宮本から君へ
そしてあなたへ
上映時間: 129分
監督: 真利子哲也さん
出演: 池松壮亮さん、蒼井優さん、他
「宮本から君へ」を初日に。真利子哲也監督最新作です
ものすごく良かった…!個人的には、今年ベスト級の1本になりました。大傑作!!
この映画が語ろうとしていることと、真利子監督の作家性、キャストの熱演、撮影編集、そして熱量。全てがマジックを起こした驚異的な1本だと僕は思います。常軌を逸した熱量で行われる常軌を逸した事態。でも写し出されるのは誰にでも起こりえて、誰にでも起こったことのある、1組のカップルの正念場。ものすごく普遍的な愛の物語でした。池松壮亮、蒼井優の一挙手一投足が忘れがたい。心を掴まれました。
物語の軸になる、蒼井優が襲われるシーンはものすごく怖かった。大切な人が襲われてるにも関わらず、自分は酔って隣で寝てるだけという地獄。この最低最悪のレイプラガーマンである敵を演じるのは一ノ瀬ワタルさん。ハイローを嗜んでる方は鬼邪高校村山さんの右腕でおなじみ。どう考えても抵抗できない巨大な悪魔として君臨する彼の圧倒的な存在感は目を見張る物がありました。事件が起きた翌朝、二日酔いで目覚めた宮本が真実を知るシーン、蒼井優の行き場のない感情の爆発。このシーンの行き場のない地獄感、やるせなさはたまらないものがあって、観てるこっちもちょっとどうこのシーンと向き合ったらいいものかと、この中盤はほんとにキツい。
そして後半は、絶対に敵わないだろ!という敵への復讐と葛藤。そもそも復讐って自分のエゴなのでは…とか、こういう時なにが一番正しい行動なのか…とか、愛する相手にどこまでできるのか、そんな問いをこちら側に投げかけつつも、その向こう側へ行く熱量で画面と観客を圧倒していきます。
復讐の前に炊飯器ごと米を食べまくるあのシーンはとても好き。この映画とにかくフードシーンが良くて、なにかをキメに行く前には必ず何かを食べる、胃に何かを入れる。関係し合う人間は必ず何かを食べてて、フードシーンがとても印象的でしたね。米をかっくらいながら、蒼井優とぶつかり合いつつも泣き叫びながら、それでも米を食い、勝てるわけもない戦いの準備へ向かう。個人的にはここがこの映画のベストシーンですね〜。パワーとなる米を口から撒き散らしながら叫び、泣き、ぶつかり合い、爆発する、この映画を象徴するシーンだと思います。
負けても、殺されかけても、骨や歯を折られようと、愛する人のためのはずの復讐を拒絶されても、エゴだと言われても、あいつを倒すという一点に向かっていく。宮本から君へ、の「君へ」は蒼井優へ、だと思うんだけど、エンドロールを観終わった時の気持ちはこの映画は「宮本から観客へ」「これをみてるあなたへ」ということだなと思えてきますね。あなたは、愛する人のために、どこまでできますか?戦えますか?どストレートな愛のためにどこまでできるかの問いを「あなたへ」問いかけてくる。狂おしくも愛おしい真っ直ぐなどストレート映画でした。ちょっと忘れがたい。たまらん映画でした。