アンダー・ユア・ベッド/僕の名前を呼んでほしい | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




アンダー・ユア・ベッド

僕の名前を呼んでほしい
上映時間:98分
監督:安里麻里さん
出演:高良健吾さん、西川可奈子さん、他



安里麻里監督の「アンダー・ユア・ベッド」を観てきました。出張ついでに東京で観たんですが、なんとこの日はテアトル新宿での最終上映で、観終わって劇場を出るとなんと安里麻里監督と西川可奈子さんがいらっしゃってて、それだけでもう観た甲斐があった…と大満足。いいなぁ東京は。(ちなみに鑑賞前はその前に上映していた「よこがお」の深田監督もいらっしゃってました…)

てなわけで「アンダー・ユア・ベッド」ですが、とても楽しみましたよ!


一見すると変態的なストーカーの話なんだけど、観てるとすげぇ感情移入ができちゃう。モノローグで進むお話はあんまり好みではないんだけど、今回はそれがハマってて、異常な主人公に感情移入しちゃう道具としてとてもいい機能をしてました。過去に一度コーヒーを飲んだことがあった女の子が忘れられず、だんだんとストーカー化。彼女の家の近くに家を構えて、ヒッチコックの裏窓的に望遠で監視してると…なんと彼女が超絶DV夫に暴力を受けレイプされてることを知る…。これをどうにかしなければ…さてどうする…という話。

ちょっと物語の要素は違うけど、城定監督の「悦楽交差点」を軽く想起したりもしました。物語の着眼点、後半の視点の反転など結構似てる!と思ったり。

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思いが届かない「悦楽交差点」だったなというか、「悦楽交差点」にあった陽の部分、救いと最後の晴れやかさが一切ない、ダークな魅力が「アンダー・ユア・ベッド」にはありました。

監督が安里麻里さんということもあり、ホラー映画的なDVシーン、バイオレンス描写はものすごくうまくいってて、まぁ胸糞悪い!西川可奈子さんの悲鳴の強度も相まってすごく嫌なシーンになってました。夫役の役者さんも、大変だなぁ…役者ってと心底思う熱演。高良健吾はさすがでした。


彼女に送った花束についてた手紙が夫に見つかってベッドの下で彼女が暴行されるのを観るシーンとか、彼女を助けるためになんとかしたいけど身体が動かないカーテンの裏、その後の贖罪シーンとかなんかいたたまれなくてこっちもちょっと泣いてしまった。でも最終的に勇気を振り絞ってのスタンガンシーンは、下から見上げるような構図含めめちゃくちゃかっこよかったですし、やっとやってくれた…という安心感もありました。

彼女から名前を呼んでもらったことから物語が始まって、彼女からまた名前を呼んでもらうことで物語が終わるというのも綺麗でした。最後に彼女に名前を呼んでもらえたことで、ずっと過去で時間が止まっていた主人公がやっと過去から解放された、そんな風に見えました。はじめて何か晴れやかな顔に。もう会えないんだろうけど。

あと欲を言えば中盤で彼女側に視点が入れ替わってからのシーンがなんかちょっと中途半端なボリュームで、それまでに「うわ〜めっちゃ悦楽交差点!」と思ってたぶん、悦楽交差点の視点の反転語り手の反転に比べるとちょっも物足りずでした。あそこで、彼女視点のナレーションを入れて物語る意味をあんまり感じませんでした。
個人的にストーカーものとか、いわゆる「裏窓」ものに一番ほしい要素は、見ているつもりが見られていた的なギョッとする視点の逆転だったりするので、なにかこちら側が逆に見られる展開が、個人的な好みとしてはあってもよかったかしらなんて思ったり。

まぁそんなことはどうでもよくて、安里麻里監督やはり最高…!という見応えたっぷりの映画でした。かなり満足度が高かったし、原作を読みたいと思いました。楽しみました!