ドラゴンクエストⅤのフローラの扱いの悪さについて考察(?)する | えかきもじかき大道楽

えかきもじかき大道楽

創作活動に関するあれこれなどを綴っていくブログ。
不定期更新です。

 

 

みんな大好き大人気RPGの第5弾 ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁(以下、ドラクエ5に略)。

 

このゲームには二人のヒロインが登場する(DS版ではもう一人増えたけど、今回は割愛する)。

 

 

 

一人は主人公の幼馴染みのビアンカ

活発でしっかり者。主人公よりも2歳年上で、ベビーパンサーにゲレゲレギコギコなどといった個性的な名前を付けるなど、独特なネーミンスセンスが光る女の子だ。

 

 

 

もう一人はサラボナの令嬢フローラ

ビアンカとは対照的に大人しい清楚なお嬢様で、天空の盾を求めてサラボナにやってきた主人公と運命的な出会いを果たす。

 

ゲーム中盤でこの二人のどちらかを結婚相手に選ぶというのが、ドラクエ5の一大イベント、結婚イベントだ。

なんとも羨ましい。おい主人公、そこを変われ……と、冗談はともかくとして。

結婚イベント以上に斬新だったのは、ドラクエ5ではドラクエ史上初となる、二大ヒロイン制を導入してきたのだ。花嫁を選ぶという選択自体はファンタシースターⅢがやっていたけどね。さすがセガ。

 

二大ヒロイン制は、昔からあるシステムだ。

あだち充のみゆきしかり、超時空要塞マクロスしかり、二人の魅力的なヒロインが主人公の前に現れ、我々読者は主人公がどっちとくっつくのか日々悶々とする。

もどかしい! 実にもどかしい! 推しのヒロインと主人公がくっついてくれれば万々歳! その逆ともあれば、涙を流して怒りと共に襖の壁を拳でぶん殴る! と、それくらい我々読者を作品に夢中にさせてしまう、なんとも罪深いシステムなのだ。

そして、それらの作品に登場するヒロインだが、扱いの差はあれど、ほぼ均等な扱いというのが常だった。当たり前だ。考えてもみて欲しい。かたやヒロインが美人で、もう片方のヒロインがちょっとアレ系だったら、大抵の人は美人に傾くだろう。二人のヒロインとも魅力的に描かなければ、二大ヒロイン制とは言えない。

とはいえ、やはり最終的に結ばれるヒロインとそうでないヒロインとでは、扱いに差が生まれてしまうのも事実。ただ、その割合はだいたい6:4。悪くても7:3くらいだ。

 

で、ドラクエ5だが、パッケージでも描かれているように、メインヒロインはビアンカだ。

さて、フローラとの扱いの割合、どの程度だとお思いだろうか。

7:3? それとも8:2?

 

どちらとも違う。

こたえは9.5:0:5だ!!

 

なんとも襲撃的な数字であろうか。

それくらい、両者の間に差があった。

幼少期に主人公とお化け退治をして、確かな絆を得たビアンカ。大きくなったら一緒に冒険しょうねと約束し、その誓いを果たすかのように大人になって主人公と再会を果たす。

 

そんな主人公との絆が強いビアンカに対して、フローラはというと、いまいち印象が薄い。

それまで伏線らしい伏線はなく、突如としてまるでポッと出るかのように唐突に登場。

普段懐かない飼い犬のリリアンが主人公に懐くことから、どこか運命めいた出会いを感じさせる登場シーンはいいものの、その後フローラが取る行動といえば、ルドマンが集めた結婚相手たちに向かって死の火山は危険だから行くのはやめてと発言するところと、幼馴染みのアンディが大火傷を負って看病するところと、主人公との直接の絡みはない。その後主人公と共にやってきたビアンカの気持ちを察するシーンなどは、明らかに身を退く前兆にすら思える。

さらには結婚前夜にはフローラは寝ていて、会話を起こす機会が失われていたりと、これでは世のほとんどのプレイヤーはビアンカを選ぶだろう。そもそも、自分もファーストプレイでは何の疑問もなくビアンカを選んだ。

おまけにビアンカと結婚すると後日彼女はアンディと結婚する。このせいでフローラはほんとはアンディのことが好きなので、わざとビアンカと結婚させるために主人公に対して前述のようなセリフを言ったという人までいる。ふざけんな

 

作中の扱いの差を表すように、フローラのメディアへの露出度はとにかく低かった。というか、フローラを嫁に選んだバージョンなどほぼ皆無だった。

公式小説、CDシアターでもビアンカが嫁だ。4コマ漫画劇場でもほとんどの作者がビアンカを嫁に描いた。例外だったのはゲームと同じく嫁を選べたゲームブックと生粋のフローラ派のちるみる氏(4コマ漫画劇場の作家の一人)くらいだろう。

 

ゆえにフローラ派なんていうものは少数派だったし、それに対する風当たりも相当なものだった。

 

いわくフローラを選んだやつは金に目が眩んだ奴だ。

ビアンカを裏切った浮気者。

挙げ句の果てにはフローラを選んだやつは人間じゃねぇと、人間扱いされないこともあったのだ。

 

 

そもそも、なぜ両ヒロインにこうも扱いが違うのか。

今日はこの辺りを考察していこうと思う。

 

 

★フローラは当て馬として設定されたキャラだった

 

ドラクエ5はビアンカを嫁に選ぶことを前提にしたストーリーになっているのは周知の通りだろう。

幼少期のレヌール城のお化け退治や、ベビーパンサーだったキラーパンサーを仲間にするにはビアンカのリボンが必要なことなど、物語の節々においてビアンカの存在はクローズアップされている。

普通のゲームなら、サラボナでのあのイベントを起こさなくても、自然に二人は結ばれるだろう。

だが、堀井雄二氏はあえてビアンカとフローラを両天秤にかけた。

あえて、ビアンカとフローラ、どっちを選ぶ選択権をプレイヤーに持たせたのだ。

そうすることで、プレイヤーを試したのだ。

 

お前はどっちを選ぶんだ、と。

 

いや、違う。

 

お前はビアンカを裏切れるのか、と。

 

そう考えると、フローラというキャラはビアンカの当て馬として設定されたキャラだったということがよくわかる。

ビアンカを選べば、万事うまく行きますよ。ビアンカの父親で病に伏せっているダンカンさんも安心するし、フローラの幼馴染みアンディにもチャンスが巡ってくる。

万事円満に解決だ。

だが、フローラを選ぶとどうだろう。

ビアンカは一人寂しく山奥の村に帰り、その後物語に絡むことはなくなってしまう。ビアンカの親父さんも落ち込んでしまうし、アンディの両親も意気消沈。当のアンディはその後フローラをきっぱりと諦めて踊り子の女の子と結婚するけどね。

どことなくシコリが残る展開だ。

そんな彼女に申し訳なく思ってしまい、わざわざリセットボタンを押してゲームをやり直したプレイヤーもいたとか。

 

もはや疑いようはない。フローラはビアンカを選ばされるために設定されたキャラだったのだ。

……うん、自分で書いているうちになんだかムカムカしてきたぞ(あくまで考察です)。

 

 

★意外とゲームシステム面では優遇されているフローラ

 

 

フローラはビアンカに選ばされるために設定された、ある意味当て馬に近い役割のキャラだった。

だったら、フローラを選んだ場合、その後のゲームの進行具合に不都合や不便が生じたりしないだろうか?

 

答えは意外にもNOだ。

 

むしろ、フローラを選んだ方が攻略がスムーズに進む。

行く先々でルドマンからの支援物資がもらえるし、フローラ自身強力な魔法使い系キャラだ。

特にビアンカが覚えることができないイオナズンを習得できるのは大きく、SFC版限定だが呪文を二回連続で発動できる山彦の帽子を装備すれば鬼に金棒。かなりぶっ壊れた火力を有することができる。

一応、青年時代前半は強制AIでレベルも10以上は上がらないという制限もあるが、些細な問題だろう。使用期間は短いし。

 

正直なところ、この扱いの良さにも当然疑問符が湧いた。

フローラがビアンカの当て馬に設定されたキャラなら、当然、フローラを選んだ場合にはペナルティが重ねられると思っていた。

僕は先ほどのべた通り、ビアンカを先に嫁に選んできちんとクリアしてから2度目のプレイでフローラを選んだ。だからビアンカが天空の勇者の子孫ということも、息子が勇者として生まれることもちゃんと知っている。それだけに不安だったのだ。フローラを選んだら、息子はどうなるの? 勇者として生まれないんじゃないだろうか。下手すると強制バッドエンドで、ゲームをクリアできないんじゃないか、とすら思っていたのだ。

ぶっちゃけ勇者をパーティに入れなくてもクリアは可能だけど

 

ビアンカを選ばなくても勇者は産まれてくるし、その後のストーリー展開に何ら不都合は生じない。

フローラも純粋に主人公を慕ってくれているし、その様子もPS2版の会話システムでかなり強化されている。

意外にそこまで粗末に扱われていないのだ。

 

これはなぜだろう。

ここからは私の推察だが、きっと当初はフローラは完全にビアンカを選ばせるために作ったキャラクターだった。

だが、開発途中でさすがにそれはどうなのか、という意見が出て、今のような仕様になったのではないか。

スタッフの中にフローラに対してかわいそうとか、もっと扱いをよくして欲しいとか、そんなふうに考えていた人から意見がでたのではないだろうか?

 

DQシリーズの仕様変更はわりと多く、DQ2ではサマルトリアの王子が死んだ状態でエンディングを迎えると妹のサマルトリア王女に刺殺されてしまうという衝撃的なバッドエンドがあったらしい。幸い(?)このエンディングは没になったが、それ以外にもDQ4でピサロが仲間になる6章が計画されていたが、容量の関係で没になったりとしたこともあったという(これはps版で正式に追加されたが)。

 

おそらく、フローラもそんな紆余曲折な仕様変更があったのではないだろうか。

最初はほんと、ビアンカの引き立て役でしかなかった。もしかしたら、花嫁を選択することも当初はなかったかもしれない。

それが強制的に結婚というのはドラクエ的にいかがなものかということで(何せドラクエの主人公=主人公の分身である。結婚をプレイヤーの意思を無視して決めてよいものか)、急遽フローラも花嫁に選べるようにした。

けど、本来は仲間になる予定のキャラじゃなかったから、ステータスもビアンカのほぼコンパチ。

容量の都合上+一度発売延期した手前、ストーリー展開も変わらず。ただ生まれる息子の髪型が金髪なのは変なのでそこは青髪にしたり、と、些細な違いに留まったのかもしれない。

 

 

★ それからのフローラ

 

 

ただ、エニックス的にはやはりヒロインはビアンカで通したかったという思惑はあっただろう。

それはどのメディアでも主人公の嫁さんに選ばれたのはビアンカだったという事実が証明している。

思えばフローラ不遇なマイナスイメージもゲーム本編より、これらメディアの扱いの悪さに起因しているような気がする。

小説もドラマCDも漫画もビアンカが嫁だったし、青髪双子なんてSFC版発売当時はバトルえんぴつでしかお目にかかったことはなかった。もうメディアが率先してフローラ=黒歴史にしたがっていたとしか思えなかった。

そんな中で孤軍奮闘していたちるみる氏はフローラ派の鏡

 

 

ただ、近年はそれもちょっと変わってきたかに思える。

DS版では初めてパッケージにフローラが登場したし(裏側だけど)、ヒーローズではボイスがついた。PS4いたストではあの嫌味フローラが黒歴史になってだいぶまっとうなキャラになったし、ライバルズではレジェンドレアにもなったし英雄カードにもなった!

そして映画ユアストーリーではついに表紙に登場した! しかもビアンカとの扱いは表紙を見る限り結構平等だ!(まぁ選ばれたのはビアンカの方だったけど)

 

SFC版発売から幾星霜。

日陰者だった我らがフローラ嬢にも徐々に陽の光が当たるようになってきた。

某所のアンケートによると、フローラを選んだ人も割合もビアンカ4、デボラ3、フローラ3と結構善戦するようになってきたらしい。

令和の年はフローラ派にとってもしかしたら明るいのかもしれない……!

 

 

というかスクエニさん、そろそろフローラ嫁版のラノベなりマンガなり出してくださいよぉ。

 

 

 

最後に、

今回の記事はあくまで私の考察……というか妄想ですので、

マジにとらないようにお願いしますね!