【映画感想】「ヘレディタリー 継承」 | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 
 
 
※ネタバレ注意
 
 
ヘレディタリー 継承
 
 
生まれた時点で詰んでいる。「家族」というものの地獄性。
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上映時間:127分
あらすじ:死んだばあちゃん、実はやべぇやつ
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大評判を聞いていた「ヘレディタリー 継承」を初日に、パンパンにハードルが上がった状態で観てきました。
 
近年観てきたホラー映画の中でも、最高クラスのホラー映画でした!最高です。
 
映画.comのあらすじです。

家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。祖母エレンが亡くなったグラハム家。過去のある出来事により、母に対して愛憎交じりの感情を持ってた娘のアニーも、夫、2人の子どもたちとともに淡々と葬儀を執り行った。祖母が亡くなった喪失感を乗り越えようとするグラハム家に奇妙な出来事が頻発。最悪な事態に陥った一家は修復不能なまでに崩壊してしまうが、亡くなったエレンの遺品が収められた箱に「私を憎まないで」と書かれたメモが挟まれていた。「シックス・センス」「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレットがアニー役を演じるほか、夫役をガブリエル・バーン、息子役をアレックス・ウルフ、娘役をミリー・シャピロが演じる。監督、脚本は本作で長編監督デビューを果たしたアリ・アスター。

 

 
とにかく超怖かったです。怖さでいうと近年最高レベルだったと思います。あらゆる恐怖演出がものすごくうまくいっている、うまく行きすぎていると思います。怖すぎて気が狂うかと思ったよ。すごい。
 
物語もほんとにどこに行きつくのか、まったく先が読めないですよね。前半で、物語のキーとなると思っていた妹がまさかの退場。しかもものすごくショッキングな描写が思ってもみないタイミングで来るので、それはそれはびっくりしました。あそこでのお兄ちゃんの反応のリアルさ、家に帰って母親が妹の死体を見てから発狂というのをお兄ちゃんの表情で見せるというキツさ。全員きつい、観てて涙が出てきましたよ。この前半の事故からの帰宅、発見のくだりは起こってることはほんっとにきついんだけど最っ高でした。ほんとにうまい。
 
そこからは前半にも少しあったJホラー的ジワジワと怖さが増してくる演出や、ポランスキー的な神経症的ホラー、超能力・超自然的ホラーなど様々なホラー演出で観てる側の胃をひたすらキリキリさせてきますね。だんだんとおかしくなっていく母親がまず怖いし、画面も怖いし、ほんとに何もかもが怖いんですよ。ここまで観客をひたすらに「怖い」と感じさせることに容赦がない映画も久々で最高に興奮しました。ほんとに起こっていることなのか、気がくるっているだけなのか、わからないまま、進んでいきついに謎が明らかになる終盤の畳みかけはもう怒涛で口あんぐり。まったくの不在の存在なのに確実に真ん中にどかんといるおばあちゃんの存在、そして彼女の謎が明らかになり、そこからクライマックス。このクライマックスはほんとすごいですよ。今まで見て怖かったホラー映画全部盛りですよね。エクソシスト3、シャイニング、ローズマリーの赤ちゃん、赤い影、リング、などなど思い浮かぶホラー映画はたくさんありますが、僕が一番見た後思い浮かんだのは「赤い影」でしょうか。それにしても最終的にロードオブセイラムに行き着くとは思ってもいませんでした(笑)
 
 
様々な角度から語れる作品だと思うけど、やっぱりこの映画は「家族というものの地獄性」についての映画だと思うんですよね。この映画の家族たちって、もうこのおばあちゃんの家族であること、つまり生まれてしまった時点でもう詰んでるんですよね。ものすごい不条理だし、どうしようもないわけですよ。でも、家族ってそういうものじゃないですか。不条理だし、自分ではどうしようもないこと、これを家族だからという理由で生まれた時点で受け継がざるを得ないこと、ものすごくたくさんあってさ、その暗黒面についての寓話として僕は見ました。家族は選べないってよく言うけど、その地獄性だけを純粋培養したような映画だったと思います。家族にいい思い出のない、僕はものすごくわかったというか…。ここでは語れない、「家族である」ということの地獄、僕にもあったよ、、と。
 
だからこそ、やっぱり一番初め、この映画がドールハウスではじまるというのはすごくうまいですよね。この映画の家族たちは(つまり観てる僕たちは)巨大なだれかが作り、動かす、人形でしかなく、もうとっくに、作られた時点で、どうなるかなんて決まってて、そこに向かって動かされてるだけなんですよね。もうとっくに、この家族に生まれた時点でお前の運命なんてきまってんだよ!!という本当に救いゼロの映画でした。
 
個人的には、人間ドラマ、恐怖演出、テーマ、サービス、すべてがほんとに怖くて、ほんとに最高、ほんとに怖かったです。ほんとに素晴らしかったです。年間ベスト級ですが、ちょっと体力を削られすぎてしばらく見たくないです。素晴らしかったです。今でも耳を澄ますと「コッ」と舌を鳴らす音が聞こえてくる気がします。最近見た映画では間違いなく一番怖かったです。すげぇ文章がバカになっていくが、「素晴らしかった」と「怖かった」しか出てこない(笑)
 
 
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好き度:100点
物凄いものを見た!!
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