アンダー・ザ・シルバーレイク
この映画の謎を追う僕らこそサムそのものなのかも
------------------
上映時間: 140分
あらすじ: 好きな子が突然消えた
------------------
デビッド・ロバート・ミッチェル監督の新作ということで観てきました。
おもしろかったです(*´з`)
映画.comより、あらすじはこんな感じ。
「イット・フォローズ」で世界的に注目を集めたデビッド・ロバート・ミッチェル監督が、「ハクソー・リッジ」「沈黙 サイレンス」のアンドリュー・ガーフィールド主演で描いたサスペンススリラー。セレブやアーティストたちが暮らすロサンゼルスの街シルバーレイク。ゲームや都市伝説を愛するオタク青年サムは、隣に住む美女サラに恋をするが、彼女は突然失踪してしまう。サラの行方を捜すうちに、いつしかサムは街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていく。「私たちは誰かに操られているのではないか」という現代人の恐れや好奇心を、幻想的な映像と斬新なアイデアで描き出す。サラ役に「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のライリー・キーオ。
人生のモラトリアム期にいるプー太郎なサムという男が主人公なわけですが、そんな彼の前に理想の女の子が登場、イイ感じになるも、次の日に突如消えてしまう。そんな彼女を探す中で、どんどんと摩訶不思議な世界に進んでいくという本作。
一見難解で、ポップカルチャーの洪水に溺れそうになるけど、根っこはポップカルチャー大好きなモラトリアム期プー太郎青年の成長物語になっていました。やはり、青春映画の名手、デビッド・ロバート・ミッチェル作品だなぁと思いました。
夢も目標も特になく、ダラダラと生きている青年に久々に刺した光が消えたヒロインで、この彼女を追うことで、もう一度、自分の大好きだったポップカルチャーに向き合う、彼女を探し出し、取り戻すことが、自分の好きだった、夢で目標だったポップカルチャーにまた向き合うことになる…そんな感じで進んでいくんだけど、追い求めた先は想像もしなかった僕らにはよく理解のできない現実があって、夢破れて終わっていくわけだけど、この苦い成長感が僕はとても好きでした。きっと彼にとってこの体験がモラトリアムの最後で、今まで見ないようにしていた現実とやっと向き合えるようになって終わっていったように思います。近所の熟女とセックスして、かなりキツめのどん詰まり感で終わっていくけど、このどん詰まり感を受け入れることこそ、現実を受け入れるということであり、彼なりに苦い成長をしたんじゃないかな。きっと彼はあのあとこの街を離れ、また新しい人生が始まっていくんじゃないかなぁとそんな微かな光が見えるどん詰まりラストだったように思います。
今存在しているポップカルチャーに、半ばこじつけ的に「これにはこんな意味が…!」とか「これとこれが実は繋がってて…!」とか、妄想的に意味を見出していく彼の姿はまさに僕ら自身を見ているようでもあって、痛々しくも、微笑ましくもあって、グッときました。こんな難解なこの映画のあらゆる謎な要素の意味を、この映画の彼のように探していく行為って見てるとやっぱりしちゃいそうになるけど、でもきっとそんなことに意味はなくて、この映画に意味を見出すことこそ、この映画のサムであり、お前たちはサムなのだ!と監督に言われそうな、妙なシニカルさがあって、なんとも言えない気分です(笑)
あと、主人公を童貞にしそうな題材ではあるけど、主人公を童貞にしなかったことによる、より深いどん詰まり感もすごく巧みだなぁと思いました。セックスすらもゴールじゃない、じゃ何がゴールなの?と、真に自分の欲求や夢に向き合わざるを得ない、どん詰まりモラトリアム期青年にとっては実にきつい、現実と向い合え青年よ!と言われているような、アンダーザシルバーレイクでした。おもしろかったですし、クラクラしてくる映像表現も楽しかったです!
------------------
好き度: 70点
クラクラしました
------------------