フルートの出番です298 マルタン「フルートピアノのためのバラード」 | 翡翠の千夜千曲

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F. Martin: Ballade for flute and piano

Denis Bouriakov, flute; Naoko Ishibashi, piano 

Recorded live at Hakuju Hall in Tokyo, Japan, 2019

 

 

 

 

 実に面白い。知的でアクロバット的でスポーツをする楽しさもある。これは、マルタンがダルクローズの理論を学んで、その研究所で音楽理論や即興演奏を教え、ジュネーヴ音楽院で室内楽を指導していたことと大いに関係しています。

 マルタンは、シェーンベルクの十二音技法を独自に発展させていますが、調性破壊や表現拡張の手段としてではなく、あくまで旋律の可能性を豊かにするための道具と考えていました。このためマルタンは調性に固執し、無調には反対した立場を取っています。

 つまり、身体が受け付けないような人工的で無機的なものは作りませんでした。今回紹介するバラードと名付けた一連の作品は、様々な楽器によって表現されています。

バラード Ballade

 

  • アルト・サクソフォーンとピアノのための/アルト・サクソフォーン、弦楽合奏、打楽器とピアノのための (1938)
  • ピアノと管弦楽のための (1939)
  • フルートとピアノのための / フルート、弦楽合奏とピアノのための (1939 / 1941)
  • トロンボーンとピアノのための / トロンボーンと小管弦楽のための (1940 / 1941)トロンボーンの代わりにテナー・サクソフォーンでも可
  • チェロと小管弦楽のための (1949)
  • ヴィオラと管楽合奏のための (1972)

 演奏はブリアコフですが、さすがですね。テクニックが抜群です。そう言えば、昨年広島交響楽団を退団されたフルート奏者の中村めぐみさんがブリアコフとツーショットで写った写真をいつだったか見ましたが、様々な知遇というものを見るにつけ世界は狭いなあとも思います。退団されましたが、引き続き中村めぐみさんを応援しています。中村めぐみのフルートダイヤリー

 作品については、ムラマツの三上さんの解説に詳しいので省略します。

 

<演奏者>

デニス・ブリアコフ(フルート)

 1981年、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国・シンフェロポリ生まれ。モスクワ音楽院を卒業後に渡英し、英国王立音楽院にてウィリアム・ベネットのもとで学ぶ。11歳の時から独奏者としてロシア各地で演奏を重ね、これまでにモスクワ交響楽団、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団、アンサンブル・オブ・トウキョウ、ミュンヘン室内管弦楽団、パリ室内アンサンブルなどと共演している。

 オーケストラ奏者としては、フィルハーモニア管弦楽団、リーズのオペラ・ノース、フランクフルト放送交響楽団、フィンランドのタンペレ・フィルハーモニック、メトロポリタン歌劇場管弦楽団では首席フルート奏者を務めた。2015年よりロサンジェルス・フィルハーモニックの首席フルート奏者を務めている。

 またソロ演奏者としても、2004、2006年の英国フルート協会コンベンション、2005、2007年のNFAコンベンション、2007、2011、2013年日本フルートコンベンションにてリサイタル演奏を行うなど、世界各国で活躍している。

主な受賞歴

  • 1998年:チェコのコンチェルティーノ・プラガ国際コンクール1位。
  • 2002年:カール・ニールセン国際フルートコンクール2位。
  • 2003年:レオナルド・デ・ロレンツォ国際フルートコンクール2位(1位なし)。
  • 2004年:ミュンヘン国際音楽コンクール課題曲演奏特別賞及びベーレンライター賞。
  • 2005年:ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール2位。
  • 2006年:北京オーレル・ニコレ国際フルートコンクール2位。
  • 2007年:バーネット財団フルートコンクール1位。

石橋尚子(ピアノ)

 桐朋女子高校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。
 第82回日本音楽コンクールにおいて「コンクール委員会特別賞」、びわ湖国際フルートコンクールでは「最優秀協演賞」を受賞。
 リサイタルやCDレコーディングなどで多くの演奏家と共演している他、神戸国際フルートコンクールや日本木管コンクール、フルートコンベンションなどの音楽祭に公式ピアニストとして招聘されている。
 演奏の場は海外にも広がっており、2014年にはキューバで開催された《日本ーキューバ交流400周年記念コンサート》に出演、16年には英国フルート協会主催フェスティバル〔Flutastique〕で各国のプレイヤーと共演を果たした。

 

※ 以前の記事

○ マルタン「バラード」トロンボーンとピアノのための / トロンボーンと小管弦楽のための

○ ホルンの出番です249 フランクマルタン「7つの管楽器とティンパニ、弦楽器のための協奏曲 」

 

※ 演奏会のご案内⑫

 

マルタン、フランク/バラード

Martin, Frank BALLADE

<解説> 

 マルタンはスイス生まれの作曲家として一級の存在でしょう。彼は、チューリッヒで学んだ後、ローマ留学を経て、パリで、ドビュッシーなどの印象派の影響を受けました。その後、シェーンベルクの12音技法にも近付いたほか、ジャズの楽器を交響曲に取り入れる試みをしたこともありました。マルタンは、独奏楽器 (サクソホーン、フルート、ピアノ、トロンボーン、チェロ) とピアノ又は小オーケストラのために、「バラード」 を5曲残しました。このうち、フルートを独奏楽器とするこの曲は、1939年の第1回ジュネーヴ国際音楽コンクール・フルート部門の課題曲として作曲されました。 (この時第1位入賞は先年亡くなられたアンドレ・ジョネ氏でした。)この曲には彼の生きた時代の空気が高度な技術を要求しつつ、伝えられているように、私には思えます。無機的にフルートが同じ音価を奏する導入部。ジャズのリズムを取り入れたヴィヴァーチェの部分。フルートのカデンツァの後、次第に速さを増し、冒頭の動機が回帰し、その後、再び速度を速めてクライマックスを作ります。最後まで、ほとんど緊張の弛むことのない曲ですが、カデンツァの後の低い音域の変化が、クレーの絵のような独特の魅力を感じさせます。(解説/三上明子)

 

プロコフィエフ:フルート・ソナタ 作品94

カール=ハインツ・シュッツ(フルート)、 赤堀絵里子(ピアノ) (アーティスト), プロコフィエフ他 (作曲)  形式: CD

1    フルート・ソナタ ニ長調 作品94 I.Moderato
2    フルート・ソナタ ニ長調 作品94 II.Scherzo
3    フルート・ソナタ ニ長調 作品94 III.Andante
4    フルート・ソナタ ニ長調 作品94 IV.Allegro con brio
5    フルート・ソナタ I.Heiter bewegt
6    フルート・ソナタ II.Sehr langsam
7    フルート・ソナタ III.Sehr labhaft
8    フルート・ソナタ III.March
9    グランド・ソナタ 嬰ハ短調 作品53 I.Patetico
10    グランド・ソナタ 嬰ハ短調 作品53 II.Pastorale
11    グランド・ソナタ 嬰ハ短調 作品53 III.Burlesco
12    フルートとピアノのためのバラード