「地方消滅」論が広がり、国は地方創生の「まち・ひと・しごと創生法」を制定。全ての都道府県と市町村は、平成二七(2015)年度中に「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を策定することに。岩手県は平成27(2015)年10月に策定し、以後人口の自然減と社会減に歯止めをかける政策を総合的に展開しました。

 地元就職を促すために、行政と関係団体の総力を結集する「いわてで働こう推進協議会」を設立。地方創生の取組に加え、人手不足問題にも対処。「いわてで働こう宣言」と「イクボス宣言」を行い、「働き方改革」に取り組みながら、岩手ライフ応援マガジン『いわてWalker』も発行。

 

 <医師不足対策など、医療、福祉>

 

平成28(2016)年度から奨学金養成医師の県立病院配置を開始。

「県民みんなで支える岩手の地域医療推進運動」を続け、平成30(2018)年には10周年。医師の偏在是正のための「地域医療基本法案(仮称)」の制定を、岩手県から発信しています。

子どもの医療費助成を小学校卒業までの入院に拡大し、未就学児と妊産婦を対象に現物給付を開始。現物給付は、今年8月に小学生まで対象拡大します。

 岩手県立療育センターと盛岡となん支援学校を、矢巾の岩手医大附属病院の敷地内に移転新築。障がいのある人もない人も共に生きる、共生社会実現を目指します。

 

<農林水産業>

 

 「銀河のしずく」、「金色の風」がデビュー。のん(本名:能年玲奈)さんのCMも評判に。りんご「冬恋」や、いわて牛などと連動し、農林水産品のブランド化戦略を全面展開。海外にもPR。

 「いわて林業アカデミー」と「いわて水産アカデミー」を開講。

 

<商工、観光>

 

世界経済の激動や困難を乗り越えて、東芝メモリ新製造拠点の建設が決定、着工。自動車・半導体分野で、全国まれにみる生産と雇用の増大が見込まれます。県全体の企業誘致は、4年間で新規立地が46社、増築が61社です。

一人あたり県民所得は増加を続け、かつての対国比率8割水準から9割近くに上昇。雇用不足は解消され、人手不足が課題となる中、高校卒業生の地元就職率の上昇など、若者の地元志向が高まっています。

 いわて花巻空港初の国際定期便が台北、上海との間に就航。外国人観光客数が増大しています。

 

<スポーツ、文化>

 

 平成28(2016)年、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会を開催。岩手のスポーツ、文化の力、共生の力、おもてなしの力が最高度に高まりました。

 アール・ブリュットなど、障がい者の芸術文化活動支援も強化。

 ラグビーワールドカップ2019の釜石開催に向けては、復興交付金によるスタジアム整備支援も受け、平成30(2018)年に「釜石鵜住居復興スタジアム」オープニングセレモニー。

 平成30(2018)年には、盛岡市でデビスカップ日本イタリア戦があり、平昌オリンピック・パラリンピックで本県ゆかりの選手が活躍、「スポーツクライミング第1回コンバインドジャパンカップ盛岡2018」の開催もありました。大谷翔平くんの米国メジャーリーグ二刀流での活躍も県民を沸かせ、翌年には菊池雄星くんがメジャー入りと続き、小林陵侑くんがワールドカップ・スキージャンプで個人総合優勝という偉業を成し遂げました。

 文化では、岩手在住の沼田真佑さんと岩手出身の若竹千佐子さんが、連続で芥川賞を受賞。岩手県の高校生たちの文学関係での活躍もあり、「文学の國いわて」を事業化。ハローインターナショナルスクール安比の開校が決まりました。

 

<「いわて県民計画2019~2028」策定>

 

 平成31(令和元、2019)年度を初年度とする新しい県の総合計画を策定。「幸福指標」を導入。新しい科学技術や行政手法を活用して、北上川流域、沿岸部、県北部のそれぞれを開発するプロジェクトも盛り込みました。

 

<ILC国際リニアコライダー>

 

 ILC国際リニアコライダー関係の国際会議を支援し、県内、全国の機運醸成を図りながら、国に対して決定を働きかけてきました。平成31(2019)年3月、建設決定の意志表明には至らないが、関心を持って関係国・機関と協議を進める旨、日本政府が発表。

 

<おわりに>

 

 以上のような成果の上に、今後、岩手はどのような道を進んでいくべきでしょうか。「いわて県民計画2019~2028」の基本目標、「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」が指針になります。

まずは、被災地・被災者に寄り添いながら、交通インフラの飛躍的発展を活かし、復興を成功させましょう。そして、自然の美と神秘、防災復興学習の適地、文化・スポーツや食・レジャーの魅力で、岩手沿岸=三陸を、日本を代表する、国際的な、「幸福地域」にしましょう。

そして、全国まれにみる生産と雇用の増大が見込まれる北上川流域において、「岩手で働き、岩手で暮らす」ことの魅力を高め、人手不足問題を乗り越え、同地域を、やはり日本を代表する、国際的な、「幸福地域」にしましょう。

同時に、新幹線や高速道路もあり、特色ある地域資源に恵まれ、先端的な経済社会の動きもみられる北いわてにおいて、「ハローインターナショナルスクール安比」の開校による効果も活かして、先進的な公共政策を集中的に導入し、同地域を、やはり日本を代表する、国際的な、「幸福地域」にしましょう。

時代は、安全保障、人権保障、社会保障の上に、幸福保障を重ねるべき時代に。観光キャンペーンで「いわて幸せ大作戦」と銘打っていますが、県政全体を「いわて幸せ大作戦」として展開していきましょう。

(終)