ダウンサイズ
小さくなって気づいたこと。
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監督: アレクサンダー・ペインさん
脚本: アレクサンダー・ペインさん、ジム・テイラーさん
出演: マット・デイモンさん、クリステン・ウィグさん、クリストフ・ヴァルツさん、ホン・チャウさん、他
原題: Downsizing
上映時間: 135分
あらすじ: 小さくなります
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大好きなアレクサンダー・ペインの新作ということでマット・デイモンが小さくなるという情報以外は特に入れずに「ダウンサイズ 」を観てきました。
とてもいい映画でした!!
例によって映画.comさんからあらすじを拝借すると、
「ファミリー・ツリー」「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」のアレクサンダー・ペイン監督が、マット・デイモンを主演に迎え、人類が縮小可能になった未来社会を舞台に、社会風刺を交えて描くドラマ。ノルウェーの科学者によって人間の身体を縮小する方法が発見され、身長180センチなら13センチにまで小さくなることが可能になった。人口増加による環境、食料問題を解決する「人類縮小200年計画」が立ち上がり、一度小さくなれば二度と戻ることはできないが、それでも各国で小さくなること(ダウンサイズ)を選ぶ人々が徐々に増えていく。アメリカのネブラスカ州オマハでストレスフルな生活を送る、どこにでもいる平凡な男ポール・サフラネックは、少しの蓄えでも裕福で幸せな生活が遅れるという縮小された世界に希望を抱き、ダウンサイズを決意。しかし、土壇場で妻のオードリーが逃げ出してしまう。ポールは縮小された人間たちの世界で、ひとり寂しい生活を送ることになり、自暴自棄になるのだが……。
という感じ。
設定こそ突飛だけど、観終わった後の後味は「いや〜しっかりアレクサンダー・ペイン映画だなぁ〜」という感じで、アレクサンダー・ペインの作家性がしっかり刻印された、シニカルだけど優しい1本でした。
小さくなればちょっとの財産でも今より裕福に暮らせますよ〜という売り文句に乗ったマット・デイモンとクリステン・ウィグ夫婦だったんだけど、土壇場でクリステン・ウィグがやっぱりやだ!とやめちゃって、マット・デイモンはもうとっくに小さくなってますから、小さな人々が暮らす世界でひとりさみしく生きるしかなく……という前半部分。このマット・デイモンがほんとにTHEアレクサンダー・ペイン作品の主人公!という感じで、人生に行き詰まりを感じてなかば人生を諦め気味に生きてる人なんだけど、そのマット・デイモンがどう変化していくか…という後半、これもお得意のロードムービー展開で、それまでの細やかな人物描写の積み重ねを見事に活かしつつ、ひとりの人間として成長させていくという「平凡男の成長譚」として、観終わった後はしみじみと「いい映画だったなぁ」という後味が残りました。最初と最後で全然違う映画みたいになってる感じもまた好き。
小さくなったからといって、そこはみんなが裕福に暮らせるようなユートピアではなく、当然金持ちは金持ちのままだし、ぶっちゃけそんなに現実世界と変わらない世界が待っているという後半からの展開(クリストフ・ヴァルツ最高)、そしてユートピアかと思っていた小さな世界のダークサイドをまざまざと見せていくベトナム活動家との出会い、そしてあのお宅訪問描写とか、うわぁ〜こんな展開になっていくのか!と、あの壁の裏側に足を踏み入れたマット・デイモン同様に観てるこっちもショッキングでした。ほんとに作劇としてうまいスライドのさせ方するなぁと感心。ほんとに心底ダークな過去を持ったベトナム活動家なんだけど、ほんとに利他的行動を決して忘れないほんとに素晴らしい人で、現実世界にいたら決して出会わなかったであろう彼女との出会いによってマット・デイモンが触発され変わっていく描写はほんとよかったなぁ。人間という生き物の、間抜けさ、醜さ、ずるさ、をシニカルに描きつつも、根幹では人間という生き物のブライトサイドをちょっっとだけ信じさせてくれるというか、この絶妙なバランス感覚はそんとにアレクサンダー・ペインそのもので、僕は想像以上にこの映画グッときました。大雨の中弁当持って奔走するラストシーンのマット・デイモンに、こんなクソみたいな世の中だけど微かな希望をもらったような、そんな映画でした。
今年はほんとに同じようなテーマの映画が多いなぁとほんとに感じます。今年グッときた映画、ほとんと同じテーマだな。個人的には「パディントン2」と「ブラックパンサー」をちょっと連想したかなぁ。これも「壁」の映画でしたな。今年は反トランプ的テーマを内包してる映画しか観てないような気分になりますね(笑)
なんだかあんまり評判良くないけど、僕は大好きです。
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好き度: 80点
THE アレクサンダー・ペイン!
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