エピゴーネンたち
ひとりがその夏、ひとつの美しく精緻な城を
創った。いまでは無人の廃墟と化したが、か
つて古老たちはその城を讃えた。いまでは廃
墟と化したその城のまわりに、遊園地さなが
らの偽の城ばかりが建っている。
空には星も月も見えない。その城を建てたひ
とりは、牢に繋がれて死んだということだ。
後年、何人かの善良なひとびとがその理由を
捜したが、ただひとつ言えることは、それら
がエピゴーネンたちの悪意によるものだとい
うことだけだった。
もちろんエピゴーネンたちが直接手を下した
わけではなかった。何か巧妙に仕組まれた罠
か運命がそのひとりを牢に追いやったのだと
憶測されるが、真実は誰にも知られないまま
だ。真実はそのひとりが建てたその城のみだ。
後年、エピゴーネンたちも理由なく、その牢
獄に消えた。鼻を殺がれ、脚を斬られて死ん
だということだ。悪しき盗作の城について語
るとき、ひとびとは何故か耳を閉じた。かれ
らの話すことはまちまちで、一貫性がなかっ
たし、それは現実から考えられる常識をはる
かに逸脱していた。
牢獄を調べてみると、いくつかの鼻とおぼし
き肉片と数の合わない脚が見つかったが、そ
のなかに真の城の主のものがなかったことだ
けがはっきりしている。すでに混迷を深めよ
うとしていた古い時代のことなので、それに
ついてわれわれは直截、語る術をもたないが、
それは現在のどこにでも起こっていることだ
と言えるのだ。