ワーグナー「さまよえるオランダ人」 | 翡翠の千夜千曲

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Richard Wagner: "Der fliegende Holländer" (Bruxelles, 2005)

Egil Silins (Hollander), Anja Kempe (Senta), Alfred Reiter (Daland), Torsten Kerl (Erik), Jacqueline Van Quaille (Mary), Jorg Schneider (Steurmann) 

Conductor: Kazushi Ono 

Director: Guy Cassiers La Monnaie, 

Bruxelles, 20.12.2005

 

 

 

 昨日は、大変な地震があり、だいぶひどい被害が出ているようでお見舞い申し上げます。私の兄夫婦は柏崎にいて心配をしております。皆さんの地方では影響がなかったでしょうか。私は、このところその日その日の出来事を覗く習慣ができましたが、それで意外なことが分かりました。1703年(元禄16年11月23日)の12月31日には、元禄地震があり、南関東に大きな被害が出ています。1916年の1月1日には、 パプアニューギニアのニューアイルランド島でマグニチュード8.3の地震発生。阪神淡路も、東日本地震も寒い時期でした。つまり、寒い時期は油断がならないのです。どうぞ、普段からのご用心を!

 今日は、ワーグナーの「さまよえるオランダ人」( Der fliegende Holländer)を聴きます。この歌劇(楽劇)1843年の1月2日にドレスデンでワーグナー自身の指揮により初演されています。

 神罰によって、この世と煉獄の間を彷徨い続けているオランダ人の幽霊船があり、喜望峰近海で目撃されるという伝説を元にした、ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」(Aus den Memoiren des Herren von Schnabelewopski、1834年)にワーグナーがこの話を再構成し、着想は以前からあったようですが、1842年に完成し1843年に初演されたのです。
 ワーグナーの楽劇の中では、一番短いので今日は全曲を挙げてあります。指揮は大野和士、演奏はブリュッセルオーケストラだと思いますが、確信はありません。

異稿および1幕/3幕形式
 作曲者の欲した形式は1幕形式であったが、当時の未熟な舞台技術によって止むを得ず3幕構成にさせられた。なお、現行の楽譜に2つの稿があり、第1稿が荒々しいオーケストレーションの救済のない形(1841年版)、第2稿が幾分穏やかなオーケストレーションで救済のある形(1880年版)である。それぞれの稿の違う部分は、主に序曲の最後と終幕のフィナーレのオーケストレーションである。ウィーン国立歌劇場では、前演出までは第1幕の後に休憩を入れたが、今では完全に1幕形式上演である。現在のバイロイトを初めとして、ほとんどの歌劇場も1幕形式で上演される。

演奏時間
 1幕形式の場合で約2時間10分かかる。救済が無い初稿は、救済がある最終稿よりも2分から3分短い。ワーグナーの全オペラ作品では一番短い。3幕版は今日では実際の上演が珍しいが、各幕50分、50分、30分の割合。第1幕の後で1回だけ休憩を取る場合もある。


登場人物
オランダ人 - バリトン
ダラント船長 - バス
ゼンタ(ダラントの娘) - ソプラノ
エリック(ゼンタの恋人) - テノール
舵手(ダラントの部下の水夫) - テノール
マリー(ゼンタの乳母) - アルト
あらすじ
第1幕(第1ビルト)
 舞台はノルウェーのフィヨルドに面した港町。ダラントは一時避難で自らの家のあるここに投錨する。すると遠くから、黒いマストに真紅の帆を立てた幽霊船が現れる。幽霊船の船長のオランダ人は「呪いを受け7年に一度上陸できるが、乙女の愛を受けなければ呪いは解かれず、死ぬことも許されずに永遠に海をさまよわなければならぬ」と嘆く。

 ダラントはオランダ人から財宝を渡され、娘ゼンタと引き会わすことを約束してしまう。

第2幕(第2ビルト)
 ゼンタはオランダ人と出会い、その不幸に心打たれ、救いたいと思う。ゼンタはオランダ人の肖像を見ては思いを募らすばかりである。しかし、ゼンタはエリックという青年に愛されている。
 ゼンタは父とオランダ人に説得され、オランダ人につき従うことを約束する。

第3幕(第3ビルト)

 貞節を証明するために海に身を投じるゼンタ、第1幕の港町に再びオランダ人の幽霊船が現れる。オランダ人に会おうとするゼンタ。それを引き止めるエリック。オランダ人はエリックのゼンタへの愛を見て「裏切られた」と言い、帆をはり去っていく。ゼンタは自らの純愛を岩の上から叫び、貞節を証明するために海に身を投じる。ゼンタの純愛を得た幽霊船は呪いを解かれ、死を得て沈没する。そしてオランダ人とゼンタは浄化され昇天していく

 何かこれだけ読んでいると、それがどうしたと言う感じがするかもしれませんが、オペラとはそうしたもので、一番間違いないのは「歌舞伎」を見ている感じと考えると分かりやすいかもしれません。絵空事が、音楽と歌い手によって紡ぎ出されるスぺクタルと考えれば分かりやすいかもしれません。

 石川県の皆様には、大変失礼かもしれませんが、箱根駅伝見るか楽劇を見るかの二者択一ではなくどちらも楽しみつつ、被災地にも心を寄せ、できるならボランティア、できないなら寄付か、せめて祈りを捧げましょう。

 なおこの作品の詳細について以下の記事が参考になりますので、興味のある方はご覧ください。

 

※ 東京・春・音楽祭の記事

 

     「さまよえるオランダ人」スコアー IMSLP

 


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