バビロン
祭りのあと
デイミアン・チャゼル監督最新作ということで、「バビロン」を観てきました。「セッション」「ラ・ラ・ランド」はその年のベストに入れたし「ファーストマン」も楽しんだし、まぁチャゼル新作は期待しますよね。予告もとても楽しそうだったし、期待度マックスで行きました。
うーん、楽しんだけど、うーん。という感じ(笑)
1920年代後半のサイレント映画期のハリウッドがトーキーに変わり、映画業界がどんどん変わっていくその最中の群像劇なわけですが…。
まず良かったのは序盤のパーティで、ここが1番の見どころでした。チャゼル監督は育ちがいいのか若干記号的な酒池肉林感を感じなくもないし、もっともっとえげつないことや、もっとエスカレートしたどんちゃん騒ぎを正直期待しましたが、まぁそれでも変態博覧会みたいで見てて楽しい。他人のメチャクチャなパーティを眺める映画は好きなので、基本的にずっとこのパーティやってて欲しい感じでしたねはい。
その後の映画制作のめちゃくちゃ適当な現場とか、普通にしれっと撮影中死人出てるとかその辺の物語も楽しく観ました。サイレントからトーキーに業界が変わっていくことで生じる諸問題とか、葛藤みたいなのもこれまで描かれてきた同様の映画よりも意外と今回の方がすんなり入ってきた感があり。ほんとに途中までは楽しく観たんですよね。
が、しかし、とにかくラスト周辺というか、このお話をどうまとめるのかな部分が非常に引っかかりまして。そもそも、この登場人物たちは、「映画が好きなのか?」というところが1番気になったりしました。急に「午前10時の映画祭」のCMみたいな映像が流れ出すあの辺とか、チャゼルの映画愛のようなものが見えてくるわけだけど、それまで描かれてた登場人物たちが、どうしてもこの作品を撮りたいとか、映画で世界を変えたいとか、もっと小さくてもいいそれこそ「桐島部活やめるってよ」の神木くんのように映画を撮ることが好きであるというのがまったく見えてこず、序盤のパーティもあいまり、結局この人たち映画で儲けて馬鹿騒ぎしたいお金が欲しいの方が大事なんじゃ?ものづくりの楽しさ尊さみたいなものはあんまりなくて、結局欲しいのは名声では?とそれまでの流れを見てると思わざるを得ないわけです。
別に欲しいのは「名声」で物語を通し切るならそれで良かったと思うんですが、あの終盤の映画館での一連のシーンと、これまで描いてきた登場人物たちの言動がチグハグで、そこがめちゃくちゃ気になりました。中盤までの物語を見た感じ、もう気持ちよく「富と名声のために映画作ってた俺たち」で話まとめても良かったんじゃないかなぁ。
ただ、言いたいことはよくわかって、グッとも来るんですよねあのラスト周辺は。あのもう終わってしまった俺たちがやってた映画も、映画史の中の立派な一部で、形や技術を変え今の映画につながっている。その一部に俺たちはいたんだ、という感慨は感動する部分でもあります。だったら、もう少し「なぜ俺たちは映画を撮るのが好きなのか」という描写を入れ込みながら物語を進めても良かったんじゃないかなと思ったのでした。
これまで、あなたと私の2人の世界、または俺自身という1人っきり世界を描き続けてきたチャゼル。初の群像劇でしたが、群像劇としてもさして楽しめず、結論の割には描いてることがあってないと感じたり…。
サイレント映画という祭が終わった「祭りのあと」を描いた本作。町山さんのドミューンでのトークを聴いてたらこの映画がコケたことで、チャゼル監督はかなりショックを受け病んでいたとのこと。チャゼルのフィルモグラフィーを観てもここが転換点になりそう。まさに「祭りのあと」のチャゼル。次作に期待します。
でも全然楽しみましたけどね!