アリー/スター誕生
そうとしか生きられない男の悲哀
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上映時間:136分
あらすじ:彼女がスターになります
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アカデミー賞候補作品、「アリー/スター誕生」を観てきました。
ものすごくグッときました…。
映画.comのあらすじです。
歌の才能を見いだされた主人公がスターダムを駆け上がっていく姿を描き、1937年の「スタア誕生」を皮切りに、これまでも何度か映画化されてきた物語を、新たにブラッドリー・クーパー監督&レディー・ガガ主演で描く。音楽業界でスターになることを夢見ながらも、自分に自信がなく、周囲からは容姿も否定されるアリーは、小さなバーで細々と歌いながら日々を過ごしていた。そんな彼女はある日、世界的ロックスターのジャクソンに見いだされ、等身大の自分のままでショービジネスの世界に飛び込んでいくが……。世界的歌姫のガガが映画初主演でアリー役を熱演。もともとはクリント・イーストウッドが映画化する予定で進められていた企画で、「アメリカン・スナイパー」でイーストウッドとタッグを組んだクーパーが初監督作としてメガホンをとり、ジャクソン役でガガとともに主演も果たした。
元になった「スター誕生」は1作も観てない状態で観ました。レディ・ガガ演じるアリーがスターになっていく明るい単純なサクセスストーリーだと思っていたのでダークな側面が出てくる後半は予想してませんでしたが、、むしろそこが良かった…!
序盤からずっととにかくブラッドリー・クーパーの危うさがすごくて、アル中でヤク中、感情があまりコントロールできず、耳が聞こえなくなる恐怖に怯えながら、その恐怖や焦りをアルコールで消してるような、とにかく危うくてその迫真の演技も相まって目が離せません。ブラッドリー・クーパーの演技はほんとにすごくて、この人は毎回すごいけど今回は自分で監督してることもあってか、これ以上ないほどブラッドリー・クーパーの演技を味わい尽くせる1本でしたね。このブラッドリー・クーパーの悲哀というかさ、こうとしか生きられない男の切なさ、ダメさ、情けなさにとてつもなくグッときてほんとにボロボロ涙が出ました。彼女がスターになっていきどんどん前に進んでいく中、自分はどんどん後ろに後退していく悲しさ、でもどうすればいいのかもわからない。たしかに彼女に出会ったことでとても幸せだったのに、彼女に出会ってしまったからこうなってしまったのか…?というところまで持っていくストーリーにはほんとに泣かされました。僕にとってはレディ・ガガというよりブラッドリー・クーパー映画でした。自爆的にボロボロになっていく彼を見て涙ボロボロでした。
ここまでではないにしても、彼女の成り上がりに嫉妬したりすることってあるじゃないですか。すげぇ好きなのにどんどん彼女は前に進んでいって、僕はというとうだつが上がらず、そんな姿を見て焦りはするけど、前に進むことができず…なんか昔の思い出がよみがえってきてジンワリきました。同職、同業の彼女と付き合ったことのあるダメ男にはとてもグッと来てしまう内容でした…。
でも結局こういうときって、自分が努力するか、または自我を捨て彼女を支えるかのどっちかだと思うんですよね。嫉妬と焦りってでもどうしようもないんだよな…しかもそこに恋愛が絡んでくるとさらにやっかいになってくるよね。彼はあそこでどうすればよかったんだろう。どうすれば彼を救えたんだろう、どうすればこんなことにはならなかったんだろう。そんなことをグルグルと考えてしまう映画でした。
レディ・ガガも素晴らしかったです。圧倒的な存在感というか画面支配力でした。
音楽映画としても素晴らしくて、音楽が物語のためにある構造で、僕はとても好きです。「ボヘミアン・ラプソディ」と並べて語られがちですが、映画のための音楽か、音楽のための映画か、という意味で僕はどちらかというと「アリー/スター誕生」のほうを押したいです。ある曲が歌い手が変わることでそこから発せられるメッセージであったり、視点、意味合いが変わってくるのもよかったし、これこそ映画的な音楽の使い方だと思いました。様々な喪失を経て、音楽を自分のものにしていき、真にスターへと昇っていくレディ・ガガの最後の表情にもグッときました。ここでふっと過去の幸せだったあの頃に戻る場面にはもうね殺す気かと。どうしてこうなってしまったんだろうね。幸せなはずだったのに。
多分この映画が今年最後の劇場鑑賞だと思いますが、最後にとてもグッとくる映画が観れてうれしかったです。
こうとしか生きられない、情けない男の悲哀にどうしようもなくグッと来てしまった。そんな映画でした。どうすれば二人とも幸せに夢を追いかけられたのだろう。そんなことはじめから無理だったのかな。
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好き度:90点
とてもグッときました。
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