ドッグマン/あいまいに野放しにしてきたことの罪と罰 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。





ドッグマン


あいまいに野放しにしてきたことの罪と罰
上映時間:103分
監督:マッテオ・ガローネさん
出演:マルチェロ・フォンテさん、他



観る予定はなかったですが、アトロクのムービーウォッチメンのガチャで当たったので東京出張の帰り際にヒュートラ渋谷で鑑賞。他人事じゃねぇな…と背筋が少しヒュッとなりました。


街の暴れん坊ヤク中ジャイアンみたいな男の完全なる使いっ走りで文字通り犬である主人公、まさにジャイアンとスネ夫ですよね。

ジャイアンの言うことを聞き続け、なんなら犯罪に加担して、自分もヤクの転売とかしてて、これまでなんとなくうやむやにあいまいに野放しにしてきたことに対する罪と罰を受けるという、不条理劇といえば不条理なんだけど、でも確実に主人公は罪を重ねてて見て見ぬ振りをしてきたから、必然といえば必然…というなんとも嫌な余韻を残す映画でした。主人公が、娘を愛し動物を愛する優しい気の弱い男なので、そこがなんとも切ない。


でも少なからず、こういう不条理というかどうしようもできない人間関係ってありますよね〜。主人公にすごくイライラする(特に逮捕されちゃうあたり)んだけど、こういう板挟み感、他人事じゃないなぁと。周りに笑顔で取り繕って八方美人でみんなの言うことを否定もせず肯定もせず流され流されるとこうなっちゃうよなぁ…という映画でもありましたし、たぶん俺主人公みたいなところ少なからずあるわ…と怖くなりました。

ヤク中ジャイアンの犬だったスネ夫が、立場を逆転させ、狂犬を飼いならすブリーダーのようになる後半の展開はちょっと爽快でしたが、そこで終わらないのがすごいところ。街の厄介者を殺したぞー!と主人公が街のみんなに自慢してまた仲間に入れてもらおうと必死になる姿がほんと辛くてね…。そんなもの誰も見てくれず、結局はひとり、というラストシーンはものすごく物悲しいラストでした。

嫌な映画でかつ地味ではあるけど、なんかジリジリと身体にくる嫌さで、すごい引き込まれました。