惡の華
自分はからっぽ、という恐怖
上映時間: 127分
監督: 井口昇さん
出演: 伊藤健太郎さん、玉城ティナさん、他
井口昇監督の新作は押見さん原作の「惡の華」。原作は刊行当時に読みました。結構内容忘れてたのを映画を観ながら思い出すような感じでした。てなわけで映画版「惡の華」、まぁまぁかな…という感じでしょうか。
玉城ティナが良かったね!ほんとにクレイジーな感じというか、玉城ティナ本人のちょっと変な感じが絶妙にマッチ。ヤバさとエロさ、主人公がどうしようもなくそっちに引っ張られていくのもわかる魅力がありました。
歪な青春映画という、井口昇監督の作家性もあるけど、それ以上に脚本の岡田麿里さんの力がかなり前に出た映画のようにも思いました。
「体操服盗んじゃったサスペンス」は正直マンガのほうがよりサスペンスフルでおもしろかったような気はしたけど、でもやっぱりおもしろいのはここで。中村さんってなんなの?なにものなの?なんのためにこんなことしてるの?というフックもあり、ばれるとやべぇという引っ張りもありで、まぁ座組みがおもしろいですよね。中村さんなんなの?っていうのがいちばんのミステリーということもあり、そのバックボーンがわかってからはちょっと魅力が減っちゃう…というのはしょうがないのかしら。思春期の自意識問題により突入していくこの映画の後半は、なんか正直普通の青春映画になっちゃったなぁ…と新鮮味がなく個人的にはやや残念でした。
でも、見所はあって、特に雨の中の中盤の見せ場。この街の誰も読んでない小説を読んでる、映画を観てる、音楽を聴いてる、だからこの街で僕は特別だと思ってた、でも結局からっぽだった、俺にはなにもない……という、これはクルものがありました。結局、一番の恐怖は自分がからっぽかもしれないという恐怖なんですよね。これは普遍的だし、特に田舎出身者としてはとてもわかる問答だと思いました。
ただねー全体的になんかキレイにまとまりすぎてる気がして、全体的にまぁまぁだなぁと。もっとエッジーでイビツな狂った青春を観たかったけど、なんか思ったよりお行儀のいい青春映画になってて、ちょっとなんか消化不良でした。