生きてるだけで、愛。
「私に疲れてほしい」
上映時間: 109分
監督: 関根光才さん
原作: 本谷有希子さん
出演: 趣里さん、菅田将暉さん、他
2019年映画館はじめは「生きてるだけで、愛。」を観てきました。すごくいい映画でした( ;∀;) 。観終わったあと思わずKindleで原作を一気に読んでしまいましたよ。
原作を読んでみて、原作も素晴らしかったんですが、僕は映画版のほうがより好きだなと思いました。まずはなんといっても趣里の存在感とキャラ造形のアップデートがとてもうまくいってると思います。映画を観た後に原作を読んだので、映画での鬱、過眠症の描き方がよりハードになってるなぁというのをとても感じました。自分では前に進まなきゃいけないと思ってるし、ちゃんと時間通りに起きたいと思っているのに、どうしても過眠症で起きれない、このどん詰まり感はとてもグッと心に刺さりました。その「どうしてこんな簡単なことがうまくいかないんだろう?」という彼女の心の嘆きと焦りが爆発するハンバーグを作ろうとするくだりの原作からのハードさのアップデートっぷりというかあの負のピタゴラスイッチ感はこの映画でいちばん刺さった、キツいけど素晴らしい名場面だったと思います。
原作からのアップデートでいうと、彼氏の菅田将暉側の物語もとてもよくて、ここは原作にはないんだけど、彼氏彼女両面から描くことでよりラストのエモーショナルが原作よりも上がってるなぁと感じました。また、趣里がバイトをすることになるバイト先の人々の描写もより飲み込みやすく整理されていて、ここも良かったです。田中哲司と西田尚美というキャスティングもすごくハマってたと思います。原作ではこのバイト先の描き方が本谷有希子っぽ〜いすごくシニカルな視線で描かれてるんですが、ほんとにちゃんとした人のちゃんとした優しさ、正しさ、みたいなものが純化されてて、だからこそ効いてくるクライマックスの展開になってて、映画版うまいなと思いました。
最初は趣里演じる主人公を見てほんとなんなんだこいつ!とか思ってたんですが、的確な演出の積み重ねと彼女の心情の描きこみがうまいので、すぐさま彼女に感情移入。互いの心情を吐き出しあいうラストの場面はすごく感動しました。「私に疲れてほしい」という彼女の言葉は、めんどくせぇなぁとも思うんだけど、でもこんなにも切実で心の底から彼とのつながりを求める姿がなんだかとても美しくて。やっぱり「わかるよ」と共感し涙してしまうし、「一瞬でも繋がれたらそれだけで生きていける」というラストのラストはとってもグッときました。
個人的にまだ掴めてないのは元カノ仲里依紗の存在。原作もそうだったんだけど、彼女がいないほうがよりストレートに彼と彼女の物語になるわけだけど、あえて元カノの存在を最後の最後まで描いてるし、映画でもそこは残してるしなんならより存在感を上げてるわけです。彼女の存在の意味はなんなんだろうか?ってのをいま考えたりしてます。それにしてもこの仲里依紗の存在感はただごとじゃなくて、ものすごく狂って見えるんですよ。すげぇスリリングで、言葉にできない緊張感がありました。。
てなわけで、「生きてるだけで、愛。」すごく良かったです。忘れがたいシーン多々、原作からのアップデートも素晴らしい。とてもグッときました。