天気の子/「よくわからんがおじさん君らのこと応援するわ」という気持ち | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 
 
 
 
天気の子
 
 
「よくわからんがおじさん君らのこと応援するわ」という気持ち
上映時間:114分
監督:新海誠さん
 
 
 
新海誠監督の新作「天気の子」を観てきました。出張ついでに夜中のTOHO新宿。かなり埋まってました。正直、あんまり期待してなかったんですが、「君の名は。」よりだいぶ好き!作家性が、より突き抜けた感があって、ここまでやると清々しいなと思いました。個人的にはとても気持ちのいい映画でした。
 
 
「君の名は。」では個人的にちょっともやっと感じるところがあって、それを歌人の枡野浩一さんがすごく的確に表現されてたので引用すると、「感動の ために生まれて殺された その大量の 君たちの名は」という、まさにこれで。災害後にそれでも生まれてきた命やそこからまた新たな人生・生活をスタートさせていた人々の気持ち、これごと丸々なくしちゃっていいのか…というのがちょっとあって。例えばアベンジャーズ エンドゲームで、トニー・スタークに子供ができてたじゃないですか、その時点で「ああこれはもうリセットできない話なんだ。」と思いましたよね。例えパラレルワールドだったとしても、大災害後に生まれてきたその子の命と、それでも前に進んでいこうという親の気持ちとかって、はいリセット~って、なかったことにしていいのだろうか、と思ったわけです。しかもそれが一組の少女と少年の会いたいという気持ちから、逆算して作られたようなドラマ展開に感じたから余計に気になっちゃったんですよね。枡野浩一さんの言う通り、「感動のために生まれて殺された」ように感じて。
 
というわけで、この「天気の子」ですが、もう世界を救うとか、災害から街を守るとか、そんな綺麗なお話、ドラマティック方向のドラマ展開、なんかには目もくれず、ただただあの子にまた会いたい…という気持ちが純粋培養されてるところがよかったんですよね。「君の名は。」と比べると非常にストレートな話運びで、しかもテーマ的にもこのストレート感が非常にあってるなと思いました。「君の名は。」と鏡のような作品だと思いました。なんか「君の名は。」で気になった偽善感というか、わざわざその展開入れる必要あるかなみたいな、なんか彼らのためにドラマティックにしたドラマ展開、とかなんかそんなものをすべて振り払うかのようなさ、君と会えるなら、世界なんか滅んで上等!そんな、世界目線で観ると絶望なんだけど、彼と彼女から観るとそれしかない救いでありゴールである、この清々しさ、かわいらしさ、切実さ。僕はこの気持ちのいいほどの、イッちゃってる結末、すげぇ好きでした。今年の映画の中でもラストシーン総選挙をしたら確実にトップに入る映画だと思いました。どうかしてるけど、どうかしてるから気持ちがいいし清々しいよね。
 
 
ただ細かい描写の積み重ねだったり、演出のキレ、あとここぞというところの画力なんかは「君の名は。」のほうが強かったかなぁなんて思いました。前半は特にちょっと話運びが鈍く感じました。あと相変わらず、最後のほうにキャラクターが叫び散らして音楽鳴り響いて…というのはちょっと気になったかな、最後に彼が線路を走って、警察とワーワーもめて、拳銃もってギャーギャー叫ぶところとかはちょっとだいぶ苦手でした。あとやっぱり今回もしゃべりすぎかな。でも音楽はよかったなぁ~。グランドエスケープですっけ、最後の空から落ちてくるところの曲。あの祝祭感最高でしたね。グッときました。拳銃はちょっと笑っちゃった。まぁでも気になるところはあれど、彼らのあのラストの選択をおじさん応援したい!と思ったのでOKですはい。なんかもういろいろどん詰まってて、「あぁあぁもう~」となんか目が離せない感が彼らにはあって、その必死感とか切実さ具合は「君の名は。」をはるかに超える良さだと思います。なかよくわからんがおじさん応援するよ!という感じ。
 
あと、ちょっと疑問なのは、まぁカップルってさ、ずっとラブラブなわけはないじゃないですか。あの2人、別れたら、どうなるの?天気は晴れるの?荒れるの?それとも同じように雨は降り続くの?2人の気持ちが冷め切って倦怠期に突入したら、また女の子は空に転送されるのかしら、それとももう一回帰ってきちゃったから2人がどうなろうとあんま関係ないのかな。どうなのかしら。
 
ま、てなわけで、全体的に言うと、ここまでくると清々しくて、僕は好きな映画でした。あと本田翼最高でした。