THE GUILTY ギルティ
声だけだからこそ
上映時間: 88分
監督: グスタフ・モーラーさん
出演: ヤコブ・セーダーグレンさん、他
僕が愛聴しているラジオ「アトロク」で何度もおすすめされていたので、観てきました。とてもよくできていました。
緊急コールセンターに、一本の電話がかかってきて、どうやら女性が男性に誘拐されたらしい…手がかりは電話のみ、さてどうやって彼女を救うんだ!という感じの映画で、カメラが一切そのコールセンターから出ずのワンシュチュエーションものですね。そして基本的に主人公の主観でお話が進んでいくというお話。かつリアルタイム劇でもあります。その主人公はどうやら何か秘密を抱えているという主人公個人のお話もちらつかせつつ映画が始まっていきます。
まぁ一見ただのワンシュチュエーションものなんだろうなぁと思ってみてると、想定していたレベルよりもいろんな要素の水準がちょっとずつ高くて、見てて満足度がとても高かったです。
まず主人公がちょっと嫌な奴というのがいいですよね。基本的に超自信ありげで、臨時的に働いてるこの部署を見下してる感じ。ワンマンプレーで、自分の世界に入り込んで行ってしまう感じ。物理的にほんとに、より自分の世界に入り込んでしまうという別の部屋に移動する中盤の展開は、さらにドツボにハマってく感じが出てて良かったですね。
声しか聞こえない状態で、女性が誘拐された!と言うと、受け手はそれはまずいとなりますわな。しかも男のほうに前科があったりするとなおさらで。そうした決めつけだったり、もっというと差別的な視点みたいなものを逆手に取った叙述トリック的などんでん返しはシンプルにおおおとなりました。
しかも、声だけだからこそ、我々、そして主人公は、電話の裏側を想像するしかないんですよね。だからこそ、世にも残忍な「ある死体が発見される」というくだりは身の毛がよだつ気持ち悪さが、より増幅される感覚がありました。恐怖を感じる構造だったり、展開のトリックは非常に小説を読んでる感覚に近いなぁと思いました。
後半の犯人を説得する展開は主人公自身と犯人がシンクロするような感覚があって、電話のエフェクトがかかった犯人の声が、だんだんナマ声になっていく音の演出とかがすごく効いていたなぁと思います。
基本的におもしろく見たし、よくできた映画だなぁと思ったし、何より尺がいいなぁと思いました。
が、ちょっと前情報を入れすぎてたり、新鮮味は正直ないかなぁとか、個人的に求める映画的快楽とはちょっとずれてるかなぁなんて思うところもあって、よくできてるけど、そんなに印象に残らない感がありました。おもしろかったけどね!