ジョーカー/思いついたジョーク | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



ジョーカー

思いついたジョーク
上映時間:122分
監督:トッド・フィリップスさん
出演:ホアキン・フェニックスさん、他



まさかのヴェネツィア最高賞。まさかのトッド・フィリップス。どんな映画なんだろうか!と初日に行ってきました「ジョーカー」。いろんな気持ちになる映画でした…。


この映画の肝はどこまでが現実でどこまでが妄想なのか完全には観客にわからせない作りをしてるところで、その仕掛けはおもしろかったです。なんなら全部が妄想という可能性もあって「ジョークを思いついたんだ」というのが最後のセリフだし。全部妄想という解釈が個人的には好きなのでこれを推したい気持ちだし、そっちの方がなんかしっくりくるなぁと。

こんな辛い状況、社会、もはやジョークだよ!という。だからそうやって振り返るとやっぱりジョーカーになり、踊りながら階段を降りるシーンはとてもグッとくるなぁ。


ただ個人的には正直そこまで心動かない映画でした。まずこれを言っちゃおしまいだけど、ジョーカーの誕生譚なんて見たくない笑 映画の出来は雲泥の差だけど、「マレフィセント」を観たときの感情にわりと近くて、このキャラクターにその理由づけはいるかな?と根本的な問題への問いが浮かんできます。しかも個人的にはこの話は全部ジョーカーの妄想派なので、そう考えると余計にジョーカーというキャラクターの枠を借りた、社会的メッセージ投げかけ映画に見え、それこそジョーカーというトップオブダークが社会的メッセージという製作側の訴えたいことがらに飲み込まれ負けたようにも見えるのがちょっと悲しい。

あえてそうしたとは思うけど、個人的にはもっと悪に落ちる美しさというか、カタルシスは欲しかったなぁというのもあります。後半のジョーカーはあまりにも淡々と予告編の枠を出ずプロット通りに動かされてる感じがして「まぁそうなるよなぁ」という感じで終わっていきました。が、これもただの「ジョーク」なのかもと思うと、なんかちょっと語り口としてずるいような。そんな気がするのは私だけでしょうか。

撮影と編集は最高で、文句のつけようがないし、ホアキン・フェニックスはちょっとどうかと思うくらい凄すぎました。主演男優賞は総なめでしょう!

それだけになんともアンビバレントな気持ちになる映画でした。