サスペリア/辿り着くべくして辿り着いた魔女 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

サスペリア

 

辿り着くべくして辿り着いた魔女

上映時間: 152分

監督: ルカ・グァダニーノさん

出演: ダコタ・ジョンソンさん、ティルダ・スウィントンさん、他

 

 

 

アルジェントの「サスペリア」を、ルカ・グァダニーノがリメイク。しかもオリジナルとは全然違う映画ですよ!とキャストやスタッフが言ってて上映時間も2時間半ということで、どんなことになってるのか…と、観てきました。ちょっとクドかったけど、おもしろかったですよヽ(・∀・)

 

たしかにオリジナルとはぜんぜん話がちがって、当時のドイツの第二次大戦終戦の残り香がただよう社会情勢を色濃く描く精神科医のおじさんパートと、とあるダンス学校での不可解な事件が並行して描かれ徐々に重なっていくという感じの内容でした。で、これ見ていくとわかるんですが、このダンス学校の構造そのものが当時のドイツ社会・情勢のメタファーになっていてるように観て取れて、多重構造といえば聞こえはいいけど、正直観てる分にはあまりに意味づけが強すぎてちょっとクドいなぁと思ったりもしました。結局、当時のドイツ情勢や大戦後の不条理みたいなものを描くパートがありつつ、同時にそれを象徴させたダンス学校パートが進んでいくので、二重説明みたいになってるんですよね。いやそれはどっちかを観ればわかるよ…と。サスペリアをリメイクするならダンス学校の構造に当時の情勢を象徴させる程度でよかったんじゃないかなあなんて思いました。直接的な引用は必要かなぁと、ちょっとあまりに作り手のメッセージというか描きたいことのボリュームが重すぎて少し胃もたれしちゃいました。その核の部分にわざわざティルダ・スウィントンに2役与えているので(厳密には3役だが)、余計にクドいなぁと思っちゃったというのはありました。

 

 

じゃあ退屈したか?と聞かれればぜんぜんそんなことなくて、しっかりと楽しかったです。ダンス学校の薄気味悪さと要所要所で出てくる美しくも気持ちの悪いシーン、オリジナルとは真逆のアプローチで描かれる撮影も僕はとても好きでした。最初に死人が出るシーンは特に最高で、主人公のダコタ・ジョンソンのダンスとシンクロして、ある人物の体がバキバキと破壊されていくシーンは美しくも気持ち悪くて忘れがたいバイオレンスシーンでした。ぜったいにああいう死に方したくないわ…といういいバイオレンスシーンでしたね。

 

あと寮母さん軍団の気持ち悪さもとてもよかったですね。笑い方が怖いんですよね。警察を手なずけるあの新手のSMシーンとかまじ薄気味悪くて最高だし、それを観たダコタ・ジョンソンが怖がるわけではなく、ちょっとおもしろそうに観てるというのもよかった。あの反応で、少なくともダコタ・ジョンソンは普通ではないな…とわかって。

 

 

この話のもう一つの側面は、けっこうシンプルな貴種流離譚だ、ということがあると思います。ダコタ・ジョンソンの小さい頃のパートからもわかるように、彼女は辿り着くべくしてここに辿り着いたんだと思います。収まるところに収まったというか、今まで気づいていなかった、でも確実に自分の中にあった、自分の真の姿をやっと解放できたカタルシスがラストの儀式シーンにはありました。ちょっとX-MENっぽいというか、辿り着くべくして辿り着きそして自分を解放する。このダンス学校はX-MENの「恵まれし子らの学校」だったのでは(笑)というかこのまま彼女がプロフェッサーXになって魔女軍団を結成だ!なーんてね。

 

だから結構見せ場自体はちゃんとジャンル映画なんですよね。でも今回、僕はちょっと作り手の組み込みたい要素が渋滞してた印象でやや重かったなぁと思いました。あと体感時間は短かったけど、2時間半は長いんじゃないかなぁ。ま、でもしっかり楽しみました。