ミスター・ガラス
「奇跡も、魔法も、あるんだよ」©︎まどマギ
上映時間: 129分
監督: M・ナイト・シャマランさん
出演: ジェームズ・マカヴォイさん、ブルース・ウィリスさん、サミュエル・L・ジャクソンさん、他
「スプリット」を映画館で見たあとの、「えっ?これアンブレイカブルと繋がってるの?」という衝撃から数年。シャマランの新作はまさかの「アンブレイカブル」と「スプリット」の続編という、まじそれどうなるの?てか、何考えてるの?っていう企画なのですが、そりゃあ楽しみだってことで観てきました。すごく、シャマラン映画でした。
たしかに「アンブレイカブル」に連なるヒーローユニバースではあるんだけど、精神性は「レディ・イン・ザ・ウォーター」が一番近いと思いました。「物語」「フィクション」を本気で信じてるシャマランが撮った映画が「レディ・イン・ザ・ウォーター」でしたが、今回もまさにその精神性よね。「物語」を本気で信じてるスーパーヒーローと「現実」を容赦なく突きつけてくる敵組織の戦いの物語なんですよね。「現実」vs「物語」のお話なんだと思いました。
スーパーパワーを持っている(と、少なくとも自分は思っている)やつらが、施設に閉じ込められて、「もしかしたら自分にはスーパーパワーなんてなくて、普通の人間なのかもしれない。自分にはスーパーパワーがあると思い込んでいるだけなのかもしれない。」ということを刷り込まれていくんですよね。
思えば「アンブレイカブル」も「スプリット」も主人公にはひどいトラウマがあったし、そこからスーパーパワーが生まれていて、ある種現実と戦うための武器的な意味合いもあったわけです。そのスーパーパワーを今回の敵は理詰めで論破していくんですよね。「ちょっと人より力持ちなだけなんじゃね?」とかね笑 そうするうちに本人も本気で自分の力を疑うようになって、自分が信じてきた物語を信じられなくなってくるわけです。物語を信じられなくなり、現実という暴力に負けそうになるのですが、この映画は最終的に高らかに物語を肯定し、映画内の彼らを救済するのに加え、常日頃、現実という暴力と戦うために物語を摂取している我々も、いいんだよ!大丈夫だよ!奇跡も、魔法も、あるんだよ!と肯定してくれる優しさがあってなんだかとても感動しました。
最後のシーン、さすがにそんなに一斉にケータイピロピロ言って拡散はしないだろ、とか思ったけど、この映画が本国ではヒットしてて、作家性を貫いてシャマランのやってきたことがやっとちゃんと広まった…とか、なんかミスター・ガラスがシャマランに見えてくる感じもとても良かったです。
てなわけで、ミスター・ガラス楽しかったし、グッときました。