ハイドン「トランペット協奏曲」変ホ長調 | 翡翠の千夜千曲

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J. Haydn: Concerto para Trompete e orquestra em Mi bemol maior

Trumpet Concerto in E Flat Major: I. Allegro - II. Andante - III. Allegro

Helmut Koch, Kammerorchester Berlin, Willi Krug

Famous Horn & Trumpet Concertos

 

 

 

 

 

   今では名曲と言われながらも、実はほんの最近まで埋もれていた曲と言うものが結構あります。このハイドンのトランペット協奏曲もその一つでしょう。トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob. VIIe:1(Concerto per il Clarino)は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1796年に作曲した作品です。初演から129年後に出版された作品ですから珍品とも言えます。1800年の3月28日にウイーンのブルク劇場で初演されましたが、不評だったと言います。
 ハイドンが一連の交響曲、弦楽四重奏曲などの大作をほとんど書き終え、オラトリオやミサなどに取り組んでいた晩年の作品の一つであり、最後に作曲された協奏曲でもありますが、何故に不評だったのでしょうか。

 この頃のハイドンにとって協奏曲は10数年も書いていませんでした。そんな時期にトランペット協奏曲を作曲したのは、ウィーンの宮廷トランペット奏者でハイドンの友人でもあったアントン・ワイディンガーからの依頼を受けてのことです。この時、創作意欲をかき立てたのは、おそらくワイディンガーの発明されたばかりのキイ付きトランペットのためという目新しさがあったからではないかと思われます。それ以前は自然倍音しか吹くことのできなかったナチュラルトランペットと違い、半音階を自由に出すことができるようになっていたからです。

 中低音域の音階で始まる第1主題の提示、繰り返される半音階、期待を裏切る偽終止、至る所に仕掛けがありますが、聴衆の反応は今一。僅かな資料によれば、客入りが悪く、共演したソプラノ歌手の状態も余り良くなかったようです。その後1802年にライプチヒに演奏旅行を行った際には大成功でしたから、彼と彼の新しい楽器は一躍脚光を浴びることになります。

 しかしながら、少しして新しく開発されたバルブ式のトランペットが主流を占めるようになります。1840年頃にはキイ・トランペットは姿を消します。これと時を合わせるようにハイドンの曲も一旦は忘れ去られてしまいます。

 その後、1899年にウィーンのトランペット奏者Paul Handkeがブリュッセルでハイドンの自筆原稿を再発見し、その後少しずつ知られるようになるのです。それ以来トランペットの協奏曲と言えばこの曲、と言われるような不動の位置を手に入れます。

 

              ユーチューブの静止画を借用しました

<曲の構成>

第1楽章 アレグロ
 変ホ長調、4分の4拍子、きわめて簡潔な協奏的ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ
 変イ長調、8分の6拍子。
第3楽章 フィナーレ:アレグロ
 変ホ長調、4分の2拍子、ロンド形式。溌剌とした曲想。

<演奏者>

 アリソン・ルイーズ・バルサム(Alison Louise Balsom, OBE, 1978年10月7日 - )はイギリスのトランペット奏者。ギルドホール音楽演劇学校で学んだ後2001年パリ国立高等音楽院を首席で卒業。 ヨーロッパを中心にソリスト、オーケストラとの共演で活躍している。
 1998年BBC主催の「ヤング・ミュージシャン・コンペティション」のファイナリストとして注目を集め、2000年モーリス・アンドレ国際コンクール「最も美しいサウンド」部門でプルミエ・プリ受賞。2006年にクラシック・ブリット賞(最優秀若手演奏者)、グラモフォン賞(クラシックFMリスナー賞)を受賞。2009年にはクラシック・ブリット賞(女性アーティストオブザイヤー)を受賞し、BBCプロムス最終夜コンサートのソリストを務めている。
 現在ロンドン・チェンバー・オーケストラで首席トランペット奏者、ギルドホール音楽学校のトランペットの客員教授に就任している。
 2005年NHK交響楽団サマーコンサートに出演。2006年に収録されたアッパークでのサロンリサイタル、2009年のプロムス・ラストナイトが放映された。
 8歳でトランペットを始め、10歳の時ホーカン・ハーデンベルガーの音色に魅了されてソロ演奏家を目指したとインタビューで答えている。ヨットの名手でもあることがプロムス司会者のクライヴ・アンダソンによって紹介されている。

 

※ 演奏会のご案内⑩ バスーン・ヴァイオリン・ヴィオラ協奏曲 他

 

トランペット楽譜 ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 ISR (全音楽譜出版)

 

Haydn & Hummel : Trumpet Concertos: Hummel : Trumpet Concerto in E flat; Haydn: Trumpet Concerto Hob.VII e-I, etc / Alison Balsom(tp/cond), Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen

アリソン・バルサム 、 ドイツ・カンマーフィルハーモニー

『ハイドン、フンメル:トランペット協奏曲集』
【曲目】
フンメル: トランペット協奏曲(変ホ長調)(1806)
ハイドン: トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.VII e:I
トレッリ: トランペット協奏曲 ニ長調“Estienne Roger”
ネルーダ: トランペット協奏曲 変ホ長調
【演奏】
アリソン・バルサム(トランペット、指揮)
ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー