小説「帰れぬ心の故郷」--6章-- |         きんぱこ(^^)v  

        きんぱこ(^^)v  

  きんぱこ教室、事件簿、小説、評論そして備忘録
      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

----------------------------------------------------------

帰れぬ心の故郷  --展開--  (1章へ)

----------------------------------------------------------



世の中には色々な人がいるわけだ。


3歳、4歳の頃はどんな子供でも純粋な心を持っているはずだ。


そこから、いろんな事が、我が身に降りかかって来る。


そして、人それぞれ、自分の人生が流れて行くのだろう。


そして、生きている間に幸せか不幸か、小さくも大きくも迷いや選択の機会にめぐり合う。


または、自分で決められない状況に追い込まれたりもする。


そうなった時に、遅かれ早かれ、自分をどうして行くかが悩みとなるだろう。


その、悩みの大小は関係ない。


世間ではどうであれ、自分にとって大きな悩みなら、そう言う事だ。


大きな悩みは頑張って考えなくてはならない。 妥協すると、そのツケが廻ってくる。


静かに・・・。 時には、自分でも気付かないかもしれない。



10月24日日記

「優生、元気にしているだろうか・・・。風邪、ひいてないか?パパがいなくて、寂しいだろうな。パパ、優生に会えなくて、ごめんなさい。パパも優生に会いたくてたまらない。優生が「パパ・・・・」って寂しそうにしているところを毎日想像しています。パパは優生の事が、世界で一番好き。優生にどんなことがあってもパパは優生の味方だよ。 保育園で運動会があったんだろうね。パパがいたらもっと楽しかっただろうな。 こんなことになって、優生に寂しい思いをさせてごめんな。パパは何処にいても優生を応援してるよ。」


嫁とは音信不通だった。


実家に電話しても教えてくれなかった。


家裁に行っても本人には会わせてくれない。 嫁との心の修復は・・・自分の心に聞いても何の感情も沸かない。


私が悪い。

嫁が悪いのではない。

しかし、子供とも会わせさせないことには憤りを感じる。

しかし、それは私が原因だ。


自分の体は間違いなく悪化している。


本当は、もう消えてしまいたい。


しかし、子供の為に十分な稼ぎが出来ない嫁だけにするわけにはいかない。


自分の性癖が悪いのだ。


もし、嫁が倒れたら、私がなんとかしなければ・・。 そう思うと、くたばるわけにはいかない。


競馬をやめる。


しかし、病気を考えると・・・・・。


実業の才能でもあればよかった。


(結果を出して、けじめをつけよう・・)


競馬で勝負を始めて3週間が過ぎた。


それまで、大阪を離れて京都や神戸に寝泊まった。


競馬は6度目の挑戦になった。


この日は京都競馬場にいた。



きょと2

(京都競馬場のパドックは正円だ。)


貯金は20万と少しになっていた。


その日は朝から調子が悪かった。

1番人気が絡まないので当たらなかった。

要するに、私だけではなく、賭ける人全てが予想しにくいレースばかりということだ。


4レースをパスして、考え直した。

16頭以上のレースは、思い切って穴、大穴狙いに変えた。

10番人気から16番人気の中から3頭選び、今までの賭け方に追加した。

当然掛け金は増えるが、しかたがない。


貯金が無くなるまでの勝負だ。


5レースから、再び賭け始めた。

6レースの中山は荒れた。

3人気、12人気、10人気。

三連複が当たった。

配当は76万馬券。

一つ400円で賭けていたので約300万の勝ちとなった。


再び100円から倍倍で賭け始めた。

100円、200円、400円、800円、1600円、3200円。

ここまで当たらない。

だんだん焦りと冷や汗が出てくる。

中山8レース16頭立て、1600m芝。

次は6400円。 40通りなので24万円。

(このあたりが掛け金の限界だな・・・)


ここで11番人気が絡んで、三連複で21万馬券が当たった。


約1300万円。

9レースからは三連単。

1レース100通り(1万円)で100円から倍倍で賭けて行く。 ひとつ6400円で640000円。 11レースの中山だ。

ここで、13番人気が絡み、56万馬券が当たった。

約3400万。 これ以上は望めまい。


トータル5000万弱の勝ちだ。

こんな事は一生に一度しかない。

(これで人生の運を全て使ったかもしれない)


頭の中は完全に麻痺していた。


(これで、子供が大きくなれるまでのお金は確保した。それで十分)


その日は換金せずに、競馬場を離れた。

もう大丈夫だろう・・・そう思って大阪に戻ることにした。

ポケットに入れた当たり馬券を何度も何度も確認した。

それでも不安になり、サイフに入れた。

入れた後に不安になり、当たりの1枚は、再び胸ポケットに差し込んだ。

それでも不安になり、店で小さなバッグを買って1300万を換金するために梅田の場外馬券場に行って換金した。

「なんか、紙袋に入れてちょうだいや」

「・・・・」

係員は面倒くさそうな顔をして、換金作業に入った。


紙袋に入ったお金を確認もせずにバッグにしまいこみ、場外を出た。


直接自分のマンションに戻ろうと思ったが、ヒルトンに泊まることにした。


翌日、ボストンバッグを持って換金に行った。

時間がかかったが、現金に換えてすぐに銀行に行った。


子供の通帳を作って3000万を入れた。


(拳銃はいらないな・・大阪湾に捨てよう・・)


そう思って、久しぶりのマンションに戻た時に、二人の男に囲まれたまれた。



なにわ

(なにわ警察。この右手100m程の所に通天閣がある)


「ちょっと一緒にきてくれるかぁ」


「ん・・・なぁっ・・・・何ですか?」


「浪速警察のもんやけど、ちょっと聞きたいことがありましてね。」


「はぁ?どういうことですか」


頭の中で「意識するな!迷惑そうに振舞え!」と叫んでいた。


「うん、ちょっとある事件で、いろいろと聞き取りまわってるとこなんや、内密事やから協力してぇな」


「・・わかりました・・・・」


マンションを出るときに、拳銃は「広辞苑」をくり貫いて本の中に隠していた。


私は覆面パトカーに乗って浪速警察に向かった。


「帰れぬ心の故郷」--7章へ--
「帰れぬ心の故郷」--5章へ--
「帰れぬ心の故郷」--1章へ--