【映画感想】「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

 

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

 

それでも、これが私なの

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監督: クレイグ・ギレスピーさん

脚本: スティーヴン・ロジャースさん

出演: マーゴット・ロビーさん、アリソン・ジャネイさん、セバスチャン・スタンさん、他

原題:  I, Tonya

上映時間: 120分

あらすじ: ナンシー・ケリガン襲撃事件の真相とは…

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アカデミー戦線でもいろいろと絡んでいた「アイ,トーニャ」がようやく公開ということで、観てきました。そんなに期待値は高くなかったんですが、


今年ベスト級の1本になりました!( *`ω´)


映画.comさんのあらすじはこんな感じ。

アメリカ人のフィギュアスケート女子選手として初めてトリプルアクセルに成功し、1992年アルベールビル、94年リレハンメルと2度の冬季五輪にも出場したトーニャ・ハーディングのスキャンダラスな半生を、「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クイン役で一躍世界的にブレイクしたマーゴット・ロビー主演で描いたドラマ。貧しい家庭で厳しく育てられたトーニャは、努力と才能でフィギュアスケーターとして全米のトップ選手への上り詰めていく。92年アルベールビル五輪に続き、94年のリレハンメル五輪にも出場するが、92年に元夫のジェフ・ギルーリーが、トーニャのライバル選手を襲撃して負傷させた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を引き起こしたことから、トーニャのスケーター人生の転落は始まっていた。プロデューサーも兼ねてトーニャ役で主演したロビーは、スケートシーンにも挑戦。母親役のアリソン・ジャネイが第90回アカデミー賞の助演女優賞を受賞した。元夫のジェフ・ギルーリー役は「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタン。監督は「ラースと、その彼女」「ミリオンダラー・アーム」のクレイグ・ギレスピー。

 

 

世代的なものもあるかもしれませんが、僕はこの「ナンシー・ケリガン襲撃事件」というものを知りませんでした。だから観て本当にビックリ。まじでこんなことが起きていたのか…!


貧困や毒親やDVなどいろんなしがらみをスケートという武器ひとつで、飾らず、ありのままの自分で、成り上がる前半。しかし、ここまで、ここまできたのに、自分の知らないところで回り出してしまったもう止めることのできない負の歯車に飲み込まれ、振り払ったはずの負の要素がまた襲いかかってくる。積み上げたものはすべて剥ぎ取られ、唯一の武器であったスケートまでも奪われる。もうやってらんないよねと、やさぐれ気味の諦めたような、なんとも切なくでも力強くもある「でも、これが私なのよ!」というラストに号泣でした。なんて!なんて切ないんだ!こうとしか生きられない1人の女性の物語としてほんとに素晴らしいイタさと切なさと、なにより完成度の凄まじさに唸りました。


なんというか、いくらでも周りの人間によって人生なんて簡単に崩壊しうるというのを改めて実感しましたね。でも、その周りの人間を振り払えなかったのは自分のせいでもあって、そこがやっかいなんですよね。今回のDVの夫とかさ、その友達のデブニートもだけど。自分のせいではない、でも、そいつらがやってしまったことは自分のせいでもあるし、それ以前にそいつらを振り払えなかった自分のせいでもある。でも、彼女は最後の正念場に夫が必要だったんですよね。彼なしでオリンピックは無理だとも言ってる。この切なさですよね。出口のなさ。もう出会った時点で詰んでたのかもしれないなとも思えるほどで。何度も振り払うチャンスはあったのに……でも振り切れなかったし、彼女の言う「腐れ縁」で人生が崩壊しちゃったんですよね……。最後の最後に味方になってくれると思った母親も、こいつもやはりあいも変わらず毒親全開で……。世間からはバッシングの嵐だし、格好のメディアのエサですよね。ほんとに最悪ですよすべてが。でも、この物語を語るトーニャがなんかすごくかっこいいとも思えるのがすごいですよね。痛いけど、でも、どこかいろいろあったすべてを肯定してる(諦めとも取れるのだけど)ような、全て含めてそれでも矢印は前を向いてる感じに、ほんとになんとも言えない感動を覚えました。



 

エンドロールの映像でビックリしましたが、まじであのニートデブがほんとにあんなことを言ってて、ほんとにガチなサイコパスだったことに戦慄しました。ほんとにやばいやつは、確かにそこにいた!母親も超そっくりでしたね。撮影も音楽も編集もほんっとに素晴らしいのは言わずもがな。全体を「グッドフェローズ」タッチにしてるのもすごく合っていたと思います。すごくスコセッシの影響は感じました。「レイジングブル 」感も感じたし。あとはなんといってもマーゴット・ロビーは素晴らしい。演技もそうだけど、この物語を自分で製作するという気概もほんとに素晴らしいと思います。


てなわけで、いろいろ語りがいのあるえいがになっちゃった「アイ,トーニャ」ですが、ほんとによかったです。自分の思ってもいないところでコトが起こり、もう取り返しのつかない事態になってしまってる怖さ。周りの人間によっていくらでも人生はぶち壊れるという人生や夢の儚さと脆さ。「腐れ縁」というもののやっかいさ。でも、これが私の人生よという強さ、でもやっぱり悲しさ、切なさ。ほんとにいろんな気持ちになりました。そしてなにより、1つの事件の一面だけを観て「ほらきた」とばかりに無責任に批判や罵倒を繰り返す世間とメディア、つまりはこの映画を観ている俺たちに語りかけてくることのタイムリーさと的確さ。ちょっとどうかと思うくらいどの要素もグッときて、今年ベスト級の一本になりました。うーんもう一回観に行きます。オススメです!!!


 

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好き度: 100点

今年ベスト級!!

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