さよならくちびる
誰にだって、訳があって、今を生きて
上映時間: 116分
監督: 塩田明彦さん
出演: 小松菜奈さん、門脇麦さん、成田凌さん、他
塩田監督の新作、「さよならくちびる」を観てきましたが、これがとても素晴らしくて、僕はとても大好きな映画になりました!
2人組のインディーの音楽ユニット「ハルレオ」と成田凌が車に乗って全国のクラブハウスを周る、解散が決まっており、これが最後のツアー。そのツアーの様子が描かれるロードムービー的要素と過去の回想が境目なくシームレスに描かれていき、最後のライブを迎えるという映画です。
ほんとに大きな事件や決定的なシーンは描かれないんですが、でも、どのシーンもほんと演出と演技がキレッキレなんですよね。これぞ本当に観たかった塩田明彦作品だな!と感じる素晴らしい演出の数々で画面を見てるだけで飽きない、忘れがたいシーンだらけです。
何より良かったのが門脇麦さんで、彼女が出てる映画は何本も観てるけど、この作品の門脇麦がベストアクトだと思います。こんなにいい女優さんだったの?と失礼ながらも感動しました。彼女が、曲と曲の間に語るMCがどれも空気感が素晴らしいし、佇まいもすごくいい、突発的に水をかけて「音楽なんかやめちまえ!」と叫ぶシーンとか、素晴らしかったです。彼女が抱えてること、小松菜奈への思い、成田凌への思い、音楽への思い、それらを表情と演出で描きこんでいく門脇麦と塩田明彦の手腕には感動しました。
音楽も良かったです。最終的に音楽が大いに物語や心情を語る、音楽映画のあるべき姿かなと思います。その中でも「誰にだって訳がある」という曲が特に好きですし、この曲が1番この映画を雄弁に語ってるなぁと思います。正直曲がここまで語ってるのなら、もっとさらに決定的なセリフを減らしても良かったかなぁと思ったりします。まぁでも彼女たちの性格上、直接的なセリフを叫ぶみたいなのがあんまり気にならないってのはありますけども。
あと、ラストシーンですよね。この映画、題材も作品の雰囲気もすごくインディ感溢れる映画だと思うんですが、座組はものすごく、メジャー。ラストシーンの救いのような空気も、もしかしたらという邪推だけど、インディの座組だったらこうならないラストになったりしたのかなぁなんて思いました。個人的には、こうならないラストもいいなぁと思うんですよねー。あのままバラバラになっていくラストバージョンも、どう?よくない?
ま、てなわけで、3人の心の積み重ねがすごく丁寧で、なんかこの3人に寄り添いたくなる愛おしさに溢れた素晴らしい映画だったと思います。
あと、音楽というものの形体がどんどん変わっている現在において、もうこういう形の音楽映画って今後成立しなくなっちゃうのかなぁ?なんて思ったりもしました。というかもうちょっと古い形体の音楽観なのかも。10年前くらいだったらしっくりきたのかも。そのなんか、今後成立しなくなる懐かしみみたいなものも、なんだか哀愁があっていいなぁなんて思ったりしました。いい映画でした。