メトネル「おとぎ話」 | 翡翠の千夜千曲

翡翠の千夜千曲

音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

Nikolai Medtner ‒ 2 Skazki, Op. 20

Nikolai Karlovich Medtner (1880 - 1951), 2 Tales, Op.8 (1909)

Performed by Geoffrey Tozer (2004) 

00:00 - No. 1 Allegro con espressione 

03:10 - No. 2 Pesante Minaccioso

 

 

Nikolai Medtner ‒ 6 Skazki, Op.51

Nikolai Karlovich Medtner (1880 - 1951), 6 Tales, Op.51 (1928) 

Performed by Geoffrey Tozer 

00:00 - No. 1 Allegro molto vivace … e sempre leggierissimo 

05:35 - No. 2 Cantabile, tranquillo 

08:46 - No. 3 Allegretto tranquillo e grazioso 

12:07 - No. 4 Allegretto con moto flessibile 

15:49 - No. 5 Presto 

17:45 - No. 6 Allegro vivace sempre al rigore di tempo

 

 

 

 

 今日は、遠藤紗和さんをはじめとする小学生位のピアノをお勉強している子供たちへのお年玉のつもりで、ニコライ・カルロヴィチ・メトネルの「おとぎ話」をお届けしましょう。メトネルという人をあなたは知っていますか?ロシアのピアニストで作曲家でした。

 メトネルはロシアで生まれた人です。7歳ほど年上のラフマニノフやスクリャービンから見ると7歳年下と言うことになります。その先輩たちの個性的で圧倒的な芸術性から見ると、やや地味なのかもしれません。けれども、それは「ロシア以外」の西側諸国(ヨーロッパ)の印象ではないでしょうか。ロシアでは、ホロヴィッツなどをはじめとするロシアで勉強をしたピアニストは必ずと言っていいほどメトネルを学習するようです。彼の楽譜は15年ほど前までは、海外から取り寄せるしかない様でしたが、最近では人気が高まっているようで、殆どすべての楽譜は現在日本でも手に入れるようになっています。

 先ずは、正確にお伝えしましょう。ニコライ・カルロヴィチ・メトネル(Nikolai Karlovich Medtner、1880年1月5日モスクワ - 1951年11月13日ロンドン)は、 ロシアの作曲家でピアニストです。

 モスクワ音楽院ではピアノを専攻して、ヴァシーリイ・サフォーノフの指導を受けたが、セルゲイ・タネーエフほかに作曲も学ぶ。1900年に金メダルを受賞しています。その後は、ピアニストとして活動しますが、タネーエフの勧めもあり、後には作曲も本格的に取り組むようになります。1909年に母校のピアノ科で教授を務めますが、演奏活動が多忙で翌年辞任し、少し落ち着いた1914年に復職しています。1916年には、作曲によりグリンカ賞を受賞。

 作風は、後期ロマン派の流れを汲んだ叙情的で、ロシアの風土を感じさせるものです。「時に例えようもない美しいメロディーは、1度聴くと頭から離れなくなりその魅力の虜となる」と、メトネルの演奏を得意としているピアニストのアムランが述べています。
 さて今日聴く音楽ですが、メトネルは「おとぎ話」(skazka)という短い曲をたくさん書いています。日本人の耳には哀愁に満ちた愁いを帯びた響きを懐かしさを感じるのではないでしょうか。ラフマニノフがロシア革命後に亡命を余儀なくされましたが、メトネルは演奏の都合上から母国から離れ主にイギリスでの音楽活動をし、最終的にはロンドンで亡くなっています。そのような境遇から、「望郷の想い」を含んだ作風にもラフマニフなどと近いものを感じ取ることができるのでしょう。

 英語の命名法「Fairy Tale」は、「Zolushka(シンデレラ)とIvan the Fool(イワンの馬鹿)に捧げられていることから、Op 51の6曲がふさわしいかもしれません。そして、ある種の魔術は、第4番のメインテーマ(sostenuto、magico)の呪文のような単調さに明らかに示されています。1930年にペンシルベニア州ブリンマー・カレッジで行われたメトナーのリサイタルのプログラムノートによると、「最初の物語では登場人物が紹介され、2番目の物語はシンデレラの歌、最後は愚か者の踊りである」。そうであるならば、イワンの踊りの吃音のイントロダクションは、メトネルのオノマトペ的音楽表現の稀有な例かもしれない。当然のことながら、イワン・イリインは、素朴な外見の背後には高尚な象徴主義と理想主義があると推測しています。このセットは、メトネルが私的な集まりで演奏した後、喜んだラフマニノフに「コーリャのような物語を語る人はいない」と叫んだのである。イワンの踊りの躍動感は、今やフランスで貧困に近い生活を送っていた作曲家の鬱病の高まりを裏切っている。彼の落胆は、歌手のタチアナ・マクシナに宛てた手紙で明らかにされています。「私は、この物語全体が、私の人生で何度も自分自身を証明してきた「イワンの馬鹿」についての別のおとぎ話になるのではないかと恐ろしい予感がしています」。

 今年の始めはつらいニュースが多いのですが、ピアノを勉強するあなたはぜひ自分の心に灯をともし、その光であなたの周りに火を灯してくれたらとてもありがたいことです。最後に一言、メトネルは「音楽の基本は歌にある」と言っています。私も全く同じ考えです。

 

※ タネ―エフの音楽

 

ドーヴァー社

メトネル:ピアノのためのおとぎ話全集 【輸入:ピアノ】

Complete Fairy Tales for Solo Piano

メトネル, Nicorai Karlovich

MEDTNER, Nicorai Karlovich

通常価格6,050 円(税込)

 

Piano Sonata, Etc: Mejoueva

Medtner, Nikolay (1880-1951) 

 

メトネル:
・ピアノ・ソナタホ短調Op.25-2『夜の風』
・6つのおとぎ話Op.51
 イリーナ・メジューエワ(P)

 録音時期:2003年5月7~9日
 録音場所:新川文化ホール(富山県魚津市)
 録音方式:デジタル(セッション)

 

おとぎ話/忘れられた調べ~メトネル作品集

メジューエワ(イリーナ) (アーティスト, 演奏), メトネル (作曲)  形式: CD

曲目リスト
1    おとぎ話 変ロ短調 作品20の1
2    4つのおとぎ話 作品26 第1番 変ホ長調
3    4つのおとぎ話 作品26 第2番 変ホ長調
4    4つのおとぎ話 作品26 第3番 ヘ短調
5    4つのおとぎ話 作品26 第4番 嬰ヘ短調
6    おとぎ話 ホ短調 作品34の2
7    おとぎ話 ホ短調 作品14の2 《騎士の行進》
8    おとぎ話ソナタ ハ短調 作品25の1 Allegro abbandonamente
9    おとぎ話ソナタ ハ短調 作品25の1 Andantino con moto
10    おとぎ話ソナタ ハ短調 作品25の1 Allegro con spirito - Andantino con moto - Allegro con spirito
11 《忘れられた調べ》 より (4曲) ダンツァ・グラツィオーサ (優美な舞曲) イ長調 作品38の2
12 《忘れられた調べ》 より (4曲) ダンツァ・フェスティヴァ (祝祭の舞曲) ニ長調 作品38の3
13 《忘れられた調べ》 より (4曲) カンツォーナ・セレナータ (夕べの歌) ヘ短調 作品38の6
14 《忘れられた調べ》 より (4曲) プリマヴェラ (春) 変ロ長調 作品39の3