グラナドス「ゴイェスカス」 | 翡翠の千夜千曲

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Granados: Goyescas (Fernando Pérez)

Goyescas, Los majos enamorados (The Gallants in Love): 

00:00 – 1. Los requiebros (The Compliments) 

09:36 – 2. Coloquio en la reja (Conversation at the Window) 

20:50 – 3. El fandango de candil (Fandango by Candlelight) 

27:03 – 4. Quejas, o La Maja y el ruiseñor (Complaint, or the Girl and the Nightingale) 34:23 – [Intermezzo] 

39:03 – 5. El Amor y la muerte (Balada) (Ballad of Love and Death) 

52:29 – 6. Epilogo: Serenata del espectro (Epilogue: Serenade to a Spectre)

 

Granados. Goyescas. OCB (Barcelona Symphony Orch.). García Navarro. 1992

 

 

 

 

 

   最初の動画は、ピアノのために書かれた最も豪華な組曲の粋な演奏です。この組曲を知っている人なら、おそらくデ・ラローチャのリズミカルな活力に馴染みがあるでしょうが、リズミカルでしなやかで繊細な声部で出来上がっていて、調の変化は単なる構造や色彩的な要素ではなく、いかにも恍惚とした瞬間として扱われるという、非常に変わったアプローチをとっています。ペレスの演奏には、血管のように流れる暗くてきらびやかな内層的な心象があり、おそらくこの音楽にふさわしい贅沢な自由な感覚を持っています。 その表現の音にほとんど盲目的な恋をしている音楽、その複雑さは、結び目ができたり厚くなったりするにつれて、より即興的になり、そのリズミカルな浮遊感は、ほとんど目立たないほどの和声の豊かな響きに埋もれています。

 「ゴイェスカス」(Goyescas)は、スペインの作曲家エンリケ・グラナドスが作曲したピアノ独奏のための組曲であり、またそれをもとに改作されたオペラです。題名はスペイン語で「ゴヤ風の音楽」という意味で、フランシスコ・デ・ゴヤの絵画やタペストリーの下絵に触発されて作曲されていて、オペラはピアノ曲よりも多くの楽曲素材が付け加えられています。

 ピアノ曲について、グラナドスはこんなことを書いています。

 「私が夢中になったのは、ゴヤの心理状態や彼のパレット、ゴヤ自身、彼のミューズであるアルバ公夫人や、彼とモデルや愛人、おべっか使いたちとの口論。白みがかったあの桃色の頬と対比をなす、黒いビロードの生地。アコヤガイのような手と、漆黒の装飾品にもたれかかったジャスミンの花。こういう人目を引かないものに、私はとり憑かれているのです。」

 この作品は1911年にされたピアノ独奏用の組曲です。同じ年の3月11日にカタルーニャ音楽館において初演された、と言う記録が残っています。
 「ゴィエスカス」は、「恋する若者たち」(Los majos enamorados)という副題を持っています。グラナドスが非常に愛好したゴヤの作品に関連していますが、楽曲と特定の絵画との関係ではなく、絵画の音楽的な描写を示しているというよりも、むしろ気分や雰囲気を表しているものと考えた方がよさそうです。
 「ゴィエスカス」は2部構成で6曲からできていて、全曲を通奏すると1時間弱かかります。第7曲の「わら人形」は、最初から全6曲の中に含まれていたわけではなく、同名オペラの第1曲を持ってきたもので、現在では元々の作品と合わせて演奏されるようになってきています。

 ちなみに「わら人形」は、グラナドスの「ゴヤ風」の作品の中では唯一、現存する絵画に基づいて作曲された楽曲です。第8曲「ゴヤ風のセレナード」は、1909年に「ゴィエスカス」の一部として作曲されましたが、これから除外されたものが近年に再発見されるまで長年忘れられていたものです。

<楽曲の構成>
恋する若者たち 第1部  Los majos enamorados, parte I :
1.愛の言葉 Los requiebros
2.窓辺の語らい Coloquio en la reja
3.燈し火のファンダンゴ El fandango de candil
4.嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす Quejas, o la maja y el ruiseñor
恋する若者たち 第2部 Los majos enamorados, parte II :
5.愛と死 El amor y la muerte
6.終曲〈幽霊のセレナード〉 Epilogo: Serenata del espectro
補遺
7.わら人形 El pelele
8.ゴヤ風のセレナード Serenata goyesca

 なお、オペラに関しては見たことも聴いたことも、もっと極端に言えば存在すら知りませんでしたので、ウィキペディアにある資料をそのまま転載いたします。

 オペラは1915年に作曲され、「恋する若者たち」(Los majos Enamorados)という副題が添えられた。サルスエラの様式で作曲され、全1幕3景からなり全曲を通して演奏しても50分に満たない、小ぢんまりとした国民オペラである。スペイン語の台本はフェルナンド・ペリケ・イ・スアスナバール(Fernando Periquet y Zuaznabar)が担当した。パリのオペラ座での初演が予定されていたが第一次世界大戦の影響で中止となり、初演は1916年1月28日にニューヨークのメトロポリタン歌劇場において行われた。初演は大成功であったとする説と、賛否両論に分かれたとする説がある。なおグラナドスは、この作品の初演のために夫婦で渡米し、帰路の船でドイツ軍潜水艦による無差別攻撃に遭い、悲劇的な最期を迎えた。

第1景と第2景をつなぐ間奏曲はオペラのほかの部分を圧するほどの人気を博し、グラナドス自身によるピアノ独奏編曲 や、ガスパール・カサドによるチェロとピアノや、ピアノ三重奏のための編曲などがある。しかし「わら人形」とともに元となったピアノ組曲には含まれていない曲で、上演の準備中に指揮者の要望に応え、差し替え用として一晩で急遽書かれたものである。

<構成>

  • 第1景 Cuadro I
    • わら人形 El pelele
    • 二輪馬車 La calesa
    • 愛の言葉 Los requiebros
    • 間奏曲 Intermedio
  • 第2景 Cuadro II
    • 燈し火の踊り El baile de Candil
    • [--]
    • ファンダンゴ El Fandango
  • 第3景 Cuadro III
    • 間奏曲 Intermedio
    • マハと夜鳴きうぐいす La Maja y el ruiseñor
    • 窓辺の恋の二重唱 Dúo de amor en la reja
    • 愛と死 El Amor y la Muerte

 こうした楽曲は、ともすれば「標題音楽的」であるとも言われかねないのですが、そうした憶測や枠組みを超えた作品としての価値があると思います。作品自体が魅力的で面白く、演奏効果を追求できる作品となっています。

 

※ 以前の記事

○ フルートの出番です99  グラナドス「アンダルーサ」

 

※ 演奏会のご案内⑬ ダンシングフルートVol2

 

※ 演奏会のお知らせ⑭ 翡翠トリオピアノ三重奏の夕べ

 

 

Granados,Enrique グラナドス ゴイェスカス, エル・ペレレ, 間奏曲

出版社 全音楽譜出版社

 

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