クリード 炎の宿敵
精神論過多
上映時間: 130分
監督: スティーヴン・ケイブル・Jrさん
出演: マイケル・B・ジョーダンさん、シルヴェスター・スタローンさん、他
「クリード」の新作ということでもちろん観に行ってきました。「ロッキー」はここでも書いたように僕のオールタイムベスト映画だし、「クリード チャンプを継ぐ男」はその年の年間ベストの1本に入れるほど大好きな映画であります。ライアン・クーグラーが「ブラックパンサー」やってた影響で監督が変わったり、脚本をスタローンが書いたり、ここでまさかのロッキー4!とかいろいろな要素があった本作でしたが、僕は正直期待以下の1本になっちゃったかなぁという感じでした。
ロッキー4を回収するという点においては、まず何と言ってもドラゴ側の物語にはとてもグッときましたし、この親子の佇まいは渋くてとても良かったです。あのアバンタイトル最高。この親子のキャラクターはボクシングをする動機というか軸がすごくしっかりしてるので、そりゃあ魅力的だし、応援の気持ちが湧き上がりました。
一方で、クリード側の物語ですが、こちらがあんまり魅力的じゃなかったなぁと感じます。ちょっと物語として弱いかなぁと思いました。完璧にやりつくした前作から新たに壁や悩みを付け加えたのはいいんだけど、各要素が人工的に付け加えられた要素に見えて、ただ脚本をなぞっていくだけのような単調さを感じました。
前作に比べて圧倒的に「決め画」が少ないのが原因のような気もします。圧倒的にカッコいいキーとなるようなシーン、エモーションとストーリーがマッチングするような忘れがたいシーン、映画として跳ねるシーンが前作に比べると圧倒的に少ないのが残念でした。物語はエモーショナルかもしれないけど、画面がぜんぜんエモーショナルじゃない。その積み重ねがないから、僕は最後にあのテーマソングをかけられてもイマイチ感情が爆発しませんでした。
肝心のボクシングシーンも前作にあったフレッシュさはなく、あまり興奮せず。あと不満だったのは最強の敵に再戦して勝つという物語を語るには、ちょっと精神論が過多すぎるということだったりしました。精神論だけではなく、なにか具体的なアクションとして、彼を倒すための論理的な対策・作戦を用意してほしかったな〜!一応近接戦の強化とかあの特訓場面とかも大好きなくだりではあるけど、その特訓場面を生かしたもうちょっとなにか具体的なキーとなるアクション、論理的な作戦を得てラストバトルを迎えてほしかった気もします。相手が長いラウンドをまだ戦ったことがない…とかはアナウンサーがさらっと流しちゃって、そこを踏まえた対策をクリード側が観客に示してくれるとかあってもよかったなぁとか。あとロッキーがセコンドにいる・いないで具体的になにが変わったのか。そこも精神論で押し切られるので、まぁそれもいいっちゃいいんだけど、エモーションでもういちど立ち上がる的な画はそれはもう前作でやってるしさ。もうちょっとこの敵になぜ勝てたのか、前の敗戦からなにを学んで具体的にどんな対策をして…いざというときにそれを発動!という具合のアクションとしてのおもしろさがあまりなかったです。さすがにロッキーのテーマ曲に頼りすぎだと思います。あれを流せばそりゃ泣くよ。パブロフの犬だもん笑 でもそれじゃ前作の二番煎じでは…と思ったりしましたし、新しい世代の葛藤の物語として語り尽くした前作を経た今、ちょっとさすがに全体的に懐古的すぎる物語にも、う〜んとなんだかいまいち乗れない映画になりました。スタローンが脚本を書いてることもあってまぁその辺はしょうがないんだろうけど。
ドラゴ側がとても魅力的だっただけに、それに匹敵するクリード側の物語がなんだか惜しいなぁと思ったりしました。僕は不完全燃焼な映画でした。