モーツアルト「ピアノ協奏曲23番」 | 翡翠の千夜千曲

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         Mozart -Piano Concerto No 23 A major K 488, Maurizio Pollini, Karl Bohm

 

    

   Mozart: Piano Concerto No. 23 / Pires · Blomstedt · Berliner Philharmoniker

 

   私は、現在の指揮者の中で存命中の中でもすっかりご高齢となられたブロムシュテット氏のことをとても尊敬し、可能な限り振り続けてほしいと願っています。NHK交響楽団を中心に何度も聞きましたが、淡々と指揮する姿からは想像できない、端正でいながら情熱的で実に整然とした演奏を聞かせてくれることに思わず感謝の念を持ちます。

  本当は、今日取り上げるモーツアルトの23番のピアンコンチェルトもブロムシュテットとの取り合わせで聴きたかったのですが、幾つか見つかるも全曲演奏にたどり着くことができませんでした。それでも、部分的でも聴きたくて並べておきました。

  23番のコンチェルトは、色々な意味で面白い作品です。先ずは、我々からしてもほぼモーツアルトの作曲意図が感じられる作品であると言うことです。全ての作品がそうではありませんが、彼はスコアーを見ながらピアノを弾き、同時に指揮もしていたことが読み取れます。ここ数十年ほど同じように演奏する指揮者やピアニストを見てこられた皆さんにはよくお判りだと思います。

  次に、編成の問題です。現在は、様々な編成が組まれていますが、モーツアルトの時代は貴族や教会の規模に応じた予算や城主の考え方次第でオーケストラの規模が違っていましたが、いわゆるフォルテピアノが出来上がる前のチェンバロやハープシコード、そして初期のピアノの音量は現在の物からすると非常に華奢で音量の乏しいものでした。

  通奏低音と言うものは特にトゥッティで演奏に加わりながらオーケストラを率いて行くわけで、その際にピアノの音を邪魔しないように弦楽器では各パート1名にするような指示が書き込まれているのです。更には、独奏ピアノの楽譜は他のピアノ協奏曲とは違って細かいところまで記入されているのですが、例えばその後に書かれた24番では、即興的に書かれたものか訂正や補筆が少ないのです。

  ある研究者によれば、注文に応じて、或は締め切りが迫っているかどうかといった当時の状況に応じて変化していると思われるので、単純に判断はできないとするものの、その作品に対する思い入れみたいなものが見え隠れすると言うのは真実のような気がします。

  しかし、そういった状況を踏まえた上でもこの23番は、モーツアルトが望む形にたいして考え抜かれた完成度の高い作品と言えそうです。例えば第1楽章のカデンツは最初からきちんと書き入れられています。他の作品では、余白に書き込まれていたり、書き入れていないこともあるのです。2楽章と3楽章にはカデンツが入ることはないと言うことが明白に書き込まれています。

  最後に第2楽章を述べてみましょう。この曲に対して効果的に奥行きを与えているのはファゴットを中心としたクラリネットを中心とした木管で、ピアノの単旋律様の響きを実に味わい深く魅力的にしているのです。