【映画感想】「悪女/AKUJO」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

悪女/AKUJO

 

哀しきダークヒロイン、ここに誕生す

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監督: チョン・ビョンギルさん

脚本: チョン・ビョンギルさん、ユン・ビョンシクさん

出演: キム・オクビンさん、シン・ハギュンさん、ソンジュンさん、他

上映時間: 124分

あらすじ: なかなか平凡な日常が訪れません。

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アクションが超すごいというのを映画秘宝で読んでから楽しみにしていた「悪女/AKUJO」が私が住んでる地域でもやっと遅れて公開されたので、観てきました。


すごい映画でした!!( *`ω´)ダイスキ!!


映画.comさんのあらすじは、

「渇き」のキム・オクビンが女暗殺者を熱演したスタイリッシュアクション。日本で「22年目の告白 私が殺人犯です」としてリメイクされた映画「殺人の告白」で知られるチョン・ビョンギル監督が手がけた。犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒは、いつしか育ての親ジュンサンに恋心を抱き、やがて2人は結婚するが、ジュンサンが敵対組織に殺害される。怒りにかられたスクヒは復讐を果たすが、国家組織に拘束されてしまい、国家の下すミッションを10年間こなせば自由の身になるという条件をのみ、国家直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて、新たな運命の男性と出会い、幸せを誓ったスクヒだったが、結婚式当日に新たなミッションが下され……。

てな感じ。

 

 

とにかくアクションが凄かった……!!予告とか観てなくて、「アクションがすごいぞ」という情報だけで観に行ったのですが、想像をはるかに超えるアクションシーンの数々に感動しました。物量、アイディア、ケレン味、そしてなにより作り手の気合と熱量をビンビンに感じて、もう観てる間「ありがとう…ありがとう…」という気持ちでしたよ。ここまで我々を楽しませてくれるのか…と。


映画始まってすぐの「ハードコア」風の主観視点アクションからもう熱量がすごくて、相手がちょっと待ってくれてる感を感じたのが残念ポイントだったけど、まだお話の設定もよくわからないまま、主人公が敵アジトに乗り込む→大盛りアクション連べ打ち→脱出したところで警察に囲まれる という一連の流れはワックワクしながら観ておりました。



その後、人権無視の国の秘密組織に飼われ、自由を手にするためのミッションで、行われる超絶バイク日本刀アクション!一体どうやって撮影したの?と驚愕しました。とてつもないガッツと緻密な計算の上で成り立ってるんだろうなぁ。すごいアクションしかなかったよこの映画!


クライマックスのアクションもとてつもないもので、、敵アジトにワイルドスピードばりの車でビルからビルへ飛び込む→激しい銃撃戦→かつての夫であり師匠でもあるラスボス戦→やられた〜そして車にひかれた〜 →ひとまずここでアクションは切れるかな…と思ったところで→ひかれた車を奪いそのままカーアクションに突入という、もう息する暇もねぇアクション展開の連続で(しかも物語が停滞してないのがえらい)、そこからボンネットに斧をぶっ刺しボンネットから車を運転しつつ敵が乗るバスに飛び乗るとか、そっからのバス内の密室アクション!からの大クラッシュ!というクライマックス。もうほんとに久々にアクション見て感動しましたよ。ここ数年すごいアクション映画たくさんあったけど、僕はここ数年でもトップレベルの感動をおぼえました。ものすごく引き込まれました。リアルと非リアル(ケレン味優先)のバランスが非常に好みでした。お腹いっぱい!


 

お話部分がけっこう不評みたいで、特に中盤のメロドラマ展開について中だるみというツイートをたくさん見たんだけど、僕はこの中盤のメロドラマ展開こそすごく好きなところだったりします。


この映画、ほんとに悲惨極まりない話でさ、主人公にとってはもうほんとに地獄、絶望、不条理の三連単みたいな人生だったわけじゃないですか、そんな地獄みたいな人生だった主人公がやっと微かな希望、微かな愛の記憶を蘇らせるのがあの中盤のメロドラマ展開だと思うんですよ。しかもその相手もスパイなわけで、そこには同時に破滅の予感がかなり濃厚に流れてるわけですが。


その破滅の予感が一気に文字通り「爆発」してから、ほんとうにこの中盤のメロドラマ展開がとても効いてくるんですよね。


主人公は幼い頃から「愛」そして「平凡な日常」をことごとく剥ぎ取られてきた人生なんですよね。そんな彼女が絶望を突きつけられつつも、それでも掴みかけた「愛」。しかし、その「愛」も、夢見続けた「平凡な日常」も、またもやすべて失ってしまいさらなる絶望のどん底へ。そしてあの壮絶なクライマックスから、あの怖い笑顔のラストカット。このラストカットを見て、あぁこの映画は壮大なアクションに包まれた新たなるダークヒロインの誕生譚だったんだと気づきました。あと、ものすごく「デビルマン」の影響を感じました。あの笑顔は、ことごとく愛を奪われ、裏切られ、剥ぎ取られてきた主人公の、諦めというか、もうこうとしか生きれない、という笑顔だったのかな。愛を奪い、搾取され続けてきた1人の女がさ、悪のモンスターになった瞬間だったんじゃないかなぁ。ここで悪女というタイトルに納得しましたね。なんとも救いのない、非情で悲惨なヒーロー誕生譚なのだろうか……。


映画冒頭と同じく、壮絶アクション後に警察に囲まれたところで終わるので、この地獄はまだ続くし繰り返すよ、というなんとも悲しい煉獄感もあって好き。冒頭とラストで呼応しあってるように見えたのも良かったですね。ほんと地獄みたいなお話だよ!!てか地獄だよ!!






ともかく、僕はすごくよくできた「第1話」感のあるダークヒロイン誕生映画として観ました。アクションもとにかく凄すぎるし、お話の悲しい後味、とても好きな映画でした。近年のアクション映画でもトップクラスに好きな映画です!



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好き度: 90点

超好きな映画になりました!

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