僕はイエス様が嫌い/それでも君との出会いは… | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

 

 

 

僕はイエス様が嫌い

 

それでも君との出会いは…

上映時間: 78分

監督: 奥山大史さん

出演: 佐藤結良さん、他

 

 

 

久々に1日丸々お休みということで、3本ハシゴしてきました。そのうちの1本、「僕はイエス様が嫌い」。いろいろと好評は聴いてて観たいなぁと思ってたんだけど、やっと観れました。素晴らしい映画でした!!

 

 

ほんとに素晴らしい映画でしたし、様々なタイミングが重なり、ちょっと忘れがたい映画になりましたね。しかしまぁこの監督22歳でこれ撮ってるんですよね。すごすぎるよね。「神の沈黙」というそれこそ何人もの作家が突き詰めてきたテーマをたった78分と超低予算でさらりと鮮やかに描き切って見せたその手腕。凄いと思います。

 

主人公のユラくんはほんとに素晴らしかったです。佇まいの唯一無二感。表情や感情の起伏が大きいわけではない、いわゆる「子役的」な存在感とはまた違った存在感があって、彼を見てるだけで、表情を読み取ろうとするだけで、なんか映画が成立しちゃう独特の魅力がありました。一方、彼の親友になるカズマくんは全く逆の魅力があって、圧倒的な陽のパワーがありました。が、時折見せる複雑な表情がなんとも言えない…というところもあり、物語の軸になる子役2人がとにかくすごかったですね。

 

 

劇中に何度も出てくる、チャド演じる小さいキリストも最高でした。このキリストはユラくんにとってのイマジナリーフレンド的存在なんですよね。彼がここぞという時に召喚するキリストに祈りを捧げ、願いを叶えてもらうんだけど、遂にそのキリストが出なくなるのが友達のカズマが事故にあってから。本当の不条理に出会ったとき、どうしようもできないことが起きた時、それこそ神の沈黙じゃないけどさ、やっぱ神を召喚出来なくなるんですよね。そして遂にカズマが死んで、最後のスピーチでまたキリストが現れるんだけど、そのキリストをバンッと潰しちゃうんですよね。神を信じなく、潰しちゃうんですよね。それはイマジナリーフレンドとの別れであり、どうしようもない現実と向き合うという、つまりは一歩大人になるという成長をとげるんですよね。

 

ここのスピーチもすげぇよかったですね。あの中盤の流星群、神の力で見えた流星群は実は見えてなかったんだ。見えるふりをして盛り上がったって…ここのセリフでもう大号泣。。この映画における「祈り」の本質がここにあるなぁと思いました。

 

そしてラストシーン。ここが素晴らしかった。神を否定し、潰し、この世には神への祈りなんて通用しない現実というものがある…と、ユラくんも、そして観客も思わせたところで、最後の最後でユラとカズマが出会ったあの雪の校庭に戻る。そしてカメラがここで初めて文字通り神の目線になりカメラが空に上がっていくというさ…完璧だ…とここでも涙しました。この世にはどうしようもできない不条理もある、そんな時神は沈黙してるかもしれない、でも、彼らが出会ったという奇跡のようなその瞬間は、確かに神は存在していた!いや、なんならずっと見ていたのかもしれない。この否定否定ときて最後の最後、ギリギリのところで確かにあった奇跡というか希望みたいなものをもう一度別の視点、神視点から見つめなおす…。いやぁなんと素晴らしいことか。このラストシーンでさらにこの映画が大好きになりました。

 

ほんと何度も観たくなる映画で、けっこう観客に考えさせる余白の多い映画なんですよね。個人的には、カズマのお母さんとカズマ、ユラで別荘でお泊りに行くシークエンスは、全体的に不思議なシーンが多くて、「ずっと笑ってるね」というセリフと母子のその反応とか、「トイレに」と言って席を立ったユラくんがどうやらココアを流しに流してるっぽいシーンとか、なんかなんとも言えない緊張感と余白がこのシークエンスにありました。あとしょうじにあける穴とか、どんな意味だったんだろうなぁとか。なんかいろいろ噛めば噛むほどじゃないけど、何度も観たい魅力にあふれた映画でした。観てよかった!僕は大事な1本になりました。