吉田恵輔監督新作「神は見返りを求める」を観た | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 
 

  ​神は見返りを求める

 

 

 

監督:吉田恵輔さん

出演:岸井ゆきのさん、他

吉田恵輔性の煮凝り

 

 

誕生日は仕事を休んで、映画館にこもる。というのを社会人になってから続けていまして、久々に2日で6本映画を一気に観たのですが、その1本目。

 

吉田恵輔監督の新作「神は見返りを求める」、あんまり宣伝されてなかった?からか、公開してちょっとしてから吉田監督の新作ということを知りまして、急いで見にいってきました。観たかったタイプの吉田作品…!めちゃくちゃおもしろかったです。

 

最初にひとつ気になったところですが、Youtuberを扱いながら、けっこうYoutuber描写が古いというのが気になりました。あとネット描写。やってることとか描かれるYoutubeの編集とかが明らかに2世代くらい前のYoutuber描写だなと思ったのと、あとYoutubeのコメ欄の描写とかかなり悪い方にデフォルメされてる感じがしてあんまリアルではなかったかなぁと思いながら観てました。もうこの時代ではさすがに、誰かの住所をまんまコメ欄でコメントするやつはいないだろ…とか。

 

まぁでも気になるのはその辺くらいで、とにかくめちゃくちゃおもしろかったし、久々に会心の吉田作品だったなぁ!という感じ。監督の名前を伏せた状態で観ても、これは吉田作品だとわかるだろうなというくらい、超濃厚に吉田恵輔の作家性を感じました。

 

序盤からムロツヨシに思い当たるところがありすぎて、そこを踏まえた後半の反転はかなりキツかった…。あの無駄に「いい人」をやってしまう感じ、しかもそこはかとなく下心が敷かれてる感じがものすごく思い当たる節があり、まじで気を付けようと思いました…。こういうのまじでよく見るし、見たよね。序盤のほんわか爽やかコメディで進んでいく展開もすごいちゃんとフリがよくて、このままでは当然終わるはずもなく、後半の反転もムロさんの演技も相まって素晴らしく痛く切ない物語になっていました。


岸井ゆきの、ムロツヨシ、どこでどうしてればこうならなかったのか。と思わざるを得ない思ってる何倍もダークな展開と化していく本作。人間関係の微妙なボタンの掛け違いから、こんなところまできちゃうのかと。あらゆる地獄をめぐり、もう取り返しのつかないところまで行くわけだけど、なんだろうかこの清々しさは…という鮮烈なラストショットは痺れました。


個人的に1番思い出したのは監督初期の傑作「さんかく」とかかな。



近作どれも素晴らしかった吉田作品ですが、だから好きなんだよな吉田作品!と思える作家性の煮凝りのような一本で大変楽しみました。