港町
確かにそこにある、ここじゃないどこか。
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監督: 想田和弘さん
上映時間: 122分
あらすじ: 港町を観察します
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「観察映画シリーズ」でお馴染みの想田監督の新作「港町」。都会に出張に行ったので、「ジュマンジ」「ミスミソウ」に続いて久々のイメージフォーラムにて鑑賞。
今回も引き込まれました…!!
映画.comのあらすじはこんな感じ。
「選挙」「精神」「演劇」などを手がけた想田和弘監督が、港町で暮らす人々にフォーカスを当てたドキュメンタリー。前作「牡蠣工場」の撮影で岡山県牛窓を訪れた想田監督は、撮影の合間に港を歩き回り、その最中に町の人々と出会う。失われつつある土地の文化や共同体のかたち、小さな海辺の町に暮らす人びとの姿と言葉が、モノクロームで映し出される。ナレーションやBGMなどを排した想田監督独自のドキュメンタリー手法「観察映画」の第7弾として製作された。
今回の観察映画はまさかのモノクロなんですよ。これがすごくいい味を出してて、すごく抽象度が増すんですよね。一応は岡山の牛窓という港町の話なんだけど、モノクロにすることで、これがどこなのか、そしていつなのか、あやふやになって。それによってこの映画で描かれる魚を捕って、セリに出されて、売り場に出て、食べ物に変わるという一連のサイクルが大げさですが神話チックに感じるというか、ものすごく尊いものを観ているような気がして、今回浮かび上がってくるテーマと手法がものすごくマッチしていたと思います。この町に生まれ育ってなくても、どこか懐かしいような気になってくるのは、この抽象度を増した手法と、そしてなによりこの映画を観察していて浮かび上がってくる根源的な命のサイクルみたいなものが、人間の奥深くに実はある何か琴線というのかな、そこに触れるからなのかなぁなんて思ったり。ともかく、何かこの世のものではない世界を見てるような感覚になって、今までの観察映画とはかなり一線を画した新鮮味がありました。
この映画が映画的に跳ね上がる瞬間は、やはり病院の前で行われるクミさんの独白シーンでしょう。モノクロの夕暮れ時、という舞台建てと、わざわざ場所を移動して、カメラをその場所へ引きずり込んだクミさんが語るあの話、これこそ観察映画の「撮れてしまった」という真骨頂であり、いやこれは「撮らされた」のか…と思うほど、それこそこの世ではない世界に感じて、観ている世界が急にグラついてくる感覚はちょっとすごすぎました。クミさんがどこまで自覚的なのかはわからないけど、ほんとに言葉にできない不思議な感覚を味わえて。ここの病院前でのクミさんの独白シーンは今年のベストシーン候補でした。このシーンほんとすごいですよ。必見。
てなわけで、「港町」、今回の観察映画もやはり引き込まれました。いや~しかし、あのシーンは忘れがたいシーンだったなぁ…。
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好き度: 80点
素晴らしかったです。
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