リコリス・ピザ
監督:ポール・トーマス・アンダーソンさん
出演:アラナ・ハイムさん、他
何者かになりたかったあの頃
誕生日は仕事を休んで、映画館にこもる。というのを社会人になってから続けていまして、久々に2日で6本映画を一気に観たのですが、その3本目。
PTAの新作「リコリス・ピザ」を観ました。めちゃくちゃおもしろかったー!!
久々にブギーナイツとかあの時のPTA感を味わえたリコリス・ピザ。最近のPTA作品はどれも最高なことは間違いないのですが、どこか肩ひじ張ったというか、ザ・名作な作品が多かったので、久々に肩の力の抜けた爽やかな一本を観れてめちゃくちゃ楽しかったです。
もともとハイムがすごい好きなのもあって楽しみにしてましたが、想像以上に心つかまれたのは、クーパー・ホフマン。いわずと知れたフィリップ・シーモア・ホフマンの息子なわけですが、彼の魅力がハンパない。最初予告で観た時、誰なんだこの主人公の男は?って思ってたんだけど、まさかフィリップ・シーモア・ホフマンの息子だとは。もっとこいつ観たいわ~って思うほどなんかあふれ出る目の離せない魅力があって。作品全体としても、超豪華キャストで演技新人二人を支えるという構造としての豪華さとだからこそ出る作品としてのみずみずしさに溢れてて、なんというんでしょうこの色んな意味での豊かさは…と思いながら観てました。
みんな何者かになりたかったあの頃ってあると思うんですが、その時にしか出ないあのみずみずしさと刹那的な美しさに満ちた一本で。何気ないシーンに不思議とウルっとくるんですよね。もはやそれはオープニングからで、なんですかあの写真撮影までの長回しは。ほんとに何気ない出会いと会話のシーンなんですが、魅力的と言わないのが無理というほどのPTAの映画観てるな~という素晴らしい撮影と、何か新しい関係性が生まれそうな瞬間を見事にとらえたオープニングで心つかまれました。
何者かになりたかったあの頃の俺たちは、いつも愚かで、バカで、かわいくて、愛おしかった。そんな自分のあの頃を思い出しながら愛おしい気持ちになりながら、彼らのあれやこれやを見守る映画で。シーンごとに起きてることだけくみ上げればほんとになんてことないことばっかりなんだけど、映画全部見て思い返すと、なんかとてつもなく愛おしい気持ちになるという謎の映画マジックが働いてる映画だなと思いました。
エッセイ的な青春映画の集大成というか。最近エッセイ的な映画多かったけど、それの最強で最良の最終形態という感じで。観てる間よりも、観終わった後にこそじわじわ魅力的になっていくという、最高の青春エッセイでした。あと、やっぱPTAは横移動だな!と思う映画でもあったな。PTAの横移動はなぜあんなにも魅力的なのか。ともかく至高の映画体験でした。