【映画感想】「ミスミソウ」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

ミスミソウ

 

これは西部劇だ!

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監督: 内藤瑛亮さん

脚本: 唯野未歩子さん

出演: 山田杏奈さん、清水尋也さん、他

上映時間: 114分

あらすじ: いじめっ子をぶっ殺します

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都会に出張に行ったので、「ジュマンジ」に続いて、田舎ではやっていない内藤監督の新作「ミスミソウ」を観てきましたよ。内藤作品は大好きなのでね、今回も楽しみにしていたのです(^^)てなわけで、「ミスミソウ」、

 

内藤監督最高傑作だと思いました(゚∀゚)スゴイ!

 

映画.comのあらすじはこんな感じ。

「ハイスコアガール」「でろでろ」などで知られる押切蓮介の人気サスペンスコミックを、「ライチ☆光クラブ」の内藤瑛亮監督のメガホンにより実写映画化。東京から田舎の中学校に転校してきた野咲春花は、学校で「部外者」扱いされ、陰惨ないじめを受けることに。春花は唯一の味方であるクラスメイトの相場晄を心の支えに、なんとか耐えていたが、いじめはエスカレートしていくばかり。やがて事態は春花の家が激しい炎に包まれ、春花の家族が焼死するまでに発展。春花の心はついに崩壊し、壮絶な復讐が開始される。主人公の春花役を本作が初主演となる「咲 Saki」の山田杏奈が演じる。

 

 

観終わった後の感想としては、これは田舎の学生版西部劇だったな!という感じで、まちがいなく西部劇がベースにある映画だと思いました。田舎に移り住んできたよそ者をいじめる村の人々、家族が焼き殺される主人公、そして復讐の鬼と化し、ひとりひとりいじめていた人間を殺していくという話の骨格はもちろん、ロケーションや撮影も、ものすごく西部劇っぽさを感じました。とにかく構図がキメキメでいちいちカッコイイんだ!

 

内藤監督お得意のバイオレンス描写も冴え渡っていて、ここにきてもまだフレッシュなバイオレンスシーンを見せてくれる内藤監督はほんとにスゴイと思いましたし、本当に信頼できると思いましたね。もっとデカいバジェットと長い準備期間を内藤監督に与えてもいい頃だとほんとに思います。内藤作品はバイオレンスを受けた側のリアクションがことごとくいいですよね。笑っちゃうんだけど、「あぁ、もしかしたら、実際に自分にバイオレンスが降りかかってきたらこういうリアクションになるかも…」という絶妙な説得力があって怖いんですよ。ツカミの「これ、触らない方がいいやつかな?」とか中盤の「ちょっとタイム!タイムだって!!」とか最高。描写もそれぞれしっかり工夫されてるのと、新鮮味やサービス精神もあるし、あの先生の末路とかもはや笑っちゃいましたよ(笑) 除雪車って怖いんだなぁ…。

 

あと感心したのは物語の舞台建て。ガラケー時代のSNS以前の時代設定と、まじでなにもない田舎であること、そしてそこから抜け出したくても抜け出せない理由がそれぞれのキャラクターしっかりしてて、逃げ道を与えてくれない設定にしてるのがとてもうまいと思いました。なるだけノイズが出ない工夫がなされてますよね。

 

 

ある少女の哀しき復讐劇、というお話で進んでいく物語が、最後の最後にまた違うもう1人の少女の、なんとも切ない、苦い、成長譚に収れんしていくのもすごく好きでした。あのめちゃくちゃ悲しいんだけど、なんとも言えん絶妙な、爽やかな、でもしかし切ないラストシーン。これはあの娘の物語だったんだなぁ。なんて切なく、やりきれないのだ…。でもとても爽やかで、前向きに開かれたラストにも見えて、この言葉にできない感動はなんなのだろう…と思いながら劇場を後にしました。1人の少女の恋と失恋、そしてその裏返しとしてのバイオレンスなんですよね。なんというのかな、自分の手から愛が離れて行きバイオレンスに反転してもうどうにもできなくなる…的なお話、内藤監督の作家性なのかなぁとか思ったり。あと小道具の使い方がうまいよな~。この小道具も、愛や夢がバイオレンスに反転する使い方をしますよね内藤さん。うまいなぁほんとに。

 

不満もたしかにあって、清水尋也がいきなりサイコパス化するのがちょっととってつけたようだったとか(でもおばあちゃんを説得(笑)するシーンは良かった)、あと主人公の「ピンチ!からの逆転!」がどれも地面に倒されて手探りで探した手元にある武器をグサッ!というパターンばかりでちょっとワンパターンすぎかなぁとか、ちょいちょい散見される役者陣のあまりにもステレオタイプな演技が鼻に付くとか、あともうちょっと主人公が死ぬにしてもなにか少しでも希望の残る展開にしてほしかった(これはただの親心w)とか、まぁあるにはあるんだけど、それを補って余りある作り手の熱意とガッツにやられました。

 

とにかく内藤監督の美的センスと作家性がさく裂してて、個人的には内藤作品で一番好きな作品になりました。現状では頭一つ抜けた傑作だと思います。一人の少女の西部劇的な悲しき復讐譚から、また別の一人の少女の哀しき成長へ。なんとも形容しがたいザワザワが心に残るとても忘れがたい一本でした!素晴らしかったです。

 

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好き度: 80点

素晴らしかったです(*_*)

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