メリー・ポピンズ リターンズ
メリー・ポピンズの続編が、ほんとにこれでいいの?
上映時間: 131分
監督: ロブ・マーシャルさん
出演: エミリー・ブラントさん、他
前にどこかの記事でも書きましたが、僕は「メリー・ポピンズ」が大好きで。小さいころから、家庭環境がアレな感じだったので、唯一の逃げ道が映画だったのですが、「メリー・ポピンズ」はそんなツラかった幼少のころの僕の救いになった一本だったのです。家庭っていうのは閉じられた空間じゃないですか。そんな閉じられた空間に唯一の光がまさに空から降ってくる。映画の子供たち同様、まさに僕の世界にもメリーポピンズが降りてきたようで。ツラい現実世界に訪れた、甘い砂糖。メリーポピンズは僕にとってまさに現実世界と戦うための希望であり、まさに甘い甘い砂糖だったのであります。「ちょっぴ砂糖があるだけで」というフレーズがありますが、映画というものが僕を支え続けた砂糖だったのかなぁなんて今になって思います。それは今もまさにそうですね。今でも「メリー・ポピンズ」は僕のマイフェイバリットディズニーの一本です。
そんな「メリー・ポピンズ」の続編が作られる、しかもよりによって僕の苦手なロブ・マーシャルが監督ということで非常に心配しつつ、でもどう続編として料理するのかはすごく興味がありました。てなわけで、初日に観てきたのですが、、僕はぜんぜんダメでした。現段階ではちょっとどうかと思うくらい受け入れられなくて、ここ数年ではぶっちぎりでワーストという気持ちです。
まず思ったのは、この話にメリーポピンズ必要ある?ってことでした。今回のバンクス一家、スタートからそもそも家族として強固な関係性を構築できてる家族なんですよね。だから、メリーポピンズが来たところでそこからの成長がないんですよ。子供達も、もともとかなりいい子達だし親の気持ちを汲み取れる。親も子を思い家を守ろうとしている。家がなくなろうとこの家族はやっていけるだろうと感じさせる高い水準からはじまるからメリーがリターンしたことによる変化がまず弱いんですよね。
そもそも前作のメリーによる子供への教育って、「決して現実は変わらないし、現実はそこにはあるものだよ。」という前提を提示しつつ、「でも一杯の砂糖で苦い現実もちょっとは甘くなるじゃん」っていう、想像力だけでは終わらせずあくまで現実を受け入れさせる大人な視点があってこそだったはずなんですよ。そしてその子供への教育が大人に波及する、ここがキモだったはずなんです。メリーはあくまで教育者であり、アドバイスはするけど、あくまで動くのはメリーではなく家族の方なんですよね。
今回のこの映画のお話の主軸は家族の関係性をどうこうするというよりも、取り上げられそうな家をいかに守るかという物理的な問題が主なんですよね。
で今回、その問題、そういう身もふたもない現実そのものを、この映画では結構ガンガンとメリー自身が「魔法」とやらでなかったことにするというか、安易にメリーポピンズのスーパーパワーで解決しちゃうんですよね。物理的にメリーが問題解決に関与しちゃうんですよ。あの時間を前に戻す件とかは特に思ったんだけど、メリー・ポピンズってそれでいいの?と思っちゃったんですよね。メリー・ポピンズはどうにもならない現実を魔法で物理的に解決する御都合主義魔法使いa.k.a. 道具ではないんだよ!!
てなわけで、そもそも家族として強固な関係性を構築できてる家族だから、メリーポピンズが来たところでそこからの成長はなく、仕方なくメリーポピンズに「魔法」とやら(さいあく)で、不条理な現実を物理的に解決させるという、オリジナルのメリー・ポピンズの肝を踏みにじる駄作だと思いました。
この映画の設定からはじめるなら、現実を受け入れさせた上で、貧乏生活を始め、そこでこそ「一杯の砂糖」で世界を彩り、かつ問題を解決していくみたいなプロセスの方が良かったのではないかなと思います。これくらいじゃないとメリーポピンズがわざわざリターンした意味が弱いですよ。
あとこれは言っても仕方がないけどエミリー・ブラントの佇まいはいいにしても、ちょっも顔が強すぎるというか、キツすぎるし、声のトーンも低いのが気になったりしました。
あと、メリーポピンズの魔法を不特定多数の人間が目にして感動するみたいなザ・ヒーロー描写もメリーがただの超能力者になってて受け入れられず。オリジナルのメリーポピンズにおける魔法というものの象徴性が、一気に崩れ去る描写にため息。あと2ペンスの使い方とかも、気が利いてるつもりかもしれないけど心が離れきったところでだされてもなんとも思わないし、なんならその顛末オリジナルの精神性と真逆のことだろとか、ロブ・マーシャルはほんとに毎回話しが無駄にだらだら長いしテンポ悪いなぁというのは改めて思いました。
メリーポピンズの続編として、良かったところがひとつも見当たりませんでした。それっぽい記号だけ集めても、肝心の精神性がこれじゃあ、乗れません。残念でなりません。今年ワースト候補筆頭です。