先日、抗がん剤治療中に避けた方がいい食品として、グレープフルーツと一部ハーブ(セントジョーンズワート)が挙げられることを知りました。
【がん】抗がん剤治療中に食べるもの 〜食いしん坊がん患者栄養部・第一回活動記録〜
4回目の抗がん剤の点滴から
3週以上経過後に起きた
皮膚トラブルをまた起こさないため、
再度調べたところ、
「抗がん剤とハーブ・漢方薬の相互作用」について気になる記事がありました。
ハーブや生薬の成分には、薬物代謝酵素の活性に影響する成分、血小板凝集を阻害する成分、女性ホルモン様作用をもつ成分、抗酸化作用の強い成分などがあり、抗がん剤の効き目を弱めたり、副作用を増強させる可能性が警告されてます。
ニンニクもCYP3A4で代謝される薬の代謝を促進し、効果を弱める恐れがあります。一方、イチョウ葉エキスや朝鮮人参はCYP3A4やCYP2D6を阻害し、分解される薬の効き目を高める可能性が指摘されています。
CYP3A4で代謝される抗がん剤としてタキソテール、エトポシド、グリベック、イリノテカン、タキソール、イフォスファミド 、タモキシフェン、ビンブラスチン、ビンクリスチンなど使用頻度の多い抗がん剤が含まれています。CYP2D6はドキソルビシン、タモキシフェン、ビンクリスチンなどの代謝に関与しています。
薬物代謝酵素に対する影響は複雑なため、相反する報告もあります。ニンニクに関してはCYP3A4を誘導すると考えられていますが、ある研究では反対に阻害するという報告もされています。いずれにしても、全ての抗がん剤治療で注意が必要です。野菜でも影響するものがあります。キャベツやブロッコリー、アルファルファなどのアブラナ科の植物が一部の薬物の代謝を亢進することもあります。これは植物に含まれるインドールが原因といわれています。ニンニクもアブラナ科の野菜も、食事で適量を摂取するのは全く問題ないですが、これらは抗がんサプリメントとして販売されていますので、それを大量に摂取するのは避けたほうが無難です。
発行:2007年2月/更新:2013年4月/福田一典(ふくだ かずのり)先生 銀座東京クリニック院長。昭和28年福岡県生まれ。熊本大学医学部卒業。国立がん研究センター研究所で漢方薬を用いたがん予防の研究に取り組むなどし、西洋医学と東洋医学を統合した医療を目指し、実践。
![ウインク](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/028.png)
[化学療法中に使用を避けたほうが良いハーブの例]
セントジョーンズワート (St. Johns Wort) |
・全ての化学療法と併用を禁止(CYP3A4, CYP1A2, CYP2B6, CYP2C9, P糖蛋白などの誘導) |
---|---|
ニンニク(Garlic) | ・ダカルバジンとの併用を禁止(CYP2E1阻害) ・他の化学療法との併用に注意(データ不足のため) ・血小板減少があるときは注意(血小板凝集阻害作用のため) |
イチョウ(Ginkgo) | ・カンプトテシン、シクロフォスファミド、EGFR-TK阻害剤、エピポドフィロトキシン、タキサン類、 ビンカアルカロイドとの併用に注意(CYP3A4, CYP2C19阻害) ・アルキル化剤、抗腫瘍性抗生剤、プラチナ製剤との併用は勧められない(フリーラジカル消去活性のため) ・血小板減少があるときは注意(血小板凝集阻害作用のため) |
エキナセア(Echinacea) | ・カンプトテシン、シクロフォスファミド、EGFR-TK阻害剤、エピポドフィロトキシン、タキサン類、 ビンカアルカロイドとの併用を禁止(CYP3A4誘導) |
大豆(Soy) | ・タモキシフェンとの併用は禁止(抗エストロゲン作用を阻害) ・エストロゲン依存性の乳がんや子宮がんの治療との併用は禁止 |
高麗人参(Ginseng) | ・カンプトテシン、シクロフォスファミド、EGFR-TK阻害剤、エピポドフィロトキシン、タキサン類、 ビンカアルカロイドとの併用に注意(CYP3A4阻害) ・エキナセア(エストロゲン依存性の乳がんや子宮がんには推奨できない) |
バレリアン(Valerian) | ・タモキシフェン(CYP2C9阻害)、シクロフォスファミド及びテニポシド(CYP2C19阻害)との併用に注意 |
カバ(Kava) | ・肝機能障害を起こす抗がん剤との併用は禁止 ・カンプトテシン、シクロフォスファミド、EGFR-TK阻害剤、エピポドフィロトキシン、タキサン類、 ビンカアルカロイドとの併用に注意(CYP3A4, CYP2C19阻害) |
グレープシード (Grape seed) |
・カンプトテシン、シクロフォスファミド、EGFR-TK阻害剤、エピポドフィロトキシン、タキサン類、 ビンカアルカロイドとの併用に注意(CYP3A4, CYP2C19阻害) ・アルキル化剤、抗腫瘍性抗生剤、プラチナ製剤との併用は勧められない (フリーラジカル消去活性のため) |
(J Clin Oncol 22: 2489-2503, 2004)
漢方はがん患者にとって有益なものもたくさんあります。
最新情報を知り、担当医や周囲とよく相談しながらうまく活用しましょう。
これもご参考まで。
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