哀愁しんでれら
頑張らないと親に似る
監督:渡部亮平さん
出演:土屋太鳳さん、田中圭さん、他
次の目的の映画まで時間があったので、ついでに時間がぴたりとハマった「哀愁しんでれら」を観てみました。監督・脚本は渡部亮平さん。同監督の「かしこい狗は、吠えずに笑う」が公開当時話題になってましたね。観なきゃなぁと思いつつまだ観れてませんが。
てなわけで、「哀愁しんでれら」ですが、私はのれず。残念な映画でした。
「頑張らないと親に似る」という言葉がとても好きなんですよね、私。かつて東京ポッド許可局でマキタスポーツさんが言ってた言葉です。すげぇシンプルだしシニカルだけど、なんだかものすごく確信をついた言葉だなぁと思っています。この映画の主要2人はまさに「頑張らないと親に似る」を抱えた2人で、常にそこを意識して生きてきた2人。結果、間違った方向に頑張りすぎて、大変なことになっちゃいました、という映画でしたね。家族という構造の気持ち悪さ、しかも「家族」という沼に取り込まれる気持ち悪い感覚みたいなものが、この手の映画の肝だとは思うのですが、正直あまりうまくいってるとは思いませんでした。
あと、シンデレラを解体したくなる気持ちもわかりますが、あまりにも全体が「ザ・寓話」な演出がなされすぎてて、与えられた展開に沿ってキャラクターが行動しているだけの紙芝居を見ているようで、後半はほんとにつまらなかったです。シンデレラの解体と家族という構造の気持ち悪さのお話、「レベッカ」(最近レベッカもの多いな…)や「エスター」にも通じる王道のサスペンスなだけに、演出と撮影がまったく物足りなかったなぁと。もっと言うと、00年代の映画を見ているような感覚というか…あの時代によく見た中島哲也的なるものの廉価版みたいな感じで、正直画面がダサいなと思い続けながら観てました。暗黒のおとぎ話だからあえてチープにしているのかもしれませんが、ダサいものはダサい。フレッシュなショットもなくて、ほんとにただ展開を追うだけの紙芝居みたいでした。
その「紙芝居的」というのが極に達するのが、ラストシーンだと思います。あの画が撮りたい!というのはわかるんですが、そこを描くにはバイオレンスというものへの批評性のなさと、バイオレンスへの不誠実さが気になり、まったくノレずでした。なぜこうなるに至ったのか、フィクション・おとぎ話とはいえ何人もの子供の命を犠牲にしているわけで、こうしないと伝わらないなにかがこの映画にあったのか…。どうもこの画が撮りたいが先行した薄っぺらいバイオレンス描写、ファッションバイオレンスシーンに見えてしまい、映画において一番頭にくるバイオレンスシーンってこういうシーンなんだよなぁと、バイオレンス映画好きとしては思いました。暴力に対して不誠実。クソダサかったです。