花鳥風月 ディーリアス「春初めてのカッコウの声を聴いて」 | 翡翠の千夜千曲

翡翠の千夜千曲

音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

  花鳥風月を欧米の人はどう表現するのだろう。彼らは、秋の虫の音は、騒音だという。私も最近の秋の虫の音が大きくなって、どうも気になります。外来種が入っているような気がします。やたら大きい音でなく奴がいるのです。そう言えば、間もなく様々な花が咲いてきますが、ここ数十年全国的に広がったのがセイタカアワダチソウで、至る所に咲いています。あれは、菊の仲間だそうで、自分の勢力を増すために一種の毒を出してほかの植物を抑える役目をしているらしい。ですから、増えすぎると今度はその毒で自家中毒を起こし、やがて枯れます。自爆装置付き植物ですな。そう言えば、除虫菊というのは蚊取り線香の元ですからその毒を虫よけに使用しているのですね。

  少し話題がそれました。欧米では、花鳥風月をどう表現するかという問題でした。ある方のページに紹介されていた表現ですが、 beauty of nature  とか wonders of nature、或は traditional themes of natural beauty in Japanese aesthetics などともしています。artistic pursuits involving nature themes これは、はあまり感心しない。The beauties of nature with full of flowers, birds, winds and moon is the refined elegance of nature and moving to human mind. I would like to live with surrounded by full of flowers, birds, winds and moon, we called this refined elegant. これに至っては無茶苦茶だ。その方は、結局 natural beauty を選択されていました。

  例えば、第6番の交響曲「田園」では、実際にカッコウやナイチンゲールを鳴かせていましたし、ハイドンは雲雀、マーラーもカッコウでした。他にもたくさんの例が思い浮かびます。

  しかし、私が思っているのはそうことではありません。おそらく、私たち日本人が感ずるものは「けはい」であり、「あはれ」だと思います。そいう音楽が書けるのは日本人だけなのでしょうか。馬頭琴で馬の鳴き声やひずめの音を出したり、二胡でも同じような演奏を聴いたことがあります。でも、事象のそれは真似で合って気配ではありません。

 

   Frederick Delius - On Hearing the First Cuckoo in Spring

 

     ディーリアス 川面の夏の夜  マリナー指揮アカデミー室内管

 

  フレデリック・シーオドア・アルバート・ディーリアス(Frederick Theodore Albert Delius CH 1862年 - 1934)は、イギリスの作曲家です。父親が商売人だったこともあって、その手伝いをしたり、或はフロリダの農園経営を任されたりして、仕事を覚えさせられていましたが、音楽の夢を捨てきれずドイツのライプチィッヒ音楽院に入学したのは26歳の頃でした。マーラーが活躍し、ブラームスやチャイコフスキーがゲバントハウスで演奏会を開いたりしていた時代ですが、ディーリアスを励まし、もっとも勇気づけたのはグリークでした。

  そして、彼をもっとも人気をえた作品が、「ブリッグの定期市」(1907年)、「夏の庭で」(1908年、1911年改定)、「川面の夏の夜」(1911年)、「春初めてのカッコウの声を聴いて」(1912年)などです。レコードを見ると分かりますが、殆どビーチャムが指揮をしています。ビーチャムは、ディーリアスに心酔していたのです。雰囲気だけの音楽と思われるか、良い時代だなあと思うか、さてはて。

  ある評論家はこう書いています。「これらの見事な牧歌を聴けばほとんどの場合、作曲者がドイツの血筋を持ちフランスに居住した人物であるにもかかわらず、『イングランド』という言葉が思い浮かぶ。」つまり、彼の描く音楽にけはいを感じ取っていたのです。きょうは、「春初めてのカッコウの声を聴いて」と「川面の夏の夜」を聴いてみましょう。  

 

 

 

ディーリアス:管弦楽曲集(UHQCD)
ビーチャム(トーマス) (アーティスト, 指揮), ディーリアス (作曲), & 1 その他  形式: CD